【専門医監修】寝不足による吐き気の原因は?応急処置と予防策も紹介
残業や試験勉強のために睡眠時間が削られたり、ついつい夜更かししてしまったり。寝不足の日は妙に身体がだるく、吐き気を催した経験のある人もいるはず。なぜ寝不足になると吐き気を感じてしまうのでしょうか?
目次
寝不足が身体に与える悪影響
まずは、『眠りのレシピ』で紹介してきた「寝不足が身体に与える悪影響」を4つ紹介します。
①意欲や記憶力が低下する
寝不足によって前頭葉の働きが低下することが、研究から明らかにされています。前頭葉は大脳の一番前の部分に位置し、意欲や感情制御、判断や社会性などに関わる機能を担っています。そのため、寝不足が原因でやる気が出なくなったり、キレやすくなったり、注意力・判断力が落ちてしまうのです。
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②ホルモン分泌や自律神経機能に影響する
私たちの内臓や血管の機能は、自律神経系によってコントロールされています。睡眠中でも呼吸や胃腸の動きなどがつづけられているのは、自律神経が働いているから。
しかし、寝不足がつづくと自律神経のバランスが乱れ、内臓機能が低下します。それが原因で血管が収縮し、血液循環やホルモンバランスが崩れる事態に。結果、高血圧症や糖尿病を悪化させたり、がんにかかりやすくなる可能性も十分に考えられるなど、大切な健康を損なうリスクをはらんでいます。
③食欲が増大する
アメリカのコロンビア大学が2005年に発表した報告によると、睡眠時間が短い人は7時間睡眠をとっている人と比べて、肥満になる確率が60%以上にのぼることがわかっています。また、2004年のシカゴ大学の調査によれば、睡眠不足の人はポテトチップスやケーキなど炭水化物を多く含むものを食べたがる傾向があるそうです。肥満によって、高血圧や糖尿病のリスクが高まるため注意が必要です。
④免疫力が低下する
免疫力低下による病気の発症も心配です。その1つが「がん」。がんは特別な病気ではなく、健康な身体にも毎日何千個ものがん細胞が生まれています。ただ、身体の免疫システムが日夜、がん細胞と闘い取り除いてくれているので、発症にいたっていないのです。ですから、自律神経の乱れから免疫力が低下してしまうと、必然的にがん細胞も増殖してしまう恐れがあります。
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寝不足のときに吐き気がする理由
ここからは、寝不足のときに吐き気がする理由とその対処法を消化器内科や肝臓内科の専門医である吉良文孝先生に伺いました。
「寝不足のときに生じる吐き気には『コルチゾール』というホルモンが関係しています。コルチゾールはストレスを引き金に分泌量が急増し、交感神経に作用します。コルチゾールによって交感神経が高ぶり、結果として吐き気を催してしまうことがあるのです」
ストレスと聞くと、不安や緊張といった精神的な負担を思い浮かべがちですが、それだけではありません。実は、寝不足も立派なストレスの1つ。寝不足という状態そのものがストレスとなり、コルチゾールを多量に分泌させてしまいます。
しかし、コルチゾールは悪者ではありません。血糖値を上昇させるための糖をつくり出したり、脂肪を分解し、代謝を促進させたり、さらには発熱や腫れといった炎症を抑えるために必要なホルモンです。
「ストレスを引き金にコルチゾールが急増するのも、そもそもは生命維持のため。ストレスに負けまいとコルチゾールが分泌され、交感神経が高ぶると、私たちの身体は臨戦態勢に入ります。すると、心拍数や血圧が上昇し、筋肉がこわばる一方、消化器の働きが低下してしまいます」
交感神経が優位になると消化機能は後回しに
「太古の昔を振り返ってみると、コルチゾールの増加が吐き気につながる一連の流れが理解できるはずです」と吉良先生。
太古の昔、人間も野生の動物と同様に狩りをしていました。狩りには緊張や恐怖がつきもののはずですが、ストレスに負けていては獲物を捕らえることも、危機から脱することもできません。そこで、コルチゾールによって交感神経を高ぶらせ、臨戦態勢にスイッチすることから、交感神経は“闘争と逃亡の神経”の異名をもちます。
「臨戦態勢の状況では、胃袋の中身を消化している場合ではない。つまり、消化器の働きが後回しにされるのです。吐き気も、消化器の働きが鈍っていることのシグナル。寝不足というストレスから始まる一連の流れが、吐き気を引き起こすメカニズムなのです」
寝不足による吐き気の対処方法と予防策
寝不足により自律神経のバランスが乱れることが、内臓機能を低下させ吐き気につながります。仮眠をとることも1つの方法ですが、お昼寝が難しい場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか?
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①水もしくは牛乳を飲んで吐き気を緩和する
まず、応急処置として挙げられるのは「水を飲むこと」です。交感神経が一気に高ぶると自律神経のバランスが乱れ、胃酸が多く分泌されます。水を飲み、胃酸を薄めることが吐き気の緩和につながります。また、乳製品は食道の粘膜を保護してくれるため、牛乳を飲むのも効果的です。
②睡眠時間を確保する
吐き気を予防するには、やはり睡眠時間をきちんと確保することが第一。ただし、吐き気を催しやすい体質の人がいるのも事実だそう。そうした体質の人が吐き気を予防するには、睡眠と併せて、食生活や運動など、生活習慣を複合的に見直すことが大切です。
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③嗜好品の摂取は適度に
お酒やタバコは胃酸を逆流させやすくし、コーヒーに含まれるカフェインは胃酸の分泌を活発にさせます。吐き気を感じるときは、こうした嗜好品の過剰摂取は控えましょう。
④健康的な体型を維持する
肥満体型の人は吐き気を生じやすい傾向にあります。脂肪によって食道が圧迫されやすいほか、肥満体型の人は睡眠時無呼吸症候群を起こしやすく、この病気が原因で寝不足に。寝不足のストレスにより、吐き気が生じやすくなります。
⑤胃腸に優しい食生活を心がける
特に吐き気を強く感じるときは、胃腸に優しい食生活を心がけましょう。吉良先生のおすすめは「腹4分目」に抑えること。水分のがぶ飲みやラーメンのスープなどの脂っこいものは避け、よく噛んでゆっくり食べることがポイントです。また、辛いものは少量はOKですが、食べすぎには気をつけましょう。
⑥入眠前にリラックスする
あらゆるストレスが吐き気の原因となるため、ストレスの発散を心がけることも欠かせません。入眠する1時間前までに入浴し、身体を温めましょう。好きな香りのアロマを焚いたり、リラックスや消化促進に効果的なカモミールティーなどもおすすめです。
また、就寝前はスマホなどのデジタル機器をオフにし、脳に必要以上の情報を与えない「デジタルデトックス」をすることで、睡眠の質が向上すると言われています。
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病気の可能性はないか?不安があるなら医療機関へ
寝不足による吐き気の原因は、ストレス。寝不足のときには身体のだるさを感じるほか、お腹がゴロゴロして下痢気味になったり、反対に便秘になったりする人もいますが、これらの原因とメカニズムも吐き気と同様です。
しかし、寝不足とは別に、何かしらの病気が隠れているのではないかと、吐き気に襲われると病気への不安がよぎります。万が一の病気を見逃さないためには、どうすることが適切なのでしょうか?
「吐き気の症状から病気を疑うことは、実はあまりありません。吐き気という単体の症状ではなく、吐き気と同時に胃の痛みがあったり、ご飯が食べられずに痩せてしまったり、併発する症状がある場合に、より詳しい検査をすることがほとんどです」
とは言え、「少しでも不安があるなら、医療機関を受診してください」と吉良先生。寝不足がストレスであるように、病気の不安も吐き気の不快感もストレス。そのストレスが不眠の症状を招き、さらに悪循環を引き起こしかねないからです。
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nishikawaのふとんで寝不足を解消しよう
nishikawaの直営店には、「眠り」の疑問や悩み解決のお手伝いする『ねむりの相談所®』が併設されています。ここでは、ご自身の身体に合ったマットレスや枕選びのサポートはもちろん、枕元に置いておくだけで寝室の照度・音圧・気温・湿度が計測できる器機の貸し出しや、計測値を基にしたカウンセリングも行っています。
▼『ねむりの相談所®』のHP
▼『ねむりの相談所®』体験レポート
https://www.nishikawa1566.com/column/sleep/20221202185908/
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「肥満を予防するにもストレスを発散するにも、適度な運動はどちらにも効果的です」と吉良先生。そして、適度な運動は身体に程よい疲れをもたらし、夜の快眠につながります。 吐き気を催しているときには安静第一ですが、元気なときには意識的に身体を動かし、心身共に健康に、ぐっすり快眠できる毎日を目指しましょう。
「東長崎駅前内科クリニック」院長
吉良文孝 先生
内科医・消化器内科医・内視鏡医・肝臓内科医。東京警察病院にて内科全般・救急全般を学んだ後、同院の消化器内科へ入局。さらなる技術と知識向上のために数々の医療現場を経験し、2018年に東京都豊島区に「東長崎駅前内科クリニック」、2023年には埼玉県和光市に分院を開設。日々の臨床のほか、消化器疾患や腸内環境の改善にまつわる講演も行う。
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