2023年09月06日 カテゴリ:眠り

寝不足による吐き気の原因は?専門医が教える「吐き気の原因と応急処置と予防策」

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寝不足による吐き気の原因は?専門医が教える「吐き気の原因と応急処置と予防策」

残業や試験勉強のために睡眠時間が削られたり、ついつい夜更かししてしまったり。寝不足の日は妙に身体がだるく、吐き気を催した経験のある人もいるはず。なぜ寝不足になると吐き気を感じてしまうのでしょうか?

その理由と吐き気を催したときの応急処置や予防策を教えてくれるのは「東長崎駅前内科クリニック」の院長で、消化器内科や肝臓内科の専門医である吉良文孝先生です。
 

寝不足のときに吐き気がする理由


「寝不足のときに生じる吐き気には『コルチゾール』というホルモンが関係しています。コルチゾールはストレスを引き金に分泌量が急増し、交感神経に作用します。コルチゾールによって交感神経が高ぶり、結果として吐き気を催してしまうことがあるのです」

ストレスと聞くと、不安や緊張といった精神的な負担を思い浮かべがちですが、それだけではありません。実は、寝不足も立派なストレスの1つ。寝不足という状態そのものがストレスとなり、コルチゾールを多量に分泌させてしまいます。

しかし、コルチゾールは悪者ではありません。血糖値を上昇させるための糖をつくり出したり、脂肪を分解し、代謝を促進させたり、さらには発熱や腫れといった炎症を抑えるために必要なホルモンです。

「ストレスを引き金にコルチゾールが急増するのも、そもそもは生命維持のため。ストレスに負けまいとコルチゾールが分泌され、交感神経が高ぶると、私たちの身体は臨戦態勢に入ります。すると、心拍数や血圧が上昇し、筋肉がこわばる一方、消化器の働きが低下してしまいます」
 

交感神経が優位になると消化機能は後回しに


「太古の昔を振り返ってみると、コルチゾールの増加が吐き気につながる一連の流れが理解できるはずです」と吉良先生。

太古の昔、人間もサバンナの動物と同様に狩りをしていました。狩りには緊張や恐怖が付き物のはずですが、ストレスに負けていては獲物を捕らえることも、危機から脱することもできません。そこで、コルチゾールによって交感神経を高ぶらせ、臨戦態勢にスイッチすることから、交感神経は“闘争と逃亡の神経”の異名をもちます。

「臨戦態勢の状況では、胃袋の中身を消化している場合ではない。消化器の働きが後回しにされるのです。吐き気も、消化器の働きが鈍っていることのシグナル。寝不足というストレスから始まる一連の流れが、吐き気を引き起こすメカニズムなのです」

 

病気の可能性はある?不安があるなら医療機関へ


寝不足による吐き気の原因は、ストレス。寝不足のときには身体のだるさを感じるほか、お腹がゴロゴロと下痢気味になったり、反対に便秘になったりする人もいますが、これらの原因とメカニズムも吐き気と同様です。

しかし、寝不足とは別に、何かしらの病気が隠れているのではないか。吐き気に襲われると病気への不安がよぎります。万が一の病気を見逃さないためには、どうすることが適切なのでしょうか?

「吐き気の症状から病気を疑うことは、実はあまりありません。吐き気という単体の症状ではなく、吐き気と同時に胃の痛みがあったり、ご飯が食べられずに痩せてしまったり、併発する症状がある場合に、より詳しい検査をすることがほとんどです」

とはいえ、「少しでも不安があるなら、医療機関を受診してください」と吉良先生。寝不足がストレスであるように、病気の不安も吐き気の不快感もストレス。そのストレスが不眠の症状を招き、さらに悪循環を引き起こしかねないからです。

▼朝の腹痛や下痢についてはこちらもチェック
https://www.nishikawa1566.com/column/sleep/20200326111330/

 

吐き気の緩和には水もしくは牛乳をゴクリ!



寝不足というストレスが消化器の不調を引き起こし、吐き気を招くことがわかっているならば、しっかりと眠ることが大切。仮眠をとることも1つの方法ですが、お昼寝が難しい場合には、どうすればいいのでしょう?

「応急処置としては、水を飲むこと。交感神経が一気に高ぶると自律神経のバランスが乱れ、胃酸が多く分泌されます。水を飲み、胃酸を薄めることが吐き気の緩和につながります。また、乳製品は食道の粘膜を保護してくれるため、牛乳を飲むのも効果的です」

そして、吐き気を予防するには、やはり睡眠時間をきちんと確保することが第一。ただし、吐き気を催しやすい体質の人がいるのも事実だそう。そうした体質の人が吐き気を予防するには、睡眠と合わせて生活習慣を複合的に見直すことが大切です。

「お酒やタバコは胃酸を逆流させやすくし、コーヒーに含まれるカフェインは胃酸の分泌を活発にさせます。そのため、こうした嗜好品の過剰摂取は控えること。同時にあらゆるストレスが吐き気の原因となるため、ストレスの発散を心掛けることも欠かせません」

また、吉良先生は「肥満体型の人は吐き気を生じやすい傾向にあります」と指摘。脂肪によって食道が圧迫されやすいほか、肥満体型の人は睡眠時無呼吸症候群を起こしやすく、この病気を原因に寝不足に。寝不足のストレスにより、吐き気が生じやすいというわけです。
 
***


「肥満を予防するにもストレスを発散するにも、適度な運動はどちらにも効果的です」と吉良先生。そして、適度な睡眠は身体に程よい疲れをもたらし、夜の快眠につながります。

吐き気を催しているときには安静第一ですが、元気なときには意識的に身体を動かし、心身共に健康に、ぐっすり快眠できる毎日を目指しましょう。
 
 

「東長崎駅前内科クリニック」院長

吉良文孝 先生

内科医・消化器内科医・内視鏡医・肝臓内科医。東京警察病院にて内科全般・救急全般を学んだ後、同院の消化器内科へ入局。さらなる技術と知識向上のために数々の医療現場を経験し、2018年に東京都豊島区に「東長崎駅前内科クリニック」、2023年には埼玉県和光市に分院を開設。日々の臨床のほか、消化器疾患や腸内環境の改善にまつわる講演も行う。 

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