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高温多湿の夏の体調不良・睡眠トラブルの解消法

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高温多湿の夏の体調不良・睡眠トラブルの解消法
湿度も気温も上がって蒸し暑くなり、息苦しさを感じやすい日本の夏。
特に夏場は台風や夕立、ゲリラ豪雨なども多く、気圧の変化などで頭痛や体の怠さ、寝苦しさを感じる方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな高温多湿の時期の体調不良や寝苦しさの原因と対処法について、総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医である、医療法人社団勝榮会理事長の入谷栄一先生にお話を伺いました。
 

湿度の高い季節は体の不調が起こりやすい

「湿度の高い時期の体調不良の主な原因は、気圧の変化による自律神経の乱れだと言われています。
また、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体内の水分循環がうまくいかなくなったり、汗で皮膚が湿った状態が続くと、皮膚の常在菌バランスが乱れ、雑菌が繁殖しやすい環境になります」(入谷先生)


頭痛・だるさ・めまい
気圧の低下と湿度上昇により、自律神経が乱れてしまい、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなることが原因で起こります。

気象変化による自律神経の乱れは、「原因がはっきりわからないけれどなんとなく体調が悪い」「検査をしても異常が見られない状態」である不定愁訴を引き起こします。

この不定愁訴は、自覚症状は常に一定しているわけではなく、日によって重さや症状が異なるのが特徴です。


胃腸の不調(食欲不振・下痢)
自律神経の乱れにより、腸の動き(ぜん動運動)が不安定になることが原因です。
ストレスや気候変動に伴う自律神経の乱れは、胃腸の不調を引き起こしやすいと言われています。

関節痛・神経痛
気圧の低下や湿度による関節内圧の変化が原因で、痛みが出ることがあります。
リウマチや慢性的な痛みにお悩みの方は、湿度や気圧で痛みが出やすくなることがあります。

皮膚トラブル(かゆみ・かぶれ・湿疹)
高い湿度によって汗が蒸発しにくく、雑菌が繁殖しやすいことが原因です。
皮膚のpHバランス(酸性・アルカリ性の度合いを示す水素イオンの濃度)や、肌の常在菌のバランスが湿度で崩れると、皮膚炎を起こしやすくなります。

むくみ
湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体内の水分循環が悪化することが原因です。
高い湿度の環境では、汗が蒸発しにくくなることで、 体温調整がうまくいかなくなります。
すると、余分な水分が皮下組織に滞留しやすくなります。
この結果、末梢の静脈やリンパの還流が悪化し、むくみを引き起こします。


気分の落ち込み・イライラ
自律神経の乱れによって精神的に不調になることも。
気圧・湿度・温度変化の繰り返しが、交感神経と副交感神経の切り替えにストレスを与え、結果としてイライラや不安、無気力感を引き起こしやすくなります。

「心身の調子に波があるのは『環境による自然な反応』の場合があると知ることも、予防やケアの第一歩になります」(入谷先生)

湿度の高い時期は睡眠トラブルも起こりやすい

湿度の高い時期は知らず知らずのうちに体内リズムが乱れてしまい、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
その結果として、入眠障害や中途覚醒、眠りの浅さといった睡眠トラブルが起きやすくなるのです。

「特に、日中の倦怠感や集中力の低下を感じる方は、季節要因による影響も考慮して、早めの対策が重要です」(入谷先生)


入眠困難・中途覚醒
高湿度と気温上昇によって寝床内の不快感が増してしまい、体温調節がうまくいかず、眠気が起こりにくくなります。
入眠には深部体温が低下することが必要です。
しかし、高湿度環境では発汗による放熱が妨げられてしまいます。

熟眠感の低下(眠りが浅い)
室内が蒸し暑く、空気がこもっていると、交感神経が刺激されてしまい、深いノンレム睡眠が阻害されます。
25℃以上かつ高湿度環境では、深部体温の低下が不十分になり、徐波睡眠(深い睡眠)が短縮してしまいます。

起床時の疲労感・倦怠感
睡眠の質の低下と自律神経のバランス不良が原因です。
高温多湿の時期は交感神経が優位になりやすく、寝ていても脳が緊張した状態が続きます。
加えて、低気圧による酸素分圧の低下も、眠りの浅さや目覚めの悪さに関与するとされています。

 

湿度が高い時期に自律神経が乱れやすい理由

「湿度が高い時期に自律神経が乱れやすくなるのは、気象の変化によって体が「恒常性(ホメオスタシス)」を保つために過剰に働かされることが理由です。
恒常性とは、生物が体温、血糖値、血圧、水分量など、体内の状態を一定範囲内に保とうとする働きを指します。

低気圧と高湿度が長期間続くことで、体にとっては「環境変化への対応」が連続的に求められます。
その結果、交感神経と副交感神経のバランス調整機能が疲弊しやすくなるのです」(入谷先生)

自律神経が乱れるメカニズム

 

東洋医学から診る、湿度が高い時期の体調不良を引き起こす原因「水滞(すいたい)」とは?

「東洋医学では、多湿の時期のだるさやむくみ、食欲不振などは『水滞(すいたい)』という水分代謝の滞りによって起きると考えられています。
水滞とは、体内の「水(津液)」の巡りが悪くなり、「不要な水分=湿邪」が体内に停滞することで不調を引き起こすという概念です。

一方、「水毒」はやや重症な状態で、体に害を与える“邪”としての水分を意味します。

現代医学では原因がはっきりしにくい不調でも、東洋医学では湿度や体内の水分バランスに着目して診るため、治療や養生のヒントになることもあります」(入谷先生)
 

水滞のメカニズム

湿気(外湿)
高湿度により、外からの湿邪が体内に侵入する

脾の機能低下
「脾(消化器系)」は水分代謝を担うが、湿気に弱く働きが鈍くなる

気の滞り
水分代謝の力である「気」の巡りが悪くなると、余分な水が排出されなくなる

腎・膀胱の弱り    
水分排出の終末臓器である腎・膀胱の弱りがあると、排出力が落ちて水が溜まる
 

水滞によって起こる典型的な症状

全身症状:倦怠感、疲れやすい、体が重い、頭がボーッとする
消化器症状:食欲不振、下痢、胃もたれ、口の中がネバつく
浮腫・むくみ:特に下半身にむくみ、手足が冷える
関節・筋肉:関節の重だるさ、雨の日の関節痛、筋肉の張り
精神症状:やる気が出ない、うつっぽさ、集中力低下
舌の状態:舌に白くねばついた苔(舌苔)がつくのが特徴的
 

水滞(水毒)による睡眠障害や心身の不調の対策





「食事では水分代謝を助ける素材を取り入れ、運動や生活リズムを整えることで、自律神経の安定と睡眠の質向上につながります。

内側から体を整える手段として、漢方薬の活用も1つの選択肢です。生活習慣の改善で調子が戻らなければ、漢方外来を受診するのもおすすめです」(入谷先生)
 

食事での工夫

キーワードは「温める・巡らせる・利水(余分な水を出す)」です。

体を内側から温め「気」を巡らせる効果のある、温性食材を摂るのがおすすめです。
生姜、ねぎ、にんにく、味噌、シナモンなどが該当します。

余分な水分の排出を助ける、利水作用のある食材を摂るのも有効です。
はとむぎ、とうもろこし、小豆、冬瓜 などが該当します。

また、脂っこいものや冷たいものを避けて、消化に優しい食事を心がけましょう。
 

運動での工夫

ウォーキング・ストレッチといった、軽い有酸素運動を生活に取り入れましょう。
 血流・リンパの流れを改善し、自律神経を安定させます。
ウォーキングは朝に行うことで、陽の光によってセロトニンの分泌が促され、睡眠ホルモンにも良い影響を与えます。

運動を行うことが難しい方は、深呼吸や腹式呼吸を行ってみましょう。
深呼吸や腹式呼吸を行うことで自律神経の副交感神経が優位になり、体をリラックスさせます。
 

生活習慣での工夫

寝室や住空間の湿気対策を行いましょう。通気性の良い寝具に買い換えるのもおすすめです。

また、38〜40℃のお湯で15分程度、湯船に浸かるのもおすすめです。交感神経の緊張をほぐし、気・血・水の巡りも改善されます。

自律神経を安定化させるために、規則正しい生活で体内時計を整えることも重要です。夜寝る1時間前にはブルーライトの刺激を避けましょう。

 

無理に元気になろうとせず、ゆっくり呼吸を整えよう

「日本の夏は高温多湿で、台風や急な雨も多くなる時期。
この時期は誰もが気象ストレスや水滞の影響を受けやすく、だるさ・むくみ・気分の落ち込み・不眠といった不調が出やすくなります。

しかし、これは心や体が弱いからではなく、『環境の変化に体が必死に適応しようとしているサイン』です。

無理に元気になろうとするよりも、
『少し立ち止まって、呼吸を整える』
『朝の光を浴びる』
『体を温めてほっとする時間をつくる』
ことが、何よりの対策になります。

食事や生活習慣、時には漢方など、できることはたくさんあります。
一人で悩まず、ぜひ信頼できる医師や専門家に相談ください。

誰しもが体も心も、ちゃんと乗り越えられる力を持っています」(入谷先生)

 

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近年、特に蒸し暑さに悩まされる日本の夏。
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寝具の湿気対策を行って、体内時計と自律神経を整えましょう。

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監修者さまプロフィール

医療法人社団勝榮会

入谷栄一理事長

いりたに内科クリニック院長、東京女子医科大学呼吸器内科非常勤講師、NPO法人日本メディカルハーブ協会顧問。総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医、がん治療認定医。
長引く咳の治療を得意としており、わかりやすい説明が評価され全国規模で講演に呼ばれる。一方で自身もぜんそく・アレルギーで苦しみ、現代医療に補完医療を取り入れ、人生が大きく変貌した経験をもつ。そんな中「ハーブを使った自然療法」を通した手法が評価され、日本初のハーブ専門外来を開設した実績を持つ。現在は地域医療や在宅診療に力を入れている。
著書に『キレイをつくるハーブ習慣』、『病気が消える習慣』(経済界)

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