2022年10月31日 カテゴリ:眠り

【医師監修】アルコールと睡眠の関係は?お酒を飲むと眠れる?眠れない?

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【医師監修】アルコールと睡眠の関係は?お酒を飲むと眠れる?眠れない?
寒い冬は熱燗にホットワインなど、温かいお酒がおいしくなる季節。ちょっぴりほろ酔いで入る布団はなんだか気持ちが良いですよね。
 
でも、布団の中で目が冴えてしまったり、夜中に目覚めてしまう人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、肝臓専門医として活躍する浅部伸一先生にアルコールと睡眠の関係について伺いました。
 

量で変わるお酒の影響

―ふだんよく眠れている人でも、お酒を飲むと眠りが浅くなったり、寝つきが悪くなったりします。なぜお酒を飲むとよく眠れなくなるのでしょうか?
 
浅部先生:お酒を飲むと早く寝つくことができる一方、眠りが浅くなることが報告されています。しかし、その理由は実ははっきりとはわかっていません。
 
アルコールは一種の麻酔薬なので、高い濃度を摂取すると脳が麻痺して自分の言動を記憶できなくなったり、意識をなくしたりします。一方、少量では本能や感情をつかさどる大脳辺縁系の活動を高めることもあります。なので、酔いが醒めてくる段階ではかえって脳の活動が活発化し、睡眠を妨げるのではないかと思われます。
 
―なるほど。冬はお酒を飲む機会が増えますが、アルコールを摂取しても快眠できる方法はありますか?
 
浅部先生:アルコール摂取後の快眠は難しいですが、「深酒を避け、過度に酔うことを防ぐ」という意味では、アルコールの吸収を穏やかにするのが良いでしょう。
 
飲み始めの段階で適度に脂質とタンパク質を含むおつまみ、例えばチーズやナッツ、枝豆、納豆などを少量食べるといいですね。また、飲酒中に水分を取ることでアルコールの吸収を穏やかにすることができ、飲酒後の脱水状態の予防にもつながります。ただし、あまり飲み過ぎると夜間のトイレ(排尿)の回数が増えてしまいますのでバランスが重要です。
 
本来お酒の種類による大きな差はありませんが、体質によってはワイン等に含まれる「コンジナー」と呼ばれる不純物に身体が強く反応する人もいるようです。「コンジナー」はワインの色や香りを左右する成分ですが、これによって二日酔いの不快感(吐き気や頭痛)を引き起こし眠りの質が下がることもあります。この点は個人差が大きいところです。
 

こんな人は気をつけて!寝酒に関する注意点は?

―睡眠時無呼吸症候群を有している場合
睡眠時無呼吸症候群の人は、お酒を飲むと、喉や舌根の筋肉が弛緩しやすくなり、気道を塞いで睡眠時の無呼吸発作が悪くなる可能性があります。特に、飲んで寝た時にいびきがひどくなったり、無呼吸が実際にある人は要注意です。

―高齢者の場合
高齢者はもともと、睡眠が浅くなりがちです。アルコールによる脳への作用が重なると不眠や良い睡眠のリズムを妨げてしまう可能性がありますので注意が必要です。また、若い人以上に飲酒後の脱水状態の影響を受けやすくなるので、脱水にならないように適宜水分補給しつつ、一方で水分の摂り過ぎで夜間の頻尿にならないように、バランスを大切にしましょう。

―睡眠導入剤を服用している場合
睡眠導入剤の中には、筋弛緩作用を持つものがあり呼吸抑制作用があります。これに飲酒が重なると、さらに筋弛緩作用が増強して無呼吸や最悪の場合、呼吸停止の怖れもあります。そのため原則として酔っている状態での睡眠導入剤の内服は避けた方が良いとされています。比較的呼吸抑制の弱い睡眠導入剤もありますので、不眠がひどい場合は、かかりつけの医師に相談してください。
 

良い睡眠のためには“寝酒”はNG!



―寝るためにお酒を飲む、いわゆる“寝酒”をしている方も一定数います。本当に睡眠に効果的なのでしょうか?
 
浅部先生:多くの場合、良くありませんね。先ほどもお話した通り、アルコールの麻酔効果によって脳の活動が低下し、ストレスを感じにくくなり眠れる場合もあります。ただその後、アルコールが代謝される過程で脳が逆に活性化するなど、睡眠リズムが乱れる可能性があります。また、体質によってはアルコールの代謝によって生じた「アセトアルデヒド」という代謝産物が、血圧や脈拍などに影響して安静を妨げる場合もあります。飲酒によるリラックス効果は否定しませんが…いくらリラックスできるとはいえ、“睡眠導入剤”としてのアルコールはおすすめできません。
 
―では、具体的にアルコールを摂取することで起こる、睡眠への影響を教えてください。
 
浅部先生:浅部先生:睡眠中の脳の活動は複雑で、活動レベルを落とした深い睡眠状態の「ノンレム睡眠」や、記憶のプロセスに関係しているとも言われている浅い睡眠状態の「レム睡眠」があります。この脳内活動がバランスよく生じるのが“質の良い睡眠”なのですが、アルコールによってこのバランスが崩れてしまうことは良い睡眠にとって悪影響でしょう。例えば、深酒をすると昏睡に近い“深い睡眠”に落ちますが、これは“質の良い睡眠”とは言えませんよね。
 

二日酔いにならない飲み方をしよう

―二日酔いになると、やはり睡眠の質は落ちるのでしょうか? うっかり二日酔いになってしまったときの対処方法を教えてください。
 
浅部先生:実はまだ、「二日酔い」とはどういう状態なのかよくわかっていないのです。「アルコールが十分に代謝されずに残っている」「アルコールの利尿作用によって脱水状態になっている」「アルコールが体内から消えていく段階で脳が離脱症状(禁断症状)を示している」など、さまざまな状態が絡み合って起こっていると思われます。詳細な研究は行われていないと思いますが、脳の活動状態に影響し、自然な睡眠リズムを妨げていることは間違いありません。二日酔いの状態では、睡眠の質は落ちているでしょう。
 
では二日酔いのときはどうするか?まず水分を摂ること、そして必要に応じて少量の糖質やアミノ酸、ビタミン類を摂って、早くカラダを元の状態に戻すことが重要です。“迎え酒”は一時的に症状を緩和しますが、アルコールが再び脳に影響しますのでおすすめできません。
 

快適な睡眠のためにできることとは?

1:リラックスできる環境の整備と睡眠リズムを考えた生活リズム
多くの場合、脳は一定のリズムで覚醒・睡眠を行います。なので、規則正しい時間に入眠することを意識して、それに合わせて脳の活動を下げてリラックスさせていくことが有用です。リラックスの方法は人によって色々あると思います。寝室の環境もそうですし、カフェインは作用の個人差が大きいので、影響が強く出る人は、カフェイン摂取を完全に避けるのもひとつの方法です。

2:適度な運動
脳だけでなく体も少し疲れてさせてあげると、入眠しやすくなります。簡単なストレッチでもいいので、ぜひ規則正しい時間に取り入れてみましょう。

3:リラックスのための「ゆるい」考え方も
飲酒後にすぐ寝ると睡眠リズムが乱れることはお伝えした通り。一方で、生活の中で少量の飲酒やおしゃべりを上手く取り入れて「緊張感」を下げていくことはリラックスに繋がります。生活の中から一切の無駄を排除して仕事や締め切りに追われるようになると、ストレスホルモンとも呼ばれる、ステロイドホルモンの分泌が高まり、良い睡眠のリズムを維持するのが難しくなることもあります。あまり、真面目になりすぎず、程よく「ゆるい」考え方を意識するようにしましょう。
***

睡眠の質の良し悪しによって、日中のパフォーマンスは大きく変わります。つまり、お酒との付き合い方も一歩間違えると睡眠に影響し、仕事や日常生活にも影響しかねません。お酒を飲むときは、その後の睡眠のことも頭の片隅に入れておきましょう。
 
浅部先生、ありがとうございました!

   

肝臓専門医

浅部伸一先生

消化器内科医として病院で勤務したのち、国立がんセンターやカリフォルニア留学で肝炎ウイルス・免疫の研究活動を行い、2017年からは外資系製薬会社に勤務。『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修し、お酒の飲み方のスペシャリストとしても活躍している。

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