カテゴリ:眠り
朝起きてすぐに感じる疲れ…「朝バテ」は侮ってはいけない不調のシグナル
最近、にわかに耳にする機会が増えた「朝バテ」というフレーズ。朝からバテている、起き抜けから疲れを感じている状態を表す言葉です。とある調査によれば、朝バテを感じたことのある人の割合は回答者の約6割も!
そこで今回は朝バテが起こる原因や対処法、そして朝バテの裏に潜んだ疾患の可能性にもフォーカス。教えてくれるのは、多角的な視点と知見から睡眠障害の診療に当たる「太田睡眠科学センター」の竹内暢先生です。
朝から疲労感…「朝バテ」の原因は睡眠の質の低下!?
朝、目覚めた瞬間から疲れを感じる「朝バテ」。理想的なすっきりとした目覚めとは正反対の朝バテですが、どうしてこのような症状が起こるのでしょう?「原因のひとつとして考えられるのが、睡眠の質の低下です。睡眠は本来、1日の溜まった疲労を回復するためのもの。しかし、疾患がないにもかかわらず朝から疲れを感じるのであれば、睡眠の質が下がることによって疲労回復の機能が十分に働かず、翌朝に疲れを持ち越している可能性があります」
睡眠時間の不足・眠りの浅さ・睡眠リズムの乱れなど、睡眠の質が低下する原因はさまざま。その一例として竹内先生が挙げるのが、以前、『眠りのレシピ』でも取り上げた「社会的時差ボケ(ソーシャルジェットラグ)」です。平日と休日の睡眠時間のズレにより、海外旅行時の時差ボケと同じような不調を来すことを指します。
「社会的時差ボケの症状は多岐にわたり、ダルさや倦怠感もそのひとつです。これは疲労の症状とも重なるため、ご自身に疾患がないのであれば、やはり睡眠の質の低下を疑うことも必要ではないでしょうか」
起き抜けの疲れをすっきりさせるには1杯のコーヒーを!
朝バテの原因が睡眠の質の低下にあるとすれば、その質を向上させることで疲労感を伴わない気持ちいい目覚めになります。
睡眠の質を向上させるには平日も休日も起床・睡眠時間を一定にし、規則正しい生活を送ることが大切!朝・昼・晩の3食も決まった時間に食べることで体内時計が機能しやすくなり、夜の眠りも朝の目覚めもスムーズになります。
また、「眠りのレシピ」でも以前からお伝えしているように、パソコンやスマートフォンの画面から発されるブルーライトは要注意!ブルーライトの光は眠気を誘発するメラトニンというホルモンの分泌を妨げるため、就寝前はパソコンやスマホを手放し、デジタルデトックスをして過ごすのも、睡眠の質向上につながります。デジタルデトックスの効果について気になる方は、こちらの記事もぜひチェックしてみてくださいね。
とはいえ、朝バテに悩まされている人が知りたいのは、すぐに実践できる対処法ですよね。起き抜けから疲れを感じてしまうとき、どうすればこれから始まる1日をすっきり過ごせるのでしょうか?
「あくまでも応急処置に過ぎませんが、コーヒーなどカフェインの含まれている飲み物を摂取するのは有効的です。何杯も飲んでは胃腸に負担をかけるほか、かえって睡眠の質を低下させる恐れもあるので、摂取量は1杯で十分。飲み過ぎには注意しましょう」
同時に竹内先生は「カフェインを摂取してもすっきりしない場合、やはりご自身の睡眠や体調を見直す必要があります。睡眠に疲労回復の機能が認められている以上、朝に感じる疲れは何かしらのシグナルです」と警鐘を鳴らします。
侮ってはいけない!朝の疲れから見えてくる心身の疾患
朝に感じる疲れは何かしらのシグナル——。睡眠外来で日々診療している竹内先生からすれば、朝バテの症状は、時として心身の疾患を知らせるシグナルにもなるといいます。「意外に思われるかもしれませんが、診察に訪れる患者さんの多くが『眠れない』ではなく、『起きられない、朝がつらい』とご自身の症状を訴えます。睡眠に悩む人の多くが起床困難な人であり、朝に感じる自覚症状から睡眠に関わる疾患が明らかになることが少なくないのです」
朝の自覚症状から睡眠外来を受診し、そこから明らかになる疾患の代表例が「睡眠時無呼吸症候群」だといいます。病名が示す通り、睡眠時に一時的に無呼吸になってしまう疾患であり、起き抜けに疲労感を感じるのも不思議ではありません。
また、睡眠時に四肢がぴくぴくと動いてしまう「周期性四肢運動障害」や睡眠時の「食いしばり」により、起き抜けのダルさを感じることもあるそう。こうした身体の疾患や不調による朝の疲労感は、特に40歳以上の方によく見られるそうです。
「身体的疾患のほか、朝のだるさから『うつ病』が明らかになることもあります。そもそも疲れやすさは、うつ病の代表的な症状のひとつ。また、不眠症と診断された患者さんも、その8割方が不安性の不眠症に当たります。朝バテの原因には心の病も潜んでいるかもしれないので、決して軽視してはいけないのです」
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竹内先生によると、一般的に疲れとは「基礎疾患がなく、夜間睡眠と適度な休息によって回復可能なもの」と定義されるといいます。つまり朝バテを解消するには睡眠を見直すだけでなく、日中の意識的な休息が大事!竹内先生ご自身も朝バテの症状を感じたときには「思い切って休むほか、普段とは違うことに挑戦して気分の切り替えを図る」のだそう。そして、「朝に感じる疲れは何かしらのシグナル」という言葉が示す通り、朝の疲れに疾患が隠れている可能性もあります。朝バテの症状が長く続く場合には疾患も疑い、医療機関に相談することも大切です。
太田睡眠科学センター
竹内 暢 先生
久留米大学医学博士課程卒業。睡眠障害の診断・治療に従事し、2022年7月より「太田睡眠科学センター」に勤務。医学だけでなく、心理・社会的背景も視野に入れた診療を行い、耳鼻科・呼吸器内科・精神科といった他科との連携を図りながら、あらゆる睡眠障害の治療に当たる。
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