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不規則な眠りが原因?身体の不調やメンタルにも影響を及ぼす「社会的時差ボケ」を徹底解説

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不規則な眠りが原因?身体の不調やメンタルにも影響を及ぼす「社会的時差ボケ」を徹底解説
通勤・通学のある平日の睡眠不足を補うため、週末にお昼頃までたっぷりと寝る。この“寝だめ”を原因に起こるのが「社会的時差ボケ」、英語では「Social Jetlag(ソーシャルジェットラグ)」と呼ばれます。

多くの人にとって休日の寝だめはままあることかもしれませんが、その状態を放置していては危険…!

そこで今回は、社会的時差ボケが起こるメカニズムから、けっして侮ってはいけない理由、さらには社会的時差ボケに陥らないための具体策まで、あらゆる睡眠障害の治療を行う「睡眠総合ケアクリニック代々木」の竹内暢先生にお聞きしました。

 

社会的時差ボケの原因は、体内時計と社会の動きのズレ!

「社会的時差ボケ」という言葉を初めて知る人も、「時差ボケ」ならご存じのはず。時差ボケとは、飛行機移動をした後に起こる体調不良のこと。出発地と到着地の時差によって生じ、特に時差が4〜5時間以上ある場合に起こりやすいといいます。

例えば、日本からハワイを訪れた場合、時差はマイナス19時間。すると日本の時刻に合わせて動いていた身体のリズムが到着先の時刻に順応できず、一時的な体調不良が起こります。

「社会的時差ボケに関しても、基本的な理論は一緒。人間には生まれながらに備わった体内時計がありますが、そのリズムが必ずしも社会の動きと一致するとは限りません。つまりは生理的な体内時計と社会の動きのズレが、社会的時差ボケを引き起こすのです」

私たちに備わった体内時計のリズムには個人差がありますが、朝に目覚め、夜に眠くなるのが基本。社会の動きに関しても、朝に仕事や学校が始まり、夕方に帰宅するのが一般的です。それでも社会的時差ボケが生じることがあり、その原因こそが週末の寝だめです。

「海外渡航で起きる時差ボケは、日を追うごとに解消していきますよね。体内時計と社会の動きのズレに関しても、ある程度の順応が可能です。しかし、休日の寝だめが、せっかくの順応を白紙に戻してしまうのです」

 

あなたは大丈夫?“寝だめの度合い”からセルフチェック

休日の寝だめの何がいけないのか。理由はずばり、平日と休日の間に起こる睡眠リズムのズレです。社会の動きに合わせた平日の睡眠と、社会の動きから解放され、好きなだけ寝ることのできる休日の睡眠。この2つのズレが、社会的時差ボケを引き起こすというわけです。

「人が睡眠状態にあるかどうかは、きちんと脳波を取らなければ把握できません。ただし、簡易的なチェックは可能です。平日の睡眠時間の中央時刻と休日の睡眠時間の中央時刻、その2つの差を計算してみてください。算出された差分が、あなたの社会的時差ボケの度合いです」

例えば、平日は24時に就寝、6時に起床するとしましょう。そして、社会の動きから解放された土曜日と日曜日は2時に就寝し、朝寝坊の10時に起床するとします。すると、平日の睡眠時間の中央値は3時、休日の睡眠時間の中央値は6時。互いの差分は3時間ですから、3時間の社会的時差ボケ状態にあります。

「たまの海外渡航であれば、3時間の時差はあまり問題にされないでしょう。しかし、日常生活に起こる社会的時差ボケの場合は、わけが違います。週末のたびに3時間の時差のある海外に出掛けては月曜日の朝に帰国し、そのまま仕事や学校に出掛ける。こうした無理のあるスケジュールを繰り返しているのと同じことなのです」

竹内先生によれば、日本人の約40%が1時間程度の社会的時差ボケ状態にあるとのこと。確かに「1時間」という数字の印象では大したことがないように思えますが、これが毎週のように繰り返されるとなると、けっして軽視はできません。


“月曜日の憂鬱”にも無関係ではない、社会的時差ボケ

では、社会的時差ボケは、私たちの身体にどのような影響をもたらすのでしょうか。竹内先生は「あらゆる症状が考えられます」と指摘。なかでも代表的なのが、強い眠気や不眠、倦怠感や頭痛にめまいといった症状です。

「こうした症状だけでも大なり小なり日常生活に支障をきたしますが、昨今の研究により、社会的時差ボケの人は高血圧やメタボリック症候群のリスクが高まるほか、認知機能や成績低下の可能性があることが示されています。さらには“ブルーマンデー”との関係性も指摘されているのです」

月曜日を迎えることが憂鬱になるブルーマンデー。なぜ社会的時差ボケが原因の1つとなりうるのか、その理由について竹内先生は、以下のように指摘します。

「海外渡航による時差ボケの症状は、現地への到着直後に強く出ます。社会的時差ボケも同様に、月曜日に強い憂鬱を感じるのは、月曜が休日の翌日だから。木曜日、金曜日ごろには平日の睡眠リズムに順応していき、症状も落ち着いてきますが、そうした矢先に休日が訪れ、また睡眠リズムが乱れてしまう。これがブルーマンデーの一因だと考えられます」

月曜日を憂鬱に感じる人は少なくないはずですが、特に日本の中年男性の場合、自殺は月曜の朝に集中しているというデータもあります。ブルーマンデーに悩まされている人はメンタル面のケアと合わせ、自身の睡眠リズムについても見直してみてください。

 

休日の寝だめでは、日ごろの睡眠不足は解消できない!

休日の寝だめが社会的時差ボケを引き起こす以上、平日も休日も起床・就寝時間を一定にし、規則正しい生活を送ることが大切です。

「そこで知っていただきたいのが“休日の寝だめでは、日ごろの睡眠不足は解消できない”という事実です。借金のように積み重なる慢性的な寝不足は、“睡眠負債”と表現されます。この負債は休日に長く寝たところで返済しきれず、むしろ睡眠のリズムを乱してしまうため、“寝だめは悪循環を引き起こす”と認識することが大切です」

休日の寝だめを避けるには、平日と同様の起床時間に目覚ましのアラームをセットし、起きたらまず太陽の光を浴びること。日光に当たることで体内時計がリセットされ、2度寝防止につながります。また、朝昼晩の食事をしっかり取ることも大切。3食がもたらす胃腸の動きにより、より体内時計が正常に働きやすくなるそうです。

同時に竹内先生は、残業が常態化し、残業の翌日にも定時出勤を強いる社会システムの問題性も指摘。平日に十分な睡眠がとれていないのですから、休日にたっぷり寝たくなるのも仕方ありません。

「平日も休日もできる限り夜更かしはしないことを前提に、休日に多めに寝るのであれば、長くとも1時間程度の寝坊にとどめましょう。それでも日中に眠気を感じる場合には、計画的な仮眠をとることがおすすめ。無計画なお昼寝は夜の眠気を妨げるため、12〜15時の間に、15〜20分程度の仮眠が適切です」
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「大人の生活リズムに引きずられるように子どもも慢性的な睡眠不足となり、ひいては社会的時差ボケに。昨今、問題視されている情緒が不安定な子どもの増加も、社会的時差ボケとの関連性が示唆されています」

ブルーマンデーや情緒が不安定な子どもの増加は、メンタル面や発育の問題によるものと思われがちですが、こうした睡眠の問題がそもそもの原因となっている可能性も。社会的時差ボケをはじめ、自身の眠りが心配のようなら、まずは一度、睡眠外来を受診してみることも1つの手段なのかもしれません。

 

睡眠総合ケアクリニック代々木

竹内 暢 先生

久留米大学医学博士課程卒業。2016年4月より、睡眠時無呼吸症候群をはじめとするあらゆる睡眠障害に対し、適切な検査・診断・治療を行う総合診療施設『睡眠総合ケアクリニック代々木』に勤務。

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