2021年09月30日 カテゴリ:眠り

夏の疲れは今のうちに!秋は睡眠リセットの季節?

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夏の疲れは今のうちに!秋は睡眠リセットの季節?
夏と秋を行き来するような毎日が続いていますが、暦の上ではすっかり秋。秋分の日を境に日照時間も短くなり、秋の夜長の到来です。実は秋こそ、しっかりと睡眠を取るべきシーズン。しかもぐっすりと眠りやすい時期でもあるんです!

そこで今回は、秋の眠りやすさから秋の睡眠が大切な理由、さらには季節の変わり目に生じやすい睡眠関連の疾患まで、あらゆる睡眠障害の治療を行う「睡眠総合ケアクリニック代々木」の竹内暢先生にお聞きしました。


 

日照時間の短い「秋の夜長」がメラトニンの分泌を促進!

秋にぐっすり眠れる理由のひとつとして、竹内先生が挙げるのが「気候の良さ」。人の眠りは温度や湿度に大きく左右されるため、夏の熱帯夜から解放されることは、睡眠にポジティブな影響をもたらします。

さらには温度や湿度のみならず、秋の夜長の「日照時間の短さ」も要因だそう。私たちが夜に眠くなり、朝に目覚めるのはサーカディアンリズム(概日リズム)という体内時計に基づきますが、日光を浴びることで体内時計がリセットされるのと同時に、夜眠るために必要なメラトニンというホルモン物質が、分泌されやすくなるというのです。

「日照時間が短くなる秋は、かえって眠りづらくなると思われるかもしれません。しかし、メラトニンは暗い環境において分泌されやすくなります。つまり日没が早まる秋はメラトニンの分泌が促進され、眠りやすくなるのです」(竹内先生)

『眠りのレシピ』でこれまでに何度もお伝えしている通り、就寝前のスマートフォンやパソコンが睡眠に悪影響を及ぼすのも、メラトニンに関係しています。ブルーライトの光を近距離に浴びることでメラトニンの分泌が阻害され、眠りづらくなってしまうのです。


 

寝苦しい夏は疲労回復が難しく、起立困難発生のリスクも!?

ゲームをする子供
では、眠りやすい環境に身を委ねるように、秋にしっかり眠るべき理由はどこにあるのでしょう?その答えはズバリ、「夏の疲れをリセットするため」です。

「人は眠っているあいだに脳や身体を休息させるため、睡眠のクオリティが低下すると、疲労回復の度合いも低下してしまいます。夜になっても温度も湿度も高い夏は眠りが浅くなりやすいことから、心身の疲れも回復しづらいのです」(竹内先生)

そして冬が訪れると、今度は寒さによる眠りづらさに悩まされます。温度も湿度も、日照時間も睡眠に好影響をもたらす秋に良質な睡眠を取り、夏の疲れをリフレッシュ!寒い冬に備えるのがベスト、というわけです。

さらに竹内先生は、夏に睡眠の質が低下しやすい理由として「生活リズムの乱れ」を指摘します。特に長い夏休みのある学生さんにとっては、夜更かしをしがちな時期。夜更かしによって生活リズムが乱れるばかりか、通学が不要なことから外出の機会も減り、メラトニンの分泌に必要な、日光を浴びる時間まで少なくなってしまいます。

「そこで注意したいのが、夏休みなど長期の休み明けに起こりがちな起立困難です。生活リズムが崩れてしまうと、自律神経のバランスも崩れてしまい起床後にさまざまな症状に悩まされてしまいます」(竹内先生)

起立困難になると、立ちくらみや、めまいにふらつき、頭痛や腹痛に動悸や食欲不振などの体調不良のほか、朝起きられない、夜眠れないといった症状が出ることも珍しくないとのこと。特に思春期のお子さんに発症しやすいため、気になる親御さんは一度、医療機関に相談することをおすすめします。


 

季節の変わり目こそ、生活や睡眠を見直すチャンス!

起立困難は夏休み明けに発症しやすい症状ですが、睡眠中に呼吸が浅くなったり、何度も呼吸が止まったりする『睡眠時無呼吸症候群』に関しては、夏の最中に悪化しやすい疾患だそう。

睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法は、鼻にCPAP(シーパップ)という医療器具を装着すること。それが夏の寝苦しさにより、意識的・無意識的に器具を外してしまうことから、結果的に症状を悪化させてしまうのです。

反対に、秋になると症状が軽くなるのが『むずむず脚症候群』。脚がむずむずしたり、虫が這うような感覚を覚えたり、火照りやかゆみを感じたり。脚の違和感によって睡眠障害を引き起こす疾患であり、季節性疾患の側面が認められているといいます。

「体調の変化に伴い、季節の変わり目には睡眠の状態にも変化が起こりやすくなります。異常を感じたときには医療機関を受診するのはもちろん、まず自分はどうしても眠れないのか、ご自身の生活や体調を見直してみてください」(竹内先生)

不眠の症状を訴えて竹内先生のもとを訪れる患者さんを例にしても、睡眠薬を使用せず、ご自身の生活を見直すことで症状が緩和される方もいるそう。体調に変化が起きやすい季節の変わり目は、裏を返せば、ご自身の生活と睡眠を見直す絶好のタイミングでもあるというわけです。


 

読書の秋も芸術の秋も、楽しむには内容の選別を!

とは言え、「秋の夜長」という言葉の通り、夜の長さと気候の良さが相まって、ついつい夜更かしをしたくなりますよね。そこで健康な毎日と健全な睡眠のためのポイントと合わせ、趣味の時間を上手に楽しむためのコツをご紹介します!

「非常に参考になるのが、厚生労働省が発表している『健康づくりのための睡眠指針 ~睡眠12箇条~』です。ここに挙げられている12の項目は季節にかかわらず、年間を通して習慣化したいことばかりです」(竹内先生)

健康づくりのための睡眠指針 ~睡眠12箇条~

1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

※1

ついつい夜更かしをしたくなる秋の夜長に、特に注意したいのが「10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。」という項目。夜更かしをせずに済むよう、上手に趣味の時間を作ることはもちろん、夜の時間帯に趣味を楽しむときには、「眠くなる」という生理現象を妨げない工夫が大切です。

「自宅で楽しむ趣味の代表例といえば、読者や映画鑑賞ですよね。そこで心掛けたいのが、内容をしっかり選別することです。ドキドキと興奮するようなスリリングな内容や、脳がフル回転するような難解な内容の本や映画は避け、あまり集中力を必要としない、心穏やかに楽しめる内容を選ぶようにしてください」(竹内先生)

スムーズに眠りに就くには心穏やかに、心身がリラックスした状態であることが大切。そのため、就寝前の運動にも要注意!適度に身体を動かし、筋肉をゆるめることは睡眠に好影響ですが、激しい運動はかえって悪影響。就寝前、運動によってリフレッシュをするなら、軽いストレッチ程度がおすすめです。

そして繰り返しになりますが、読書にしても映画鑑賞にしても、スマートフォンやパソコンのように、近距離で画面を見るような楽しみ方はNG。ご自身の健康な毎日のためにも夜更かしはせず、睡眠に悪影響のないよう、趣味の時間を満喫してくださいね!

※1健康づくりのための睡眠指針(厚生労働省)参照
 

睡眠総合ケアクリニック代々木

竹内 暢 先生

久留米大学医学博士課程卒業。2016年4月より、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする、あらゆる睡眠障害に対し、適切な検査・診断・治療を行う総合診療施設『睡眠総合ケアクリニック代々木』に勤務。

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