カテゴリ:眠り
睡眠中によだれが出る原因は?デメリットから対策まで解説
起きると、まくらによだれが…。
はたまた、電車での移動中、ツーッと唾液の垂れる感覚にハッとし、うたた寝から目覚めた、なんて経験をお持ちの人は少なくないはず。
なぜ私たちは、寝ているときによだれが出てしまうのでしょうか?
教えてくださるのは「歯科医療から健康寿命を延ばす」ことをモットーに歯科治療のみならず、いびきの治療も専門的に行う「古畑歯科医院」の院長・古畑升先生。
睡眠中のよだれの原因はもちろん、その原因から引き起こされるトラブルや原因を絶つためのトレーニングもご紹介します。
睡眠中のためコントロールできず、困った経験がある方も多いのではないでしょうか?
なぜ人は寝ているときによだれがこぼれて出てしまうのでしょうか?
「寝ている間によだれがこぼれる、その原因はずばり、口呼吸です。
口呼吸をしていると、口が開いた状態になります。睡眠中も唾液はたえず出ていますが、普通は無意識のうちに飲み込んでいます。
飲み込むためには口が閉じていなくてはなりません。口を開いていると飲み込むことができず、横を向くとその唾液が口の外にこぼれ出してしまうのです」
口を開いた状態で水を飲み込むことはできないので、試してみるとわかります。
しかし、古畑先生は「人の本来の呼吸は鼻呼吸ですが、さまざまな原因により口呼吸になってしまうと、口が開いた状態で寝ているわけですから、横を向くとよだれがこぼれてしまうのです」と指摘します。
その理由を古畑先生に解説いただきました。
【1】自律神経の特性によるもの
「自律神経には活動時に優位に働く交感神経と休息時に優位に働く副交感神経の2つがあり、前者が優位に働くと血管が収縮し、後者が優位に働くと拡張する傾向にあります。
よだれも交感神経優位の時は少なくなり、副交感神経優位の時は多くなります。緊張すると口の中がカラカラになるのはそのためです」
寝ている間は休息の時間なので、副交感神経が優位に働き、鼻の内部に張り巡らされた毛細血管が拡張します。
すると、鼻の粘膜がふくらみ、空気の通り道が少し狭くなります。
つまりは鼻呼吸が少ししづらくなることから、普段鼻の通りがあまり良くない方は、睡眠中は口呼吸になりやすいのです。
【2】食事の影響
最近は寝ている間に限らず、常に口呼吸をしている子どもが増えているんだとか。
「その理由の1つは口唇閉鎖力の弱さ、つまり口を閉じる力の弱さです。常に口をぽかーんと開けていれば、おのずと口呼吸になってしまいます」
口を閉じる力の弱い子どもが増えているのには、時代的な背景もあるようです。
「一昔前に比べ、軟らかい食事が増えたことから口元の筋肉を鍛えられず、結果的に口を閉じる力も育ちにくいというわけです」
【3】デジタル機器の影響
時代の変化によるものとして、デジタル機器の影響も見受けられるそう。
「昨今ではスマートフォンやタブレットが子どもにも浸透しつつありますが、こうした機器を凝視していると、段々と顔が下向きになります。
すると、口が開きやすくなるほか、鼻呼吸をするための気道が確保しづらくなり、口呼吸が常態化してしまうのです」
【4】風邪や花粉症の影響
もちろん鼻づまりが起きているときも、口呼吸になってしまいます。
「花粉症や風邪の症状により鼻がつまっている人は、普段なら正常に鼻呼吸ができていても、口呼吸になりやすい傾向にあります」
【1】よだれによってまくらが不衛生に
口呼吸を原因に寝ている間によだれが垂れれば、当然、まくらが汚れてしまいます。
よだれにはリゾチームなどの抗菌成分も含まれていますが、無数の細菌が含まれているため、お世辞にも衛生的とはいえず、汚れをそのままにしていることで肌にも害を及ぼすのです。
【2】歯周病、歯並びへの影響
口呼吸は口内の乾燥を招きます。
すると、唾液が持つ殺菌作用が低下し、口臭や歯周病のリスクが高まるほか、口をぽかーんと開いた状態は歯並びにも影響することがわかっています。
口が開いていると前歯にフタができず、出っ歯になりやすくなるのです。
【3】感染症のリスク
鼻には体に害を及ぼす細菌をブロックするためのフィルター機能が備わっているのに対し、実は口にはそうした機能がありません。
口呼吸をしていると鼻に備わったフィルター機能が働かず、口から侵入した外敵により、感染症にかかりやすくなるのです。
口臭や歯周病の原因にもなり、感染症にかかりやすくもなり、さらには歯並びまで変えてしまう恐れのある口呼吸。
寝ている間はもちろん、鼻呼吸を習慣化するには、どうしたら良いのでしょうか?
【1】「あいうべ体操」を行う
「口呼吸から鼻呼吸にシフトするために有効なのが、『あいうべ体操』です。
これは口腔内の機能を正常に育む『MFT(口腔筋機能療法)』の1つです。MFTは、米・スタンフォード大学にも認められた方法です。
非常に手軽ながら、確かな効果が実証されています」
「あいうべ体操」は口呼吸の改善だけでなく、二重あごの予防にも効果的。
テレビを観ながらでも、お風呂に浸かりながらでも実践できますよ!
1.「あ〜」と大きく口を開き、その状態を1秒間キープ
2.「い〜」と思いきり口を横に広げ、その状態を1秒間キープ
3.「う〜」と唇を突き出すように口をすぼめ、その状態を1秒間キープ
4.「べ〜」と舌先をしっかり下に伸ばし、その状態を1秒間キープ
[1]から[4]の動作を計10回繰り返します。理想は10回の繰り返しを1日3セット行いましょう。
「あいうべ」と声を出すことよりも、1つ1つの動作を大きく、しっかりと行うことが重要です。
この「あいうべ体操」を開発したのは、古畑先生との共著もある今井一彰先生。
今井先生は福岡県福岡市にある「みらいクリニック」の院長を務め、地元の子どもたちの口呼吸を改善すべく、福岡市の小学校に「あいうべ体操」を広めたところ、それまで頻発していたインフルエンザによる学級閉鎖がなくなったといいます。
「あまりにも効果的だったため、福岡市の事例が全国にテレビ放送されたほどです。
私が歯科校医を担当している小学校でも『あいうべ体操』を広めたところ、やはり、学級閉鎖がパタリとなくなったのには驚きました」
【2】横向き寝+口閉じテープ
「あいうべ体操」は鼻呼吸への近道ですが、先にご紹介したとおり、寝ている間は自律神経の特性から、特に口呼吸になりやすい傾向にあります。
睡眠中は意図的に口元の動きをコントロールすることが難しいため、古畑先生は「睡眠環境を見直すことも大切です」と指摘します。
「寝ている間の口呼吸を予防するには、睡眠中に開いてしまう口元を閉じるために開発された専用のテープが有効です。口呼吸の防止のほか、いびきにも効果があります。
また、低すぎるまくらで仰向き寝をすると、自然と顎が上がるような姿勢になり、口呼吸になってしまう人が少なくありません。鼻呼吸をスムーズにするには横向き寝がおすすめです。
一方、横向き寝では口の端から唾液がこぼれやすくなるため、横向き寝がしやすいように開発された枕を使用し、口元を閉じるためのテープを併用するのが良いでしょう」
医師がすすめる健康枕 横楽寝(高め)
寝ている間によだれが垂れてしまう原因には口呼吸が影響し、口呼吸の原因には今回ご紹介した理由のほかに、“鼻の病気”が隠れているケースもあるとか。
「鼻づまりが睡眠中の口呼吸につながりますが、鼻づまりは『副鼻腔炎(蓄膿症)』や『鼻中隔湾曲症』、鼻にポリープができる『鼻茸』などによっても引き起こされます。
なかには治療が必要なケースもあるため、口呼吸が気になる人は耳鼻科を受診しましょう」
寝ている間のよだれは鼻呼吸ができず、口呼吸になっていることのシグナル!
古畑先生が指摘するように、なにかしらの疾患が隠れていることもあるため、このシグナルを軽視してはいけないのです。
はたまた、電車での移動中、ツーッと唾液の垂れる感覚にハッとし、うたた寝から目覚めた、なんて経験をお持ちの人は少なくないはず。
なぜ私たちは、寝ているときによだれが出てしまうのでしょうか?
教えてくださるのは「歯科医療から健康寿命を延ばす」ことをモットーに歯科治療のみならず、いびきの治療も専門的に行う「古畑歯科医院」の院長・古畑升先生。
睡眠中のよだれの原因はもちろん、その原因から引き起こされるトラブルや原因を絶つためのトレーニングもご紹介します。
寝ているときによだれが出る原因
寝ている間、無意識に出てしまうよだれ。睡眠中のためコントロールできず、困った経験がある方も多いのではないでしょうか?
なぜ人は寝ているときによだれがこぼれて出てしまうのでしょうか?
「寝ている間によだれがこぼれる、その原因はずばり、口呼吸です。
口呼吸をしていると、口が開いた状態になります。睡眠中も唾液はたえず出ていますが、普通は無意識のうちに飲み込んでいます。
飲み込むためには口が閉じていなくてはなりません。口を開いていると飲み込むことができず、横を向くとその唾液が口の外にこぼれ出してしまうのです」
口を開いた状態で水を飲み込むことはできないので、試してみるとわかります。
しかし、古畑先生は「人の本来の呼吸は鼻呼吸ですが、さまざまな原因により口呼吸になってしまうと、口が開いた状態で寝ているわけですから、横を向くとよだれがこぼれてしまうのです」と指摘します。
寝ているときに口呼吸になる原因
ではなぜ、睡眠中に口呼吸になってしまうのでしょうか?その理由を古畑先生に解説いただきました。
【1】自律神経の特性によるもの
「自律神経には活動時に優位に働く交感神経と休息時に優位に働く副交感神経の2つがあり、前者が優位に働くと血管が収縮し、後者が優位に働くと拡張する傾向にあります。
よだれも交感神経優位の時は少なくなり、副交感神経優位の時は多くなります。緊張すると口の中がカラカラになるのはそのためです」
寝ている間は休息の時間なので、副交感神経が優位に働き、鼻の内部に張り巡らされた毛細血管が拡張します。
すると、鼻の粘膜がふくらみ、空気の通り道が少し狭くなります。
つまりは鼻呼吸が少ししづらくなることから、普段鼻の通りがあまり良くない方は、睡眠中は口呼吸になりやすいのです。
【2】食事の影響
最近は寝ている間に限らず、常に口呼吸をしている子どもが増えているんだとか。
「その理由の1つは口唇閉鎖力の弱さ、つまり口を閉じる力の弱さです。常に口をぽかーんと開けていれば、おのずと口呼吸になってしまいます」
口を閉じる力の弱い子どもが増えているのには、時代的な背景もあるようです。
「一昔前に比べ、軟らかい食事が増えたことから口元の筋肉を鍛えられず、結果的に口を閉じる力も育ちにくいというわけです」
【3】デジタル機器の影響
時代の変化によるものとして、デジタル機器の影響も見受けられるそう。
「昨今ではスマートフォンやタブレットが子どもにも浸透しつつありますが、こうした機器を凝視していると、段々と顔が下向きになります。
すると、口が開きやすくなるほか、鼻呼吸をするための気道が確保しづらくなり、口呼吸が常態化してしまうのです」
【4】風邪や花粉症の影響
もちろん鼻づまりが起きているときも、口呼吸になってしまいます。
「花粉症や風邪の症状により鼻がつまっている人は、普段なら正常に鼻呼吸ができていても、口呼吸になりやすい傾向にあります」
寝ているときに口呼吸になるデメリット
口呼吸にはさまざまな要因があることがわかりましたが、口呼吸になることでどんな影響があるのでしょうか?【1】よだれによってまくらが不衛生に
口呼吸を原因に寝ている間によだれが垂れれば、当然、まくらが汚れてしまいます。
よだれにはリゾチームなどの抗菌成分も含まれていますが、無数の細菌が含まれているため、お世辞にも衛生的とはいえず、汚れをそのままにしていることで肌にも害を及ぼすのです。
【2】歯周病、歯並びへの影響
口呼吸は口内の乾燥を招きます。
すると、唾液が持つ殺菌作用が低下し、口臭や歯周病のリスクが高まるほか、口をぽかーんと開いた状態は歯並びにも影響することがわかっています。
口が開いていると前歯にフタができず、出っ歯になりやすくなるのです。
【3】感染症のリスク
鼻には体に害を及ぼす細菌をブロックするためのフィルター機能が備わっているのに対し、実は口にはそうした機能がありません。
口呼吸をしていると鼻に備わったフィルター機能が働かず、口から侵入した外敵により、感染症にかかりやすくなるのです。
寝ているときのよだれの対策
口臭や歯周病の原因にもなり、感染症にかかりやすくもなり、さらには歯並びまで変えてしまう恐れのある口呼吸。
寝ている間はもちろん、鼻呼吸を習慣化するには、どうしたら良いのでしょうか?
【1】「あいうべ体操」を行う
「口呼吸から鼻呼吸にシフトするために有効なのが、『あいうべ体操』です。
これは口腔内の機能を正常に育む『MFT(口腔筋機能療法)』の1つです。MFTは、米・スタンフォード大学にも認められた方法です。
非常に手軽ながら、確かな効果が実証されています」
「あいうべ体操」は口呼吸の改善だけでなく、二重あごの予防にも効果的。
テレビを観ながらでも、お風呂に浸かりながらでも実践できますよ!
1.「あ〜」と大きく口を開き、その状態を1秒間キープ
2.「い〜」と思いきり口を横に広げ、その状態を1秒間キープ
3.「う〜」と唇を突き出すように口をすぼめ、その状態を1秒間キープ
4.「べ〜」と舌先をしっかり下に伸ばし、その状態を1秒間キープ
[1]から[4]の動作を計10回繰り返します。理想は10回の繰り返しを1日3セット行いましょう。
「あいうべ」と声を出すことよりも、1つ1つの動作を大きく、しっかりと行うことが重要です。
この「あいうべ体操」を開発したのは、古畑先生との共著もある今井一彰先生。
今井先生は福岡県福岡市にある「みらいクリニック」の院長を務め、地元の子どもたちの口呼吸を改善すべく、福岡市の小学校に「あいうべ体操」を広めたところ、それまで頻発していたインフルエンザによる学級閉鎖がなくなったといいます。
「あまりにも効果的だったため、福岡市の事例が全国にテレビ放送されたほどです。
私が歯科校医を担当している小学校でも『あいうべ体操』を広めたところ、やはり、学級閉鎖がパタリとなくなったのには驚きました」
【2】横向き寝+口閉じテープ
「あいうべ体操」は鼻呼吸への近道ですが、先にご紹介したとおり、寝ている間は自律神経の特性から、特に口呼吸になりやすい傾向にあります。
睡眠中は意図的に口元の動きをコントロールすることが難しいため、古畑先生は「睡眠環境を見直すことも大切です」と指摘します。
「寝ている間の口呼吸を予防するには、睡眠中に開いてしまう口元を閉じるために開発された専用のテープが有効です。口呼吸の防止のほか、いびきにも効果があります。
また、低すぎるまくらで仰向き寝をすると、自然と顎が上がるような姿勢になり、口呼吸になってしまう人が少なくありません。鼻呼吸をスムーズにするには横向き寝がおすすめです。
一方、横向き寝では口の端から唾液がこぼれやすくなるため、横向き寝がしやすいように開発された枕を使用し、口元を閉じるためのテープを併用するのが良いでしょう」
医師がすすめる健康枕 横楽寝(高め)
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寝ている間によだれが垂れてしまう原因には口呼吸が影響し、口呼吸の原因には今回ご紹介した理由のほかに、“鼻の病気”が隠れているケースもあるとか。
「鼻づまりが睡眠中の口呼吸につながりますが、鼻づまりは『副鼻腔炎(蓄膿症)』や『鼻中隔湾曲症』、鼻にポリープができる『鼻茸』などによっても引き起こされます。
なかには治療が必要なケースもあるため、口呼吸が気になる人は耳鼻科を受診しましょう」
寝ている間のよだれは鼻呼吸ができず、口呼吸になっていることのシグナル!
古畑先生が指摘するように、なにかしらの疾患が隠れていることもあるため、このシグナルを軽視してはいけないのです。
古畑歯科医院 古畑いびき睡眠呼吸障害研究所
古畑 升 先生
日本歯科大学附属病院内科臨床教授、いびき・睡眠時無呼吸診療センター所属。日本歯科大学卒業後、昼と夜に別の歯科医院に勤務し、臨床の経験を積む。休日も研修会に参加し、スウェーデンのイエテボリ大病院へ研修に訪れたことも。その後、東京・赤坂駅近くに「古畑歯科医院」を開業。いびき治療にも精通し、東京医科歯科大学附属病院 快眠歯科 いびき・無呼吸外来にて非常勤講師を務めた経験も持つ。「あいうべ体操」の開発者である今井一彰先生との共著に『睡眠と呼吸』(クインテッセンス出版)がある。日本睡眠学会歯科専門医、日本睡眠歯科学会認定医、指導医。
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