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睡眠の質は心と身体の“通知表”。よく眠るためのアーユルヴェーダの教え

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睡眠の質は心と身体の“通知表”。よく眠るためのアーユルヴェーダの教え

大切なプレゼンテーションの前日や日中の後悔を思い出してしまう夜。いろいろな快眠方法を試してみたけれど、いまいち効き目がなく夜が明けてしまった...なんて経験はどんな方もお持ちなのではないでしょうか。それだけ心と身体を切り離して考えることは難しいものです。

今回は、心と身体を1つのものとして捉えることを基本とし、およそ5000年もの歴史を持つ医学「アーユルヴェーダ」の観点から、よく眠るためのコツをひも解いていきます。お話を聞いたのは、米国補完医療大学アーユルヴェーダ専門家のMOTOKOさんです。
 

アーユルヴェーダにとって睡眠は、健康状態を示す“通知表”のようなもの

――まずは、そもそも「アーユルヴェーダ」とはどんなものなのか教えてください。

アーユルヴェーダは日本語に訳すと「生命の科学」といって、およそ5000年前にインド・スリランカ大陸で発祥した医学です。古典書には、戦争など人々の間でネガティブな感情が蔓延したことで起きる心の病が身体の不調をつくり出したと記載されています。

例えば、現代でも不安なことやストレスが溜まっていると寝つけなかったり、反対にお休みの前日は安心してぐっすり眠れたといった経験は誰しもあるかと思います。心と身体は分離されたものではなく「1つのものとして診る」というのが、アーユルヴェーダの基本です。

――現地のインドでは、どのように用いられているのでしょうか?

インドでは日本の西洋医学と同じように、アーユルヴェーダの総合病院があり、小児科、産婦人科、精神科といった形で専門領域が細やかにわかれています。AYUSH(アシュ)と呼ばれる、アーユルヴェーダやヨガなどの代替療法を管轄する省庁まであり、貧しい方でも受診できる、非常に生活に根づいたものです。

――アーユルヴェーダの教えの中では「睡眠」はどのような役割だとされていますか?

睡眠は、日常の食生活や精神状態が健やかであるかを示す“通知表”のようなものです。

アーユルヴェーダでは、きちんと消化されなかった「毒素」が身体に溜まることで、便秘や頭痛、目の渇きなどの不調が現れると考えます。それらを治そうと身体が働くことで全体のバランスが乱れ、その結果として睡眠の質が落ちていきます。つまり、小さな不調が積み重なった結果として睡眠の質が下がる、ということです。

――睡眠の質が低下しているということは、日常を健やかに過ごせていない証なんですね。

不眠だけでなく、例えば癌や精神疾患という症状であったとしてもアーユルヴェーダでは同じ考え方をします。もちろんそれぞれの病気に対する対処法もたくさんありますが、根本的に解決するには「毒素」を身体に溜めない生活を身につけることが唯一の方法となります。

体質別で見る、アーユルヴェーダがすすめる睡眠時間

――アーユルヴェーダがすすめる睡眠時間について教えてください。

その人の体質によって適切な睡眠時間が変わってきます。アーユルヴェーダには、カパ、ピッタ、ヴァータという3つの体質があり、カパ体質の人は6〜7時間、ピッタ、ヴァータ体質の人は8〜9時間必要であるとされています。ここまでの睡眠時間を確保するのは現代人には難しいと思うので、マイナス1時間程度を目安にしていただいてよいかと個人的には思っています。

――それぞれの体質の特徴を教えていただけますか?

カパがもっとも体力があり、ヴァータが体力がない、ピッタはその中間となります。カパ体質の人は比較的見た目もどっしりとしていて、行動に移すのは遅いけれど継続力のあるタイプ。反対にヴァータ体質の人は細身の方が多く、行動に移すのは早いけれど飽き性。

自分の体質を見わけるには専門家に診てもらう他、ネットにある体質チェックシートを使ってみるとよいと思います。自己診断の際にポイントになるのが、現在の自分ではなく小学校3、4年生の自分の状態に当てはまるものにチェックをすることです。

現代人の生活では、目の渇きや肩こりなどヴァータ寄りの項目が多く当てはまってしまいます。幼少期の自分を思い出しながらチェックしていくと、本来の自分の体質に近い結果になるかと思います。

――体質別に良い眠りのための心がけを教えてください。

カパ体質はどっしりと重たいイメージ、ヴァータ体質の人は軽いイメージを持っていただけるとわかりやすいのですが、カパ体質は寝つきのいい人が多いんです。反対にヴァータ体質の人は、寝つきの悪い人が多い。

そのため、ヴァータ体質の人ほど眠りに注意を払う必要がありますが、カパ体質の人は眠りすぎないように心がける必要があります

眠ることももちろん大切なのですが、アーユルヴェーダでは過眠や多眠は病の元とも言われています。二度寝や仮眠もあまりおすすめできません。

――とはいえ、食後は眠くなりがちですよね...。どのように過ごすとよいのでしょうか?

椅子に座ったまま10分程度寝るぶんには良いとされています。軽い仮眠のことを「パワーナップ」と最近聞くようになりましたが、5000年前の古典書にもすでに書かれていたことなんです。

また、あまりにも睡眠時間が足りなかった日は、その足りないぶんの半分の時間の睡眠を昼食前にとるのはOKとも書かれています。8時間寝たい人が4時間しか寝られなかった場合、残りの半分つまり2時間であれば、昼食前に寝てもいいということです。
 

毒素を溜めずによく眠る!1日の過ごし方



――夜によく眠るための1日の過ごし方を教えてください。


まず、朝に太陽を浴びることが大切です。人間には「サーカディアンリズム」という体内時計が備わっていて、太陽を浴びることはよく眠るためのホルモン分泌にも影響を与えます。科学でも立証されていることですが、古典書にも書かれていることです。

食事に関しては、朝は軽め、昼はしっかり食べて、夜は寝る3時間前には済ませるというのが身体に「毒素」を溜めないための基本となっています。

5000年前にスマホはありませんでしたが、「夜には小さくてチカチカ光るものを見てはいけない」との記載があるんです。スマホの誕生を予言しているようでおもしろいですよね(笑)

――古典書に書かれていることが、現代において推奨されている内容とほぼ変わらないことに驚きました...!特に寝つきが悪い方にすすめるナイトルーティンはありますか?

睡眠に困っている方におすすめなのが、オイルを使ったヘッドマッサージです。お風呂に入る2時間ほど前に、シャンプーをするようにオイルを頭皮に揉み込みます。髪が長い方は結んで時間を置いてシャワーで洗い流してください。

髪の毛がギトギトしたまま時間を置くのが苦手な方は、耳の上あたりの側頭筋や頭頂部を揉んであげるだけでもリラックスできるかと思います。早い方であれば、オイルを塗ってから10分程度でウトウトしてきますよ。

――ヘッドマッサージに使うオイルは何を選んだらよいでしょうか?

どんな体質の人にもすすめたいのが「スウィートアーモンドオイル」。スーパーやネットでも気軽に購入することができます。アーモンドの中には脳の神経系に栄養を与えてくれる成分が入っていると言われています。

体質ごとに紹介すると、カパとヴァータ体質の人は「太白ごま油」、ピッタ体質の人は「ココナッツオイル」がおすすめです。

――他にもおすすめのナイトルーティンはありますか?

眠る前のホットミルクもおすすめです。ミルク200mlにスーパーに小さな瓶で売られている「ナツメグ」を少し入れて眠る1時間前くらいに飲むと、小腹が満たされて入眠しやすくなるかと思います。牛乳が苦手な方は、白湯100mlと牛乳100mlを混ぜてもいいかと思います。

あとは、少し上級者編にはなりますが、サロンなどで行われている「シローダーラー」を試してみるのもいいと思います。「シローダーラー」はほんのり温かいオイルを頭に垂らします。睡眠の質を改善するためにアーユルヴェーダの中で最も使われる施術です。
 
***


睡眠は、心と体の“通知表”のようなもの――。
アーユルヴェーダの観点からも、睡眠は食事と並ぶくらい健康において大切なものであることがわかりました。

よく眠れていない、寝つきが悪いという方は、頭痛や目の疲れなど小さな不調はないかどうか、また食事中や睡眠中に心がリラックスできているかなど、体から発せられる小さな声に気づいてあげることから生活を見直してみるといいかもしれません。
 

ヒーラー・米国補完医療大学アーユルヴェーダ専門家

MOTOKOさん

アーユルヴェーダをはじめとする東洋医学に精通し、スピリチュアルヒーリングを交えた独自のメソッドで、のべ数千人以上のセッションを行う。医療法人ハタイクリニックにてアーユルヴェーダセラピスト勤務やインド人医師のサポートを通じて沢山の臨床経験を経て独立。セラピスト歴は20年以上。サロン等へのアーユルヴェーダ導入、講師育成などにも携わる。シータヒーリング®最高峰の講師資格「サイエンス」取得。現在は講座や講演などを行なう他、雑誌やYouTubeなどメディアで多領域で活動中。またホリスティックメディア『QUANTA』では、年間のリトリートプログラムやリトリートツアーでのプログラムなども提供中。
https://quanta.tokyo
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