2023年10月10日 カテゴリ:眠り

銭湯のメリットと快眠効果について温泉療法専門医に聞きました!

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銭湯のメリットと快眠効果について温泉療法専門医に聞きました!
 

手足をぐんと伸ばすことができる広い浴槽、高い天井へもくもくと上っていく湯気。銭湯の湯船に浸かるひとときは、自宅のお風呂では得難い開放感と心地良さに包まれます。

10月10日は「銭湯の日」。銭湯にはどのような効果があるのか、また、快眠につなげるためのおすすめの入浴方法について、20年にわたり入浴を医学的に調査してきた東京都市大学人間科学部教授で温泉療法専門医の早坂信哉先生に伺いました。

 

銭湯のメリットは?メンタルにも効果が!

銭湯は心と体の両方にメリットがあるようです。自宅のお風呂ではなく、銭湯まで足を運ぶことで得られる効果とは?

①広くていつもと違う空間がメンタルをポジティブにする


まずはじめに、銭湯で得られる大きなメリットとして「気分転換になること」と話してくれた早坂先生。銭湯のように自宅以外のお風呂に行くことで、日常とは異なる場所に赴いて療養する「転地療養」のような効果が得られると言います。

「銭湯は天井が高く、浴槽も広く、自宅のお風呂と比べて非常に気分転換になる場所です。さらに銭湯によっては内装にこだわりがあったり、変わり湯があったりと、五感を刺激する要素が多く見られます。交感神経を適度に刺激することで、メンタル面にもポジティブな効果があると考えられています」

銭湯では、2種類以上の浴槽があるのが一般的。なかには露天風呂やサウナがある施設もあり、「いつもと違う」環境で入浴することで気分転換になり、リラックス効果を高めてくれるそうです。


②コミュニティーの場として活用できる


早坂先生の長年の研究によると、銭湯に週1回以上通っている人はそうでない人と比べて、主観的健康感や幸福度が高いことがわかったそうです。また、銭湯に通っている人は、笑う頻度が高く、友人知人が多いことや社会活動に参加している割合が高いことも明らかになっています。

「昨今では、友人知人が多いことや社会活動へ参加していることが、健康維持のための重要な要素であると注目されています。特に一人暮らしの高齢者にとっては、銭湯に来て知人友人とおしゃべりすることが、日常のささやかな喜びにつながっているケースをよく耳にします」

偶然会ったご近所さんとおしゃべりをしたり、常連であれば銭湯のスタッフさんと会話が弾むこともあるでしょう。銭湯は人とつながるコミュニティの場としても重宝されているようです。


③家のお風呂より体があたたまる


銭湯の浴槽は自宅の浴槽と比べて湯量が多いため、冷えた体で入ってもお湯の温度は下がりにくく、「自宅のお風呂よりも銭湯の方が体は温まりやすい」と考えられています。

「家庭の湯船はお湯の量が少ないため、冷えた体で入浴すると一時的に湯船の温度が下がります。一方、銭湯は湯の量が多いため、冷えた体で入ったとしてもお湯の温度に大きな変化はありません。そのため、多くの人が銭湯のほうが身体の芯まで温まりやすいと感じているようです」


④血流がアップする


体を温めることの最大のメリットは、「血流が改善し、全身に栄養分や酸素をたくさん運んでくれること」と早坂先生。

人間の体は細胞で構成されていますが、細胞が生きていくためには酸素と栄養分が必要です。これを運搬してくれるのが血流なのだそう。

「血液によって運ばれた栄養分や酸素によって、細胞は化学反応を起こしエネルギーを作ったりタンパク質を作ったりします。その結果、燃えカスである老廃物や二酸化炭素が作られますが、これらを回収してくれるのも血液の流れです」

そのため、体を温め血流が良くなると、疲れが取れすっきりした感覚が得られたり、むくみの解消にもつながったりするのです。

「さらに、体を温めることは神経の過敏性を抑え、慢性的な痛みを解消してくれます。関節の周囲を包んでいる靭帯の柔軟性が増し、関節の痛みが取れていくのです。また適度に体を温めると副交感神経が優位となり、心身のリラックスにもつながります」と早坂先生。入浴後に、全身がゆるんだような感覚がするのは、体を温めることによる効果のようです。
 

快眠できる銭湯の効果的な入り方

銭湯に入った日は、ぐっすり眠れたという経験のある方は多くいるのではないでしょうか。温冷混合浴やサウナなど銭湯にはさまざまな入浴方法がありますが、快眠に導く銭湯の入り方について聞いてみました。


①快眠を意識するなら「40度のお湯に10分」浸かる


銭湯というと「昔ながらのあつ湯」を想像する方も多いはず。しかし最近では、「あつ湯のみ」という銭湯は少なく、ぬる湯とあつ湯の両方を備えている施設が一般的です。

「快眠を意識するなら副交感神経を刺激する入浴方法がオススメです。刺激の強いあつ湯は交感神経を刺激し快眠を妨げるため、ぬるめのお湯を選ぶのが良いでしょう。夕方以降に銭湯に行くなら『40度以下のぬるめのお湯に10分程度』浸かるようにしましょう。途中で出ても大丈夫。トータル10分、長くても15分程度の入浴時間が快眠のためのポイントです」

あつ湯と同様に、泡風呂やジェットバスなど、水の動きのある浴槽は交感神経を刺激するため、静かに落ち着いて入れる浴槽を選ぶと良いとのこと。

「身体の芯まで温めよう」と長時間浸かってしまうと、のぼせてしまう危険性もあるため気をつけましょう。身体に負荷をかけずにリラックス効果を高めたいなら、数分おきに出たり入ったりを繰り返す「反復浴」が効果的。のぼせ予防にもなり、じっくり身体を温められる入浴方法です。


②快眠を意識するなら、交感神経を刺激する「水風呂」は避けるのが◎


熱めのお風呂と水風呂に交互に入る「温冷交互浴」は、血流改善による疲労回復効果が得られると言われていますが、身体への刺激が強いため、睡眠を意識するなら夕方以降は避けましょう。サウナを利用する場合はひな壇の下段に座り、「60度程度のサウナを数分」が良いでしょう。

「夕方以降のサウナは、汗が流れ落ちる手前で出るようにしましょう。また、交感神経への刺激になる水風呂の利用は控え、サウナから出た後は外気浴か、30度くらいの『やや冷たい』と感じる程度のシャワーを浴びると良いでしょう」


③「就寝90分前」に浴槽を出ると心地良く入眠できる


体内の深部体温が下がると、「おやすみモード」に切り替わり、眠気が訪れます。入浴することで深部体温が0.5〜1度上がるため、その体温が下がるまでに就寝の準備を整えておけると◎

「心地良い入眠のために、就寝90分前には浴槽から出るのが理想です。銭湯の場合、40度の全身浴なら10分程度で約0.5度体温が上がります。入浴剤が入ったお湯や浴室の温度が高いと1度近く上がることも。0.5度上がった体温が元に戻るのに約1時間と言われているため、入浴してから90分後には寝室にいるようにすると良いでしょう」

睡眠のためには、自宅と銭湯までの距離感も大切。あまり遠い場所に行ってしまうと、帰宅した頃には身体が冷え切ってしまうことも。特に寒い時期には帰宅時に湯冷めをしないように気をつけたいものですね。

「温泉を使った浴槽や、入浴剤が入っている浴槽があるなら、最後に浸かってから出ると保温効果を高め、湯冷めを防いでくれるのでおすすめです。この場合は湯上がりのシャワーは控えておきましょう。皮膚表面に入浴剤成分や温泉成分が付着することで、水分の蒸発を防ぎ、温まりを持続してくれます」

入浴時は水分補給をしっかりと、湯上がりの立ちくらみにも注意!

銭湯に限らず入浴時の注意点として「湯上がりの立ちくらみと水分補給」を挙げた早坂先生。湯船から立ち上がった瞬間、立ちくらみをしてしまうのは、入浴に伴う血圧低下が原因とのこと。

「一般的に入浴中は血管が拡がっているため血圧が低い状態です。そこから急に立ち上がると、頭に十分に血液が巡らず立ちくらみを起こします。これは年齢にかかわらず、若い方でも起こり得る症状。お風呂から上がる際は、手すりを使ってゆっくりと上がるようにしましょう」

また、水分補給にはアルコールやカフェインを含まないドリンクを選び、入浴の前後で合計500mlくらいを目安に飲用しましょう。早坂先生のオススメは、ミネラル入り麦茶や牛乳。ミネラル入りの麦茶には、香ばしい香りの物質「アルキルピラジン」が含まれており、リラックス効果が得られるだけでなく、水に比べて脱水を軽減してくれます。牛乳に含まれるタンパク質も、水に比べて脱水を補正する力が強いという研究結果があるため、湯上がりドリンクとしてオススメです。
 

「銭湯通いが幸福度を高める」という研究結果も

銭湯に週1回以上通っている人は「幸福度が高い」という調査結果がある他、さらに、お風呂に浸かることで、唾液中のストレスホルモンが減少するという結果も出ているそうです。

「昨年の研究では、普段銭湯を利用していない高齢者に『週2回の銭湯通い』をしてもらったところ、4週間で体力の向上が見られるほか、メンタル面にもプラスの効果が見られました。銭湯に通うことは、入浴による温浴効果だけでなく、外出して人とのコミュニケーションを取るという面でも、さまざまな効果が得られることがわかってきています」

湯船に浸かることで得られる健康効果が、この数年で明らかになってきていると話してくれた早坂先生。肌寒くなるこれからの季節、銭湯で身体を芯から温めつつ、気分転換してみてはいかがでしょうか。

早坂信哉先生

東京都市大学人間科学部教授・学部長/博士(医学)/温泉療法専門医

早坂信哉先生

宮城県出身。自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。地域医療で得た経験をきっかけに「入浴と健康の関係」への研究を始める。以降、20年にわたり3万人以上の入浴を医学的に調査している。
https://hayasakashi.wixsite.com/bath

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