2021年11月29日 カテゴリ:眠り

寝つきも寝起きもスムーズに?睡眠専門医が教える「白湯」の真実

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寝つきも寝起きもスムーズに?睡眠専門医が教える「白湯」の真実
寒さが深まるにつれ、毎年のように話題になる「白湯」を用いた健康法。白湯にはさまざまな健康効果が謳われ、なかには眠りにまつわる「白湯を飲むと寝つきが良くなる」「寝起きに白湯を飲むとすっきり目覚められる」といった情報も見られます。

そもそも白湯とは、人肌から50℃程度のぬるま湯のこと。健康効果が話題になる一方、白湯を作るのが面倒な人も少なくないはずです。

そこで本格的な冬を迎える前に知りたいのが、白湯の効果の真偽!教えてくれるのは、疲労回復の観点から睡眠障害や不眠症を治療する『東京疲労・睡眠クリニック』の院長、梶本修身先生です。

 

白湯に健康効果が謳われる理由は、あくまでも消去法?

寝る前、起床後に飲む「白湯」にはズバリどんな効果があるのでしょうか?

「就寝前に水分を摂取することも、寝起きに水分を摂取することも理にかない、健康効果が実証されています。しかし、その水分が白湯でなければいけない、といった科学的根拠はありません」(梶本先生)

そう、眠りにまつわる白湯の効果は、厳密には「ない」というのが正解。梶本先生が指摘する通り、「白湯だから効果がある」とは言えず、大切なのはあくまでも「就寝前と寝起きに水分を摂取すること」なのです。

それなのにどうして、白湯が持て囃されるのか。白湯の健康効果が謳われる理由について、梶本先生は「消去法ではないか」と推察します。

「冷たすぎる水も熱すぎるお湯も刺激となり、交感神経を高め、スムーズな入眠を妨げます。また、水を一気に飲むと多くが尿として排出されてしまうため、体に吸収させるには、ある程度の温かさによって一気飲みを防げる白湯がいい、といった具合ではないでしょうか」(梶本先生)

つまりわざわざ白湯を作らずとも、就寝前と寝起きに常温水を飲めば、健康効果を得られるということ!ただし、特に冬の場合は冷蔵庫で冷やした水でさえも体を冷やしてしまうため、ミネラルウォーターを冷蔵庫に保存している方は要注意です。

また、蛇口から注いだ水も、冬場はどうしても冷たくなりがち。そのため梶本先生は、「体への負担を考えると、特に冷え込みの強い北海道や東北地方にお住まいの方は、白湯にされると良いかもしれません」とアドバイスします。


寝る前の水分補給が、働き通しの自律神経を休ませる

白湯であっても、常温水であっても、就寝前と寝起きの水分補給に健康効果があるのは、梶本先生のお墨付き。就寝前にコップ1杯の水を飲むことで寝つきがスムーズになり、さらには日中の疲れも取れやすくなるというのです。

「就寝前の水分補給を推奨する理由は、脱水の防止と血流改善にあります。体内の水分が不足すると血流が滞り、そうすると交感神経が優位に働き始めます。スムーズに眠りに就くには副交感神経を優位に働かせる必要があるため、寝る前の水分補給が、寝つきの良さにつながるのです」(梶本先生)

交感神経と副交感神経は互いにバランスを取りながら、体のあらゆる機能を司っています。このふたつを合わせて「自律神経」と呼びますが、なかでも自律神経の最たる仕事は、脳に必要な酸素や栄養素を送るための血流コントロールです。

「交感神経が優位になると血管が収縮し、副交感神経が優位になると血管が拡張しますが、睡眠中は本来、副交感神経が優位に働くもの。しかし、血流が滞っていると自律神経が『もっと必死に脳に酸素や栄養素を送らねば!』と血圧を上げようと血管を収縮させます。つまりは、交感神経を優位にするための指令を送るのです」(梶本先生)

血流が滞っていなければ、睡眠中は副交感神経優位のままでいられますが、血流が滞っていては交感神経への切り替えが必要となり、そのスイッチング作業のために自律神経はフル稼働。本来、体を休ませるべき睡眠中にもフル稼働を続けていては、日中の疲れが取れにくくなるのも仕方ありません。

「だからこそ、就寝前の水分補給が重要になります。飲んだ水がすぐに吸収されることはありませんが、寝る前に200cc程度の水を飲むことで体内に吸収され、血流を促してくれます。この血流改善によって交感神経を優位に働かせる必要がなくなり、自律神経も休息できるのです」(梶本先生)
 

寝起きの体はプチ脱水状態!朝の1杯が健康のカギ

就寝前の水分補給が寝つきのスムーズさにつながり、日中の疲れを取るにも有効な一方、寝起きにコップ1杯の水を飲むことで、すっきり目覚められるといいます。では、その理由はどこにあるのでしょう?

「すっきり目覚められるのも、自律神経に関係しています。私たちの体は24時間働き続けていますが、心身を休ませるべき睡眠中は、その働きが穏やかになります。自律神経も同様のため、すっきり目覚めるにはまず、自律神経を起こしてあげる必要があるのです」(梶本先生)

つまり寝起きに飲むコップ1杯の水が、自律神経を目覚めさせる呼び水になるということ。体内に水分が取り込まれることで、消化器官が活動をスタート。朝から食欲が湧き、消化もしやすくなるといいます。

「寝起きにどんな飲み物や食べ物を摂取しても、消化器官は動きます。しかし、休息状態の胃腸に冷たすぎる水や熱すぎるお湯、はたまた固形物を入れては負担となり、消化を司る自律神経も、寝起きからすぐにフル稼働を強いられます。一方、寝起きにまず白湯や常温水を飲めば、自律神経を優しく目覚めさせてあげられるのです」(梶本先生)

さらに寝起きの水分補給は、心筋梗塞や脳卒中を防ぐためにも重要だそう。「体内の水分が不足すると血流が滞る」というお話がありましたが、寝起きの体はまさに水分不足。なぜなら私たちは、単に寝ているだけでも水分を放出しているからです。

「皮膚や呼吸から自然と放出される水分を『不感蒸泄』といい、睡眠中だけでも200cc程度の水が失われています。さらに睡眠中に膀胱に排出される尿を含めると、一晩のうちに体内循環する水分が500cc程度、失われることになります。体重50kgの人にすれば全体重の1%に当たり、これはプチ脱水状態とも言えます」(梶本先生)

睡眠中には副交感神経が優位になる一方、日中に優位になるのは交感神経。朝の目覚めとともに交感神経が優位に働き始めますが、すると血管が収縮します。水分不足によって血流が滞った状態になれば流れを上げるために血管を収縮させ血圧を上昇させます。その結果、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。それを防ぐためにも寝起きの水分補給が大切なのです。
 

浴室の死亡事例に新事実!これを防ぐにも水分補給を

就寝前と寝起きに飲む水がいかに大切なのか、ご理解いただけたのではないでしょうか。でも、それだけでは足りません。梶本先生は「健康な毎日を過ごすなら、常温水や白湯を手元に置き、こまめな水分補給を心掛けましょう」と指摘します。

特に注意したいのが、あまり汗を流すことのないオフィスワーカーの皆さんです。デスクに向かっている状態ではあまり喉の渇きを感じず、ついつい水分補給を疎かにしがちですが、イスにずっと座ったままの姿勢では血流が滞りやすいのです。

「ずっと同じ姿勢でいることから血流が滞り、血栓ができてしまうエコノミークラス症候群も、その一例です。エコノミークラス症候群の予防策として、こまめに水を飲むこと、意識的に身体を動かすことが挙げられますが、これはオフィスワーカーの方も同様です」(梶本先生)

また、体温調節機能が低下しつつある高齢者の場合、入浴中にも水分補給をすることが非常に大事だそう。特に寒い季節は熱いお風呂にゆっくり浸かりたくなりますが、本人が気づかぬうちにのぼせ、熱中症になってしまう事態が少なくないというのです。

「冬の浴室で起こる死亡は、その多くが急激な温度差によって血圧が大きく変動するヒートショック現象によるものだと考えられてきました。しかし、昨今の調査により、原因の大半が熱中症によって意識を失い、そのまま死に至るケースだと判明したのです」(梶本先生)

現代の住まいは気密性が高く、浴室もまた密閉空間です。その分、温かな空気を逃しませんが、私たちは呼吸をすることで体内に酸素を取り入れるのと同時に、脳を冷やしているといいます。しかし、熱いお湯を張った浴室の空気では脳は冷やされず、結果的に熱中症になってしまうのです。

「脳を冷やすには鼻から空気を取り込む空冷式と、体に水分を取り込む水冷式がありますが、浴室の場合に残された方法は水冷式のみ。そのため入浴中には常温水や白湯ではなく、冷水を飲みましょう。もちろん、入浴前や入浴後の水分補給も大切です」(梶本先生)
 
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「人の体は約60%が水分」といわれるだけに、健康な毎日のためにも、質の高い睡眠を得るためにも水分補給が欠かせません。寒い季節に少しでも温まりたい方は人肌よりもちょっと温かな白湯を、白湯作りが面倒な人は常温水を飲んでください。

ちなみに美容業界を中心に「1日2リットルの水を飲もう!」なんて声もありますが、「大量の水をガブ飲みしては、水中毒の危険も否定できません。特に果物や野菜がそうであるように、食べ物からも水分を摂れているので、わざわざ2リットルの水を飲む必要はありません。就寝前と寝起きの水分補給を前提にこまめに水を飲み、バランスの取れた食事を心掛けることが一番です」と梶本先生。

また、昨今はミネラルウォーターもバラエティーに富み、ミネラル豊富な硬水をお好みの方もいるはずですが、実はアジア人には不向き。肉食傾向が強く、硬水からミネラルを補給してきた欧米人とは違い、硬水を飲むことでお腹を下すこともあるので、注意してくださいね。
 

東京疲労・睡眠クリニック 院長

梶本修身 先生

1962年生まれ、大阪大学大学院医学系研究科修了。2003年より産学官連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。ニンテンドーDS『アタマスキャン』のプログラムを手掛けたことにより、“脳年齢”ブームを起こす。『寝ても寝ても疲れがとれない人のための スッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHP研究所)をはじめとした著書のほか、わかりやすい解説により『ホンマでっか!?TV』『世界一受けたい授業』といったテレビ番組への出演も多数。東京疲労・睡眠クリニック

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