カテゴリ:眠り
【理学療法士・睡眠のプロ対談】「姿勢×眠り」でつくる女性の健康
月経痛や更年期症状をはじめとする女性の健康課題と睡眠課題。どちらにも共通するのが、個人差が激しいゆえの理解されづらさです。
今回、ご登場いただくWelmapの満元優香さんは女性の健康課題特有の「理解されづらさ」を解消するべく、全国各地のセミナーに奔走。理学療法士の経験を生かし、「正しい知識」の周知に尽力されています。
そして、心地良い眠りはもちろん、科学的な視点から人の睡眠と寝具について研究を続けるnishikawaの安藤翠もまた、「正しい知識」を伝えるための活動をしています。
では、女性の健康課題と睡眠課題の両方が解消されたなら、女性の未来はどう変わるのでしょうか?満元さんと安藤の対談から迫ります。
株式会社HAPROT
Welmap事業部
満元 優香さん

理学療法士として10年間、総合病院に勤務。産婦人科病棟でのリハビリテーションを経験し、2024年に退職。同年7月に女性の健康課題を解決する「Welmap」の事業を立ち上げ、理学療法士の視点から全国各地の女性や組織に「知識」と「運動」を届ける。
西川株式会社
日本睡眠科学研究所
安藤 翠

nishikawaの社内研究機関「日本睡眠科学研究所」に所属。大学・企業と協力しながら、睡眠が生体に及ぼす影響についての研究や、より良い睡眠を提供できる寝装・寝具の開発に従事する。ヨガの国際資格を持ち、最近はピラティスも趣味のひとつに。

—— 理学療法士の資格と経験を生かし、女性の健康促進に注力される満元さん。活動を始められたきっかけは何だったのでしょう?
Welmap満元さん:私は理学療法士として約10年間、総合病院の産婦人科病棟を担当していました。そのときに出会った患者さんに「私、どうして子宮を取らなくちゃいけないの?」と言われたことが、Welmap立ち上げのきっかけになりました。
子宮摘出の原因となったのは、「子宮脱」。出産や加齢によって骨盤の底にある筋肉がゆるんだ結果、子宮が正常な位置よりも下降して、ついには膣の外に飛び出してしまう病気です。
nishikawa安藤:子宮脱、初めて聞く病気です。
Welmap満元さん:そうですよね。女性特有の病気ではあるものの、女性の方にもあまり知られていないのが現状です。
でも、出産や加齢を原因とする以上、子宮脱は誰にでも起こり得る病気。私が担当した患者さんも、原因は出産による骨盤底筋のゆるみでした。
子宮が膣の外に出てしまうと摩擦による不快感はもちろん、摩擦の傷から感染症にかかるリスクも高まります。
軽度なら生活習慣を管理したり、骨盤底筋を鍛えたり、ペッサリーという道具を使って子宮が落ちてこないように支える対症療法が可能ですが、重度になると私が担当した患者さんのように子宮摘出を選択される方がいらっしゃいます。
nishikawa安藤:子宮の摘出、女性にとっては大きな決断ですよね。

Welmap満元さん:患者さんご自身も「なぜ?どうして?」と涙をこぼされていて、私もすごく胸が痛んで。ただ、その方にもサインがあったんです。「ずっと尿漏れに悩まされていた」という症状が、実はこれが病気のシグナルだったんです。
産後は出産のダメージから尿漏れしやすくなりますが、それはあくまでも傾向であって、産後の尿漏れはあたりまえではありません。
特に産後数カ月経っても改善しない場合には、骨盤底筋が弱まっている可能性が高く、この方のように数十年経って子宮脱に繋がる方もいらっしゃいます。にもかかわらず、「産後の尿漏れはあたりまえ」という認識が根強く、やり過ごしてしまう女性が少なくありません。
これは月経痛にも同じことが言えます。月経痛が強い方は、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気の初期症状であったり、生活習慣の乱れやストレスが原因のケースもあります。
ですが多くの女性が「生理痛はあたりまえ」と思い込み、「仕方ないよね」と我慢。結果的に病院の受診が遅れ、症状が悪化してしまう。こうした悪循環の裏には、思い込みや知識不足があるのではないか、と考えています。
「こうした状況を改善したい」--。この想いが活動の原点なんです。
正しい知識を広めることで、あらゆる女性が自分の体のシグナルに気づき、早い段階から治療や改善に取り組んでいただけるようにできたら、と思っています。

nishikawa安藤:思い込みや知識不足が悪化を招いてしまう、これは睡眠も同様です。
睡眠も月経と同じように生理現象ですよね。「最近、寝つきが悪いな」「途中で何度も目覚めてしまうな」と違和感を覚えても、「こんなものか」とやり過ごしてしまう人は少なくありません。
けれど、睡眠は心身をリカバリーするための重要な行為。睡眠不足が慢性化すると生活習慣病や精神疾患のリスクも高まるため、決して軽視してはいけません。
特に女性の場合、男性以上にホルモンバランスの変化が顕著ですよね。ホルモンバランスの変化は睡眠にも影響を与え、更年期の不眠は男性よりも女性において感じやすくなります。女性ホルモンが減少し始める40代、50代くらいを境に急に眠りづらくなる傾向にあります。
にもかかわらず、満元さんがおっしゃった子宮脱や月経痛と同じように、知識がないから対応できない。不眠の原因が更年期にあるとは気づけず、「なぜ?どうして眠れないの?」と不安を深めてしまうんです。

—— ホルモンバランスの変化は女性の健康と密接に関わります。どのような悩みを抱える女性が多いのでしょうか?
Welmap満元さん:月経のある女性は周期によってむくみやだるさ、眠気や気分の揺れ、頭痛や腰痛に悩む方が多い印象です。
産前産後は体の変化による腰痛や関節痛、むくみの悩みを訴える方が増え、さらには育児負担から睡眠不足が続き、「疲れがとれない」といった声をよく聞きます。
そして、更年期の女性はほてりや発汗、動悸、気分の落ち込み、自律神経の乱れのほか、安藤さんが指摘された不眠を訴える方も多くいらっしゃいます。
nishikawa安藤:やはり、更年期の不眠を実感されている方は多いのですね。更年期の不眠は治療が難しく、減少したホルモンを投与する補充療法が効きづらいとも言われています。
しかし、だからこそ、睡眠環境を整えることが大切なんです。
抗加齢医学の第一人者である同志社大学の米井先生との共同研究として、マットレスによって女性の体調がどう変わるかを調査したことがあります。nishikawaが科学的な知見から開発した4層特殊立体構造マットレスを使用いただいた結果、睡眠の質が向上。特に更年期の女性に関しては、更年期症状の改善も見られたんです。
Welmap満元さん:すごい!これもまた、持っておくべき知識ですね。更年期症状に悩む女性にとって、ホルモン補充療法は基本となる治療。不眠にはそれが効かないとなると頭を抱えてしまいますが、寝具を見直すことが改善につながるなんて!

—— 更年期の不眠も「仕方ない」で片付けず、改善の余地はしっかりとある。そのことを感じさせられますが、月経痛にも服薬以外の改善方法はあるのでしょうか?
Welmap満元さん:理学療法士の視点からすると、姿勢を正すことがとても重要です。
月経痛の原因のひとつは子宮の収縮。不要になった子宮内膜を血液と一緒に排出するために、子宮がポンプのように収縮するときに痛みを感じることがあります。
子宮の収縮そのものは自然な働きです。ただ、猫背や反り腰の姿勢では体の中の環境が変わり、子宮の収縮による痛みが強く感じやすくなる可能性があります。
姿勢が崩れると、腹部が圧迫されやすくなり、呼吸が浅くなったり、血流が巡りにくくなったりします。
そのため、生理痛を和らげるために、体の環境を整えるひとつの方法として、姿勢を整えることも大切だと考えています。姿勢を正すには、骨盤前面に左右ふたつある上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく/骨盤前面の最も出っ張った部分)と、股の部分の恥骨を結んだ三角形の面が壁と平行になるように意識すること。これが正しい姿勢であり、骨盤の正しい位置です。
反対に悪い姿勢とは、上前腸骨棘よりも恥骨が後ろに引っ込んでいる状態が反り腰、上前腸骨棘よりも恥骨が前に出ている状態が猫背です。
nishikawa安藤:上前腸骨棘と恥骨を結んだ三角形が壁と平行、もしくは床と垂直にある。ピラティスの「ニュートラルポジション」ですね。最近、ピラティスを始めたので、その知識が生きました(笑)。
Welmap満元さん:さすが安藤さん!そのとおりです。
理学療法士も上前腸骨棘と恥骨を結んだ三角形で骨盤の正しい位置を評価します。この三角形を目安とした姿勢の維持は座るときも一緒。三角形が崩れないよう意識して座ると自然と背筋が伸び、骨盤が立つんです。
座った状態でも骨盤が立っているかを確認するには、お尻の下に手を入れてみてください。骨盤がきちんと立っていると、お尻の左右にある坐骨がコツンと手に当たるのを感じるはずです。

—— 長時間のデスクワークでは、正しい姿勢を維持するのは至難のワザ。その難しさを解消すべく、nishikawaではまくら開発の知見を生かしたクッションをラインアップしています。
nishikawa安藤:睡眠も姿勢も無意識下のこと。座っているときの姿勢も意識的に矯正するのは難しいため、nishikawaでは骨盤の立った理想の座り姿勢を楽にキープしやすくなるように、という想いを込めて、<Keeps>シリーズを展開しています。
満元さんのお話にもあった坐骨、それに仙骨と大腿部の3点を弾力性に優れたウレタン素材がバランス良く支え、同時に骨盤の中央にある仙骨を然るべき位置にやさしく押し戻してくれるクッションなんです。

Welmap満元さん:私もお試しさせていただきましたが、これはもう100点満点。ちょっと驚いてしまったくらいです。安藤さんがおっしゃった仙骨の位置はもちろん、坐骨がぴたっとハマるようにポケットが設けられているんですね。
ウレタンの弾力が仙骨の位置を正しく矯正してくれるのと同時に坐骨の位置も安定するので、おのずと骨盤が立つ感じ。大腿部のフィット感も良く、疲れにくさを感じます。
Welmapでは活動の中核として学校や企業向けのセミナーを開催していますが、骨盤の正しい位置にしても知識の提供だけで終わりにせず、「なるほど、こういうことか!」と実感いただけるような、体験型のプログラムを大切にしています。
とはいえ、セミナー当日に得た感覚を日常生活で常に意識していただくのは難しいと課題を感じていました。でも、このクッションなら無意識にも姿勢が矯正され、未来の健康にも効果を期待してしまいます。
例えば、ひざに痛みのない方に「数年後の痛みに備え、サポーターを着けましょう」とご提案しても響きませんよね。それが日常に寄り添うような〈Keeps〉なら、ごく自然。正しい姿勢はひざや腰への負担も軽減できるため、おのずと元気な足腰を目指せます。

—— 女性の元気な未来も見据え、各地でセミナーを開催されている満元さん。更年期に限らず、睡眠のお悩みを抱えている女性は多いのでしょうか?
Welmap満元さん:睡眠のお悩みですと、産後の女性がきわだっています。赤ちゃんの夜泣きのためにまとまった睡眠が取れず、細切れにしか眠れていないことに不安を抱える女性が少なくありません。
nishikawa安藤:産後女性の細切れ睡眠、難しい問題ですよね。まとまった睡眠をとることが理想ですが、細切れであっても短時間であっても、少しでも眠ることが重要です。
とはいえ、これでは根本的解決にはならず、最近、注目されているのが「ネントレ」。お母さんの抱っこや授乳に頼らず、赤ちゃんがひとりで眠る力を育むトレーニングです。
添い寝せずに赤ちゃんをベビーベッドに寝かせ、親はベビーベッドのある部屋から離れます。泣き声が聞こえたとしても駆けつけたい気持ちをぐっと我慢。
ちょっと時間が経過してから様子を見に行き、声かけやトントンをして、また部屋を出る。これを繰り返しながら、ひとり寝の習慣を育んでいきます。

Welmap満元さん:ネントレはSNSでも話題ですよね。私自身も産後の睡眠不足に悩まされましたが、当時は気合いで乗り切っていましたから…。
nishikawa安藤:子どもを育てるにはママの我慢があたりまえ。そうした風潮は今も根強くありますが、お母さん自身が自分を大事にすることは、赤ちゃんを大事にすることとイコールなんです。
なぜなら睡眠不足の状態ではメンタルが安定せず、イライラしやすくなることは科学的にも立証されています。お母さんが常にイライラしていては、赤ちゃんにも伝わってしまいますよね。
だからこそ、赤ちゃんにひとり寝の習慣を付け、お母さんがひとりでぐっすり眠れる環境を育むことは決して親の怠慢ではなく、赤ちゃんのためにもなるんです。

Welmap満元さん:赤ちゃんをひとりで寝かせることは、決して親の怠慢じゃない。安藤さんの言葉に救われる女性がいっぱいいるはずです。
それに私は野球の大谷選手が10時間睡眠をとっていることを知り、すごく安心したんです。私は7、8時間は寝ないと元気が出ず、世間と比べて「寝過ぎなのかも…?」と後ろめたいような気持ちでいました。
でも、そんなことはない。大谷選手の睡眠を大事にする姿勢に「しっかり寝ることは恥ずかしいことじゃないんだ!」と思えたんです。
nishikawa安藤:むしろ、満元さんの睡眠時間は理想的です。必要な睡眠時間は個人によっても年齢によっても異なりますが、6時間睡眠を2週間続けると、ひと晩徹夜したのと同じくらいパフォーマンスが低下するという研究結果もあるんですよ。
Welmap満元さん:それは衝撃です。ちなみに年齢によっても異なるとなると、子どもの理想的な睡眠時間はどのくらいなのでしょうか?うちの子どもは長女が小学校3年生、末っ子が4歳なんです。

nishikawa安藤:厚生労働省の指針では、小学生の理想的な睡眠は9~12時間、3〜5歳児はさらに長く10~13時間です。
どうしても残業になってしまったり、仕事が定時に終わっても通勤時間が長かったり、現代は社会全体が夜型傾向のため、子どもの睡眠不足も社会的な課題です。睡眠不足だと学力が低下したり、協調性が欠けやすくなったりするといった研究結果もあるんです。
しかも、子どものころの睡眠不足を後からリカバリーするのは難しい部分もあります。例えば、記憶の定着を司る海馬の面積があまり大きくならないまま、成長してしまうという報告もされています。
Welmap満元さん:まさに「寝る子は育つ」ですね…!このことわざが科学的にも通じるなんて、ちょっとビックリ。
理学療法士として正しい知識を伝えることを大切にしてきましたが、睡眠もまた然り。背筋を正された気分です。
—— では、女性の健康にしても睡眠にしても「正しい知識を伝える」ことを前提に、お二人それぞれが描く今後についてお聞かせください。

Welmap満元さん:女性の健康課題を個人の我慢や自己責任として抱え込むのではなく、正しい知識と実践を通じ、誰もが日常のなかで整えられる社会をつくることが目標です。
活動のメインを一対一ではなく、集団のセミナーにしているのも、より多くの皆さんと正しい知識を共有し、「女性の体には波がある」ことを前提に相談しやすい組織が増えてほしいからです。
同時に私には、母としての願いもあります。わが子が巣立つそのときまでに、女性の健康課題で悩まない世の中を築きたい。
私がWelmapを立ち上げた2024年に7歳だった娘は2039年に22歳を迎え、社会に飛び立ちます。それまでに月経や産前産後、更年期の不調が特別なことではなく、必要な配慮や対応があたりまえの社会になっていてほしいんです。
そのためには当事者である女性支援だけでなく、今後はより強く、組織の経営者や学校の指導者、親御さんにも正しい知識を伝える取り組みを進めていきたいと思っています。

nishikawa安藤:当事者支援だけでなく、組織に広く正しい知識を伝え、女性の不調をあたりまえに受け止められる社会をつくる。これは私としても同じ気持ちです。
nishikawaのオフィスには『ちょっと寝ルーム』というお昼寝のためのスペースがあり、私たちはこれを健康経営の一環として、他の企業にも広める取り組みを進めています。
『ちょっと寝ルーム』は生理的に訪れる食後の眠気を我慢せず、15分ほどの仮眠をとって、午後のパフォーマンス発揮につなげるために開始しましたが、今では月経や更年期の不調を抱える女性従業員の休憩場所としても機能しているんです。
睡眠が十分にとれていないためにパフォーマンスが低下したり、体調を崩したり、睡眠不足による日本の経済損失は大きく、それは女性の健康課題についても同様ですよね。
だからこそ、個人の我慢や頑張りに委ねるのではなく、睡眠も女性の健康も、組織や社会全体が理解ある仕組みづくりを進めていくべきではないか。満元さんのお話を通じ、その大切さを改めて感じさせていただきました。
今回、ご登場いただくWelmapの満元優香さんは女性の健康課題特有の「理解されづらさ」を解消するべく、全国各地のセミナーに奔走。理学療法士の経験を生かし、「正しい知識」の周知に尽力されています。
そして、心地良い眠りはもちろん、科学的な視点から人の睡眠と寝具について研究を続けるnishikawaの安藤翠もまた、「正しい知識」を伝えるための活動をしています。
では、女性の健康課題と睡眠課題の両方が解消されたなら、女性の未来はどう変わるのでしょうか?満元さんと安藤の対談から迫ります。
目次
出演者プロフィール
株式会社HAPROT
Welmap事業部
満元 優香さん

理学療法士として10年間、総合病院に勤務。産婦人科病棟でのリハビリテーションを経験し、2024年に退職。同年7月に女性の健康課題を解決する「Welmap」の事業を立ち上げ、理学療法士の視点から全国各地の女性や組織に「知識」と「運動」を届ける。
西川株式会社
日本睡眠科学研究所
安藤 翠

nishikawaの社内研究機関「日本睡眠科学研究所」に所属。大学・企業と協力しながら、睡眠が生体に及ぼす影響についての研究や、より良い睡眠を提供できる寝装・寝具の開発に従事する。ヨガの国際資格を持ち、最近はピラティスも趣味のひとつに。
きっかけは「どうして子宮を取らなくちゃいけないの?」

—— 理学療法士の資格と経験を生かし、女性の健康促進に注力される満元さん。活動を始められたきっかけは何だったのでしょう?
Welmap満元さん:私は理学療法士として約10年間、総合病院の産婦人科病棟を担当していました。そのときに出会った患者さんに「私、どうして子宮を取らなくちゃいけないの?」と言われたことが、Welmap立ち上げのきっかけになりました。
子宮摘出の原因となったのは、「子宮脱」。出産や加齢によって骨盤の底にある筋肉がゆるんだ結果、子宮が正常な位置よりも下降して、ついには膣の外に飛び出してしまう病気です。
nishikawa安藤:子宮脱、初めて聞く病気です。
Welmap満元さん:そうですよね。女性特有の病気ではあるものの、女性の方にもあまり知られていないのが現状です。
でも、出産や加齢を原因とする以上、子宮脱は誰にでも起こり得る病気。私が担当した患者さんも、原因は出産による骨盤底筋のゆるみでした。
子宮が膣の外に出てしまうと摩擦による不快感はもちろん、摩擦の傷から感染症にかかるリスクも高まります。
軽度なら生活習慣を管理したり、骨盤底筋を鍛えたり、ペッサリーという道具を使って子宮が落ちてこないように支える対症療法が可能ですが、重度になると私が担当した患者さんのように子宮摘出を選択される方がいらっしゃいます。
nishikawa安藤:子宮の摘出、女性にとっては大きな決断ですよね。

Welmap満元さん:患者さんご自身も「なぜ?どうして?」と涙をこぼされていて、私もすごく胸が痛んで。ただ、その方にもサインがあったんです。「ずっと尿漏れに悩まされていた」という症状が、実はこれが病気のシグナルだったんです。
産後は出産のダメージから尿漏れしやすくなりますが、それはあくまでも傾向であって、産後の尿漏れはあたりまえではありません。
特に産後数カ月経っても改善しない場合には、骨盤底筋が弱まっている可能性が高く、この方のように数十年経って子宮脱に繋がる方もいらっしゃいます。にもかかわらず、「産後の尿漏れはあたりまえ」という認識が根強く、やり過ごしてしまう女性が少なくありません。
これは月経痛にも同じことが言えます。月経痛が強い方は、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気の初期症状であったり、生活習慣の乱れやストレスが原因のケースもあります。
ですが多くの女性が「生理痛はあたりまえ」と思い込み、「仕方ないよね」と我慢。結果的に病院の受診が遅れ、症状が悪化してしまう。こうした悪循環の裏には、思い込みや知識不足があるのではないか、と考えています。
「こうした状況を改善したい」--。この想いが活動の原点なんです。
正しい知識を広めることで、あらゆる女性が自分の体のシグナルに気づき、早い段階から治療や改善に取り組んでいただけるようにできたら、と思っています。

nishikawa安藤:思い込みや知識不足が悪化を招いてしまう、これは睡眠も同様です。
睡眠も月経と同じように生理現象ですよね。「最近、寝つきが悪いな」「途中で何度も目覚めてしまうな」と違和感を覚えても、「こんなものか」とやり過ごしてしまう人は少なくありません。
けれど、睡眠は心身をリカバリーするための重要な行為。睡眠不足が慢性化すると生活習慣病や精神疾患のリスクも高まるため、決して軽視してはいけません。
特に女性の場合、男性以上にホルモンバランスの変化が顕著ですよね。ホルモンバランスの変化は睡眠にも影響を与え、更年期の不眠は男性よりも女性において感じやすくなります。女性ホルモンが減少し始める40代、50代くらいを境に急に眠りづらくなる傾向にあります。
にもかかわらず、満元さんがおっしゃった子宮脱や月経痛と同じように、知識がないから対応できない。不眠の原因が更年期にあるとは気づけず、「なぜ?どうして眠れないの?」と不安を深めてしまうんです。
女性更年期の不眠には、寝具の見直しが改善の糸口に

—— ホルモンバランスの変化は女性の健康と密接に関わります。どのような悩みを抱える女性が多いのでしょうか?
Welmap満元さん:月経のある女性は周期によってむくみやだるさ、眠気や気分の揺れ、頭痛や腰痛に悩む方が多い印象です。
産前産後は体の変化による腰痛や関節痛、むくみの悩みを訴える方が増え、さらには育児負担から睡眠不足が続き、「疲れがとれない」といった声をよく聞きます。
そして、更年期の女性はほてりや発汗、動悸、気分の落ち込み、自律神経の乱れのほか、安藤さんが指摘された不眠を訴える方も多くいらっしゃいます。
nishikawa安藤:やはり、更年期の不眠を実感されている方は多いのですね。更年期の不眠は治療が難しく、減少したホルモンを投与する補充療法が効きづらいとも言われています。
しかし、だからこそ、睡眠環境を整えることが大切なんです。
抗加齢医学の第一人者である同志社大学の米井先生との共同研究として、マットレスによって女性の体調がどう変わるかを調査したことがあります。nishikawaが科学的な知見から開発した4層特殊立体構造マットレスを使用いただいた結果、睡眠の質が向上。特に更年期の女性に関しては、更年期症状の改善も見られたんです。
Welmap満元さん:すごい!これもまた、持っておくべき知識ですね。更年期症状に悩む女性にとって、ホルモン補充療法は基本となる治療。不眠にはそれが効かないとなると頭を抱えてしまいますが、寝具を見直すことが改善につながるなんて!
月経痛予防には、骨盤の立つ「ニュートラルポジション」

—— 更年期の不眠も「仕方ない」で片付けず、改善の余地はしっかりとある。そのことを感じさせられますが、月経痛にも服薬以外の改善方法はあるのでしょうか?
Welmap満元さん:理学療法士の視点からすると、姿勢を正すことがとても重要です。
月経痛の原因のひとつは子宮の収縮。不要になった子宮内膜を血液と一緒に排出するために、子宮がポンプのように収縮するときに痛みを感じることがあります。
子宮の収縮そのものは自然な働きです。ただ、猫背や反り腰の姿勢では体の中の環境が変わり、子宮の収縮による痛みが強く感じやすくなる可能性があります。
姿勢が崩れると、腹部が圧迫されやすくなり、呼吸が浅くなったり、血流が巡りにくくなったりします。
そのため、生理痛を和らげるために、体の環境を整えるひとつの方法として、姿勢を整えることも大切だと考えています。姿勢を正すには、骨盤前面に左右ふたつある上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく/骨盤前面の最も出っ張った部分)と、股の部分の恥骨を結んだ三角形の面が壁と平行になるように意識すること。これが正しい姿勢であり、骨盤の正しい位置です。
反対に悪い姿勢とは、上前腸骨棘よりも恥骨が後ろに引っ込んでいる状態が反り腰、上前腸骨棘よりも恥骨が前に出ている状態が猫背です。
nishikawa安藤:上前腸骨棘と恥骨を結んだ三角形が壁と平行、もしくは床と垂直にある。ピラティスの「ニュートラルポジション」ですね。最近、ピラティスを始めたので、その知識が生きました(笑)。
Welmap満元さん:さすが安藤さん!そのとおりです。
理学療法士も上前腸骨棘と恥骨を結んだ三角形で骨盤の正しい位置を評価します。この三角形を目安とした姿勢の維持は座るときも一緒。三角形が崩れないよう意識して座ると自然と背筋が伸び、骨盤が立つんです。
座った状態でも骨盤が立っているかを確認するには、お尻の下に手を入れてみてください。骨盤がきちんと立っていると、お尻の左右にある坐骨がコツンと手に当たるのを感じるはずです。
無意識のうちに座り姿勢を整える〈Keeps〉クッション

—— 長時間のデスクワークでは、正しい姿勢を維持するのは至難のワザ。その難しさを解消すべく、nishikawaではまくら開発の知見を生かしたクッションをラインアップしています。
nishikawa安藤:睡眠も姿勢も無意識下のこと。座っているときの姿勢も意識的に矯正するのは難しいため、nishikawaでは骨盤の立った理想の座り姿勢を楽にキープしやすくなるように、という想いを込めて、<Keeps>シリーズを展開しています。
満元さんのお話にもあった坐骨、それに仙骨と大腿部の3点を弾力性に優れたウレタン素材がバランス良く支え、同時に骨盤の中央にある仙骨を然るべき位置にやさしく押し戻してくれるクッションなんです。

Welmap満元さん:私もお試しさせていただきましたが、これはもう100点満点。ちょっと驚いてしまったくらいです。安藤さんがおっしゃった仙骨の位置はもちろん、坐骨がぴたっとハマるようにポケットが設けられているんですね。
ウレタンの弾力が仙骨の位置を正しく矯正してくれるのと同時に坐骨の位置も安定するので、おのずと骨盤が立つ感じ。大腿部のフィット感も良く、疲れにくさを感じます。
Welmapでは活動の中核として学校や企業向けのセミナーを開催していますが、骨盤の正しい位置にしても知識の提供だけで終わりにせず、「なるほど、こういうことか!」と実感いただけるような、体験型のプログラムを大切にしています。
とはいえ、セミナー当日に得た感覚を日常生活で常に意識していただくのは難しいと課題を感じていました。でも、このクッションなら無意識にも姿勢が矯正され、未来の健康にも効果を期待してしまいます。
例えば、ひざに痛みのない方に「数年後の痛みに備え、サポーターを着けましょう」とご提案しても響きませんよね。それが日常に寄り添うような〈Keeps〉なら、ごく自然。正しい姿勢はひざや腰への負担も軽減できるため、おのずと元気な足腰を目指せます。
親の怠慢じゃない、母子が健やかであるためのネントレ

—— 女性の元気な未来も見据え、各地でセミナーを開催されている満元さん。更年期に限らず、睡眠のお悩みを抱えている女性は多いのでしょうか?
Welmap満元さん:睡眠のお悩みですと、産後の女性がきわだっています。赤ちゃんの夜泣きのためにまとまった睡眠が取れず、細切れにしか眠れていないことに不安を抱える女性が少なくありません。
nishikawa安藤:産後女性の細切れ睡眠、難しい問題ですよね。まとまった睡眠をとることが理想ですが、細切れであっても短時間であっても、少しでも眠ることが重要です。
とはいえ、これでは根本的解決にはならず、最近、注目されているのが「ネントレ」。お母さんの抱っこや授乳に頼らず、赤ちゃんがひとりで眠る力を育むトレーニングです。
添い寝せずに赤ちゃんをベビーベッドに寝かせ、親はベビーベッドのある部屋から離れます。泣き声が聞こえたとしても駆けつけたい気持ちをぐっと我慢。
ちょっと時間が経過してから様子を見に行き、声かけやトントンをして、また部屋を出る。これを繰り返しながら、ひとり寝の習慣を育んでいきます。

Welmap満元さん:ネントレはSNSでも話題ですよね。私自身も産後の睡眠不足に悩まされましたが、当時は気合いで乗り切っていましたから…。
nishikawa安藤:子どもを育てるにはママの我慢があたりまえ。そうした風潮は今も根強くありますが、お母さん自身が自分を大事にすることは、赤ちゃんを大事にすることとイコールなんです。
なぜなら睡眠不足の状態ではメンタルが安定せず、イライラしやすくなることは科学的にも立証されています。お母さんが常にイライラしていては、赤ちゃんにも伝わってしまいますよね。
だからこそ、赤ちゃんにひとり寝の習慣を付け、お母さんがひとりでぐっすり眠れる環境を育むことは決して親の怠慢ではなく、赤ちゃんのためにもなるんです。

Welmap満元さん:赤ちゃんをひとりで寝かせることは、決して親の怠慢じゃない。安藤さんの言葉に救われる女性がいっぱいいるはずです。
それに私は野球の大谷選手が10時間睡眠をとっていることを知り、すごく安心したんです。私は7、8時間は寝ないと元気が出ず、世間と比べて「寝過ぎなのかも…?」と後ろめたいような気持ちでいました。
でも、そんなことはない。大谷選手の睡眠を大事にする姿勢に「しっかり寝ることは恥ずかしいことじゃないんだ!」と思えたんです。
nishikawa安藤:むしろ、満元さんの睡眠時間は理想的です。必要な睡眠時間は個人によっても年齢によっても異なりますが、6時間睡眠を2週間続けると、ひと晩徹夜したのと同じくらいパフォーマンスが低下するという研究結果もあるんですよ。
Welmap満元さん:それは衝撃です。ちなみに年齢によっても異なるとなると、子どもの理想的な睡眠時間はどのくらいなのでしょうか?うちの子どもは長女が小学校3年生、末っ子が4歳なんです。

nishikawa安藤:厚生労働省の指針では、小学生の理想的な睡眠は9~12時間、3〜5歳児はさらに長く10~13時間です。
どうしても残業になってしまったり、仕事が定時に終わっても通勤時間が長かったり、現代は社会全体が夜型傾向のため、子どもの睡眠不足も社会的な課題です。睡眠不足だと学力が低下したり、協調性が欠けやすくなったりするといった研究結果もあるんです。
しかも、子どものころの睡眠不足を後からリカバリーするのは難しい部分もあります。例えば、記憶の定着を司る海馬の面積があまり大きくならないまま、成長してしまうという報告もされています。
Welmap満元さん:まさに「寝る子は育つ」ですね…!このことわざが科学的にも通じるなんて、ちょっとビックリ。
理学療法士として正しい知識を伝えることを大切にしてきましたが、睡眠もまた然り。背筋を正された気分です。
「個々の波」への理解が社会全体を明るく照らす
—— では、女性の健康にしても睡眠にしても「正しい知識を伝える」ことを前提に、お二人それぞれが描く今後についてお聞かせください。

Welmap満元さん:女性の健康課題を個人の我慢や自己責任として抱え込むのではなく、正しい知識と実践を通じ、誰もが日常のなかで整えられる社会をつくることが目標です。
活動のメインを一対一ではなく、集団のセミナーにしているのも、より多くの皆さんと正しい知識を共有し、「女性の体には波がある」ことを前提に相談しやすい組織が増えてほしいからです。
同時に私には、母としての願いもあります。わが子が巣立つそのときまでに、女性の健康課題で悩まない世の中を築きたい。
私がWelmapを立ち上げた2024年に7歳だった娘は2039年に22歳を迎え、社会に飛び立ちます。それまでに月経や産前産後、更年期の不調が特別なことではなく、必要な配慮や対応があたりまえの社会になっていてほしいんです。
そのためには当事者である女性支援だけでなく、今後はより強く、組織の経営者や学校の指導者、親御さんにも正しい知識を伝える取り組みを進めていきたいと思っています。

nishikawa安藤:当事者支援だけでなく、組織に広く正しい知識を伝え、女性の不調をあたりまえに受け止められる社会をつくる。これは私としても同じ気持ちです。
nishikawaのオフィスには『ちょっと寝ルーム』というお昼寝のためのスペースがあり、私たちはこれを健康経営の一環として、他の企業にも広める取り組みを進めています。
『ちょっと寝ルーム』は生理的に訪れる食後の眠気を我慢せず、15分ほどの仮眠をとって、午後のパフォーマンス発揮につなげるために開始しましたが、今では月経や更年期の不調を抱える女性従業員の休憩場所としても機能しているんです。
睡眠が十分にとれていないためにパフォーマンスが低下したり、体調を崩したり、睡眠不足による日本の経済損失は大きく、それは女性の健康課題についても同様ですよね。
だからこそ、個人の我慢や頑張りに委ねるのではなく、睡眠も女性の健康も、組織や社会全体が理解ある仕組みづくりを進めていくべきではないか。満元さんのお話を通じ、その大切さを改めて感じさせていただきました。
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