カテゴリ:眠り
生あくびとは?あくびが止まらない?あくびとの違いから対処法まで徹底解説!
主に眠いときに生じる生理現象「あくび」。寝不足の日には、1日に何度もあくびをしてしまうという人もいるかと思いますが、そもそもあくびの正体とは何なのでしょう?
そこで今回は、豊富な知見と経験に基づくわかりやすい医療解説により、テレビ番組にも出演する「菅原脳神経外科クリニック」の院長、菅原道仁先生が監修役。「あくび」をテーマにお話を伺いました!
あくびはどうして出るの?
主に眠いときに生じる「あくび」ですが、実はその正体は解明されておらず、謎の多い生理現象なのだそうです。
「古くから言われているのが、脳が酸素不足の状態に陥り、そのシグナルとしてあくびが出るという説です。また、あくびは覚醒を促すサインという医師や研究者もいます。あくびによって口を大きく開くことで、脳に覚醒を促しているという説です」
あくびがどうしても止まらないときは、深呼吸をしたり、ガムを噛んだり、誰かと喋ったり、というように口を動かしてみると良いそう。口をあける動作が覚醒を促してくれます。
「生あくび」と「あくび」の違いとは?生あくびの原因はなに?
多くの場合、あくびが出るのは眠いとき。覚醒、つまりは目覚めを促すサインという説にも頷けますが、眠くもないのにあくびが出ることもありますよね。眠気のないときに出るあくびは一般的に「生あくび」と呼ばれますが、緊張しているときや、反対にボーッとしているときに出るという人が多いようです。
「あくびが覚醒を促すサインという説に基づけば、緊張やボーッとしている状態の脳に対し、ひとつのリフレッシュを求める生理現象が生あくび、という考え方もできます」
あくびの正体が解明されていない以上、生あくびの原因も不明ですが、考えられる説は以下の3つと言われています。
●脳の温度調節のため
ストレスや不安が脳の温度を上げることがわかっており、あくびは脳を約37度の最適温度に保つのに役立ちます。あくびの際に息を大きく吸うことで、鼻腔と口腔に空気が流れ込み、放熱されて頭蓋動脈系が冷やされるのではないかと言われているのです。
●脳の覚醒を促すため
あくびには睡眠から覚醒、覚醒から睡眠、身体の状態を切り替えるきっかけではないかという説があります。大きく口を開ける動作、すなわちあくびをすることで、退屈な状態を切り替えている可能性も言及されています。
●酸素不足解消のため
脳内の酸素不足を補うためにあくびをするという説です。「酸素飽和度(SpO2)」と呼ばれる値が90%未満となると呼吸不全の状態となり、それが長期に継続すると、心臓や脳と いった重要な臓器に充分な酸素が供給されず、酸素欠乏症を起こすことがあります。酸素欠乏症になると、脈拍数増加や呼吸数増加、集中力低下、筋力低下、頭痛、耳鳴り、悪心、吐き気など、さまざまな症状が現れます。
軽く見てはNG!あくびの陰に病気が潜んでいることも
私たちにとって当たり前の行為である「あくび」ですが、軽く見てはいけません。あくびの陰に、病気が隠れていることがあるからです。
眠くもないのに出るあくび(いわゆる「生あくび」)から予見される病気として挙げられるのが、脳梗塞や脳腫瘍、貧血などです。そして、病気を原因とするあくびなのか、そうでないかの見分け方は、あくびに併発する症状にあります。
「貧血も脳梗塞も、脳の機能低下にかかわる病気です。脳の機能が低下すると意識レベルも低下し、人の呼びかけに反応しづらくなります。また、手足の動かしにくさや痺れを感じるのも代表的な症状です。そのため、生理現象であるはずのあくびに加えて、何か違和感を覚えたり、脳の機能低下と似た症状が出ていたら、早急に受診することをお勧めします」。
●脳梗塞、脳腫瘍
脳梗塞は、何らかの原因で脳動脈が詰まってしまい、その結果、脳細胞が傷ついてしまう病気。脳腫瘍は、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称で、各部位からさまざまな種類の腫瘍が発生します。
脳梗塞・脳腫瘍のいずれにおいても、体の左右どちらか片側に力が入らなかったり、呂律が回らかったりなどの身体障害、体の左右どちらか片側の手がしびれるなどの感覚障害、言葉がうまく出なくなったり物忘れが増えたりなどの高次脳機能障害、そしてめまいやふらつきという症状が見受けられます。
●貧血
貧血は、鉄分不足やビタミンB12や葉酸などの不足により、血液中のヘモグロビンが少なくなった状態のこと。立ちくらみ、息切れ、めまい、ふらつき、頭痛、胸の痛みなどの症状が起こります。
頻発するあくびは、自覚なき睡眠不足のシグナル!
また、頻発するあくびで注意したいのは、無自覚の睡眠不足です。
「睡眠不足を自覚していない人は少なくありません。『なんだか体調が悪くて』と病院を受診され、問診の結果、睡眠不足が発覚するケースもあります」。
徹夜明けの日にあくびが頻発したり、頭がボーッとしたりする場合には、睡眠不足を自覚することは簡単です。しかし、平均的に8時間程度の睡眠を取っていても、睡眠の質が低下していたり、毎日の睡眠時間が少しずつ不足し、睡眠不足が次第に蓄積されていく睡眠負債の状態に陥っていたりすると、自分の睡眠不足に気づけないことがあります。
「そこで頻発するあくびは、1つの目安になります。体に不調を来したり、何か大きなミスをしたりしてしまう前に、『妙にあくびが出るな』と思ったら、睡眠不足を疑ってみてください。ストレス社会といわれる昨今。しっかり眠っているつもりでも、抱え込んだ心労により、睡眠の質が低下している人は少なくありません」。
先生は、ストレスが原因と考えられる睡眠不足の方には、寝具や枕を変えることを提案しているのだそう。
「先ほどもお伝えしたように、睡眠不足の原因の1つに過度なストレスが挙げられます。例えばそのストレスの原因が仕事や職場の人間関係だとしても、急に仕事を辞めることは難しいですよね。だから、まずは寝具や枕を変えて睡眠環境を整えることを勧めています。人生の大半の時間を過ごすからこそ、いい睡眠環境で十分な睡眠時間をとることが必要だと考えます」。
先生がおすすめする睡眠環境は、夏場は温度が25~28度で湿度は45~60%、冬場は温度が18~22度で湿度は55~65%に調整すること。肩こりからくる頭痛やめまいで悩まれている方は低めの枕をすすめ、適した高さがわからない場合は、タオルを二つ折りにしたり、四つ折りにしたり、その人の体型に合わせて心地よい高さを探してもらうそうです。
とはいえ、仕事や家事を優先して、ついつい後回しになってしまう睡眠…。そんなときにおすすめしたいのが、睡眠時間を確保するために菅原先生が実践している方法です。
「寝るときが1日のスタートだと考えてスケジュールを組んでいます。起きたときをスタートにして、余った時間を睡眠に充てるという人が多いように思います。睡眠時間を最優先で確保して、残った時間で1日のスケジュールを立ててみてはいかがでしょうか?」。
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脳をリフレッシュさせ、病気のシグナルとなり、無意識の睡眠不足を教えてくれるあくび。今回はあくびをテーマにお届けしてきましたが、菅原先生のお話により、あらためて睡眠の大切さを感じていただけたはずです。あくびをきっかけに、カラダの不調や無自覚の睡眠不足を見逃さないように、日々の生活で意識してみてくださいね。
「菅原脳神経外科クリニック」院長
菅原 道仁 先生
くも膜下出血や脳梗塞などの緊急脳疾患専門医として国立国際医療研究センターに勤務後、脳神経外科専門の北原国際病院に15年間勤務。その診療経験をもとに「人生の目標から考える医療」のスタイルを確立する。心や生き方までトータルサポートする診療を続け、わかりやすい医療解説からテレビへの出演も多数。著書も多く、近著に『認知症予防のカキクケコメソッド』(かんき出版)や『すぐ怠ける脳の動かし方』(青春新書インテリジェンス)がある。
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