カテゴリ:眠り
『第3の時間』著者の井上陽子さんが考える、デンマークと日本での生活と睡眠
今回は、著書『第3の時間』でデンマーク流の豊かな働き方と生き方を紹介し、大きな反響を呼んでいる井上陽子さんにお話を伺いました。
かつて日本で新聞記者として、そしてワシントンの特派員として、文字通り「分刻み」の締切に追われる日々を送っていた井上さん。
睡眠を削り、常に「臨戦態勢」だった過去から、デンマークでの経験を経て「8-8-8(仕事・自由・休息)」のバランスで過ごす現在に至るまで、睡眠や生活に対する価値観はどう変化したのでしょうか。


ニュースの動向次第でスケジュールが直前まで決まらないため、毎日眠るタイミングも時間もバラバラだったそう。
「朝7時のニュースチェックから始まり、取材、会見、夕刊の記事執筆、そして翌日の朝刊に向けたデスクとのやり取り。
原稿のブラッシュアップや見出しの確認を終えるのは夜10時を過ぎ、情報のアップデートが必要な場合は日付が変わるまで作業が続きました。
夜の会食中であっても、同僚から送られてくるゲラを出先で確認していました。夜でも週末でも、仕事に役立つことばかりを考えていて、プライベートとの境界線は曖昧でした」
当時の睡眠環境について、井上さんはこう振り返ります。
「睡眠の質や環境以前に、とにかく少しでも長く眠るにはどうしたら良いか、とよく考えていました」
記者クラブの共用ベッドで仮眠を取ることもあれば、移動時間を睡眠にあてることもしばしば。
「タクシーやハイヤーでの移動中、後部座席でよく横になって眠っていました。20代、30代の頃は常に睡眠不足でしたが、それを気力と体力でカバーしていました」
「日本の締切時間が米国の夜にあたるため、日中の取材を終えた夜10時過ぎに日本へ原稿を送ります。すんなりOKが出れば眠れますが、修正や追加原稿が入れば、そこから夜通し執筆が始まります」
ワシントン時間の午前8時には朝刊の見出しチェック、昼までは修正対応、午後からは再び取材。夕方には夕刊の相談が始まります。
「いつ眠れるか」を把握するために、日本の締切と現地の予定をまとめたスプレッドシートを作り、睡眠時間をパズルのように管理していました。
支局の仮眠室で寝過ごして冷や汗をかいた経験から、あえて仮眠室を使わなくなったというエピソードからは、当時の張り詰めた緊張感が伝わってきます。
「米国で大きなニュースがあれば即座に対応する必要があり、気分的には常に”臨戦態勢”でした」
当時の生活を、井上さんは「夜中に暴飲暴食するのはザラでしたし、時間に追われる中で削れるのは睡眠時間だけでした。よく大した病気もなく過ごせたなと思います」と振り返ります。

そんな井上さんの壮絶な睡眠スタイルに劇的な変化をもたらしたのが、デンマーク人のパートナーとの結婚をきっかけとしたデンマークへの移住でした。
そこでパートナーをはじめとするデンマークの人々の「8-8-8」のライフスタイルに影響を受け、睡眠時間の確保を目指すようになります。
1日24時間を「8時間の労働」「8時間の自由時間」「8時間の休息」に分けるという考え方で、これを実践することで、現在は7時間半の睡眠時間を確保できています。
不規則な睡眠時間だった頃と比べ、7時間半眠れるようになった今感じる変化を伺いました。
「まず第一に風邪を引きにくくなり、たとえ体調を崩しても、回復が早くなりました。
精神的な安定感も違います。たっぷり寝た日は、気分が良く、仕事にもサッと手をつけられます」
睡眠をしっかりとることは、単なる休息ではなく、知的労働者としてのパフォーマンスを維持するための不可欠な「土台」であることがわかったそう。
そのために、カフェインの摂取タイミングにこだわっているのだそう。
「新聞記者として仕事をしていた時には、眠くならないようにコーヒーなどカフェインが入った飲み物をよく飲んでいました。
いまは、毎日の生活リズムがだいたい決まっています。
20時に子どもを寝かしつけた後、仕事が残っていれば1~2時間程度仕事をしてから就寝し、だいたい朝の6時前に起床します。朝8時に子どもを学校に送り、8時半すぎから仕事を始めます。
このルーティンでの生活を送るため、カフェイン入りのものを飲むのは、午後2時ごろまでにしています。それ以降に飲みたくなった場合はデカフェを選ぶようにしています。」
また、日本とデンマークの生活スタイルの違いとして井上さんが挙げたのが「子どもの睡眠」です。
デンマークの子育ては概して寛容ですが、睡眠に関しては非常に厳格だそう。特に子どもは睡眠時間を確保することを最優先し、小学生くらいまでは午後8時までに寝かせる家庭が多いと言います。
「日本では多くの方から『自由時間を大事にすることで、仕事の生産性は上がりましたか?』という質問を受けます。
「良い影響があった」と答えてほしいという期待があるのかもしれませんが、それは正直言ってわかりません。仕事は、自分にとって価値あるものを厳選するようになった一方で、こなせる仕事の量は少なくなりましたし。。
ただ、こういう質問は、仕事中心の考え方の延長にあるようにも思うんですよね。
自由時間をエンジョイすることを、どこか、生産性を上げるための手段として考えているところがある、といいますか。
デンマーク人の夫に、こういう質問を受けたよと言うと、どうして自由時間が仕事の役に立つ必要があるの?と困惑します(笑)。自由な時間は、仕事とか生産性といったことに関係なく、好きなように過ごすのがポイントなわけですから。
一般論として言いますと、デンマークでワークライフバランスが大事にされているのは、”家庭生活がうまくいくほど人は効率的に仕事をする”と考えるところがあるためです。
プライベートがボロボロなのに、仕事の時間だけはつらつと効率的に働く、というのはちょっと考えづらいですよね。その人が心身ともに健康でプライベートも安定していることが、結果的にいい仕事につながると考えているようです」
「それでも、本を読んだ後、すぐに働き方を変えました、という声をよくいただきます。そうした方々は、おそらく、私の目線を通したデンマークの社会システムや価値観触れ、新たな”視点”を受け取ってくださったのだと思います。
何ごとにも、その時間を使えばできたかもしれないことはつきまといます。そして、時間に余裕があるというのは、変化を起こすために必要な力だと思います。
働き方や日々の過ごし方は、環境に左右される部分が大きいわけですが、自分ひとりで変えられることも、意外にあると思うんですよね。
そうした可能性に気づき、時間の使い方を変えることで人生の方向性を変えていきたい、と考える方に、本が届いてほしいと思います」
最後に、井上さんがパートナーからもらったという大切な言葉をご紹介します。
"Don't beat yourself up"(そんなに自分に厳しくしないで)
限りある時間を、より豊かに生きるために使う。
デンマークという社会で、井上さんが頭で理解したこと、そして心で納得した経験が、日々忙しく働く私たちの睡眠と、そして人生を少しだけ優しく変えてくれるきっかけになるかもしれません。

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健やかな毎日を送るためには、まず自分の生活を可視化して把握することが重要です。
無理のない範囲で、少しずつ見直し、改善していきましょう。
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かつて日本で新聞記者として、そしてワシントンの特派員として、文字通り「分刻み」の締切に追われる日々を送っていた井上さん。
睡眠を削り、常に「臨戦態勢」だった過去から、デンマークでの経験を経て「8-8-8(仕事・自由・休息)」のバランスで過ごす現在に至るまで、睡眠や生活に対する価値観はどう変化したのでしょうか。
監修者さまプロフィール

ジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー
井上陽子さん
デンマーク在住のジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー。筑波大学国際関係学類卒業後、読売新聞社に記者として入社。横浜支局を経て、社会部で国土交通省、環境省などを担当したのち、米国ワシントン支局でオバマ政権時のホワイトハウスなどを取材。
読売新聞在職中に、ハーバード大学ケネディ行政大学院に留学し、公共経営学の修士号を取得。
2015年、妊娠を機に、特派員として赴任していた米国から夫の母国であるデンマークの首都コペンハーゲンに移住。現在、デンマーク人の夫と、長女、長男の4人暮らし。執筆活動のほか、コミュニケーション・アドバイザーとして、日本とのビジネスに取り組むデンマーク企業などのサポートも行っている。
note:https://note.com/yokodk
X:https://twitter.com/yokoinoue2019

著書
第3の時間 デンマークで学んだ、短く働き、人生を豊かに変える時間術(ダイヤモンド社)
長時間労働に追われる新聞記者が、39歳でデンマークに移住。そこで目にしたのは、男女ともに短時間で仕事を切り上げ、自由な時間を謳歌している光景だった。短時間労働でも世界一の競争力を誇る国が教えてくれる、合理的な働き方と人生を豊かにする時間の使い方。
第3の時間 | 書籍|ダイヤモンド社
目次
「少しでも休める時間」を探していた記者時代
井上さんの日本での記者時代のスケジュールは、想像を絶するハードなものでした。ニュースの動向次第でスケジュールが直前まで決まらないため、毎日眠るタイミングも時間もバラバラだったそう。
「朝7時のニュースチェックから始まり、取材、会見、夕刊の記事執筆、そして翌日の朝刊に向けたデスクとのやり取り。
原稿のブラッシュアップや見出しの確認を終えるのは夜10時を過ぎ、情報のアップデートが必要な場合は日付が変わるまで作業が続きました。
夜の会食中であっても、同僚から送られてくるゲラを出先で確認していました。夜でも週末でも、仕事に役立つことばかりを考えていて、プライベートとの境界線は曖昧でした」
当時の睡眠環境について、井上さんはこう振り返ります。
「睡眠の質や環境以前に、とにかく少しでも長く眠るにはどうしたら良いか、とよく考えていました」
記者クラブの共用ベッドで仮眠を取ることもあれば、移動時間を睡眠にあてることもしばしば。
「タクシーやハイヤーでの移動中、後部座席でよく横になって眠っていました。20代、30代の頃は常に睡眠不足でしたが、それを気力と体力でカバーしていました」
ワシントン特派員時代の「時差」との戦い
38歳の時に、ワシントンへ赴任。これが日本との「14時間の時差」というさらなる壁を加えました。「日本の締切時間が米国の夜にあたるため、日中の取材を終えた夜10時過ぎに日本へ原稿を送ります。すんなりOKが出れば眠れますが、修正や追加原稿が入れば、そこから夜通し執筆が始まります」
ワシントン時間の午前8時には朝刊の見出しチェック、昼までは修正対応、午後からは再び取材。夕方には夕刊の相談が始まります。
「いつ眠れるか」を把握するために、日本の締切と現地の予定をまとめたスプレッドシートを作り、睡眠時間をパズルのように管理していました。
支局の仮眠室で寝過ごして冷や汗をかいた経験から、あえて仮眠室を使わなくなったというエピソードからは、当時の張り詰めた緊張感が伝わってきます。
「米国で大きなニュースがあれば即座に対応する必要があり、気分的には常に”臨戦態勢”でした」
当時の生活を、井上さんは「夜中に暴飲暴食するのはザラでしたし、時間に追われる中で削れるのは睡眠時間だけでした。よく大した病気もなく過ごせたなと思います」と振り返ります。
デンマークで学んだ「8-8-8」のライフスタイルで十分な睡眠時間を確保できるように

そんな井上さんの壮絶な睡眠スタイルに劇的な変化をもたらしたのが、デンマーク人のパートナーとの結婚をきっかけとしたデンマークへの移住でした。
そこでパートナーをはじめとするデンマークの人々の「8-8-8」のライフスタイルに影響を受け、睡眠時間の確保を目指すようになります。
1日24時間を「8時間の労働」「8時間の自由時間」「8時間の休息」に分けるという考え方で、これを実践することで、現在は7時間半の睡眠時間を確保できています。
不規則な睡眠時間だった頃と比べ、7時間半眠れるようになった今感じる変化を伺いました。
「まず第一に風邪を引きにくくなり、たとえ体調を崩しても、回復が早くなりました。
精神的な安定感も違います。たっぷり寝た日は、気分が良く、仕事にもサッと手をつけられます」
睡眠をしっかりとることは、単なる休息ではなく、知的労働者としてのパフォーマンスを維持するための不可欠な「土台」であることがわかったそう。
そのために、カフェインの摂取タイミングにこだわっているのだそう。
「新聞記者として仕事をしていた時には、眠くならないようにコーヒーなどカフェインが入った飲み物をよく飲んでいました。
いまは、毎日の生活リズムがだいたい決まっています。
20時に子どもを寝かしつけた後、仕事が残っていれば1~2時間程度仕事をしてから就寝し、だいたい朝の6時前に起床します。朝8時に子どもを学校に送り、8時半すぎから仕事を始めます。
このルーティンでの生活を送るため、カフェイン入りのものを飲むのは、午後2時ごろまでにしています。それ以降に飲みたくなった場合はデカフェを選ぶようにしています。」
また、日本とデンマークの生活スタイルの違いとして井上さんが挙げたのが「子どもの睡眠」です。
デンマークの子育ては概して寛容ですが、睡眠に関しては非常に厳格だそう。特に子どもは睡眠時間を確保することを最優先し、小学生くらいまでは午後8時までに寝かせる家庭が多いと言います。
「自由時間は、生産性を上げるための手段ではない」
この「8-8-8」の生活スタイルについて日本で説明すると、よく質問されることがあるそう。「日本では多くの方から『自由時間を大事にすることで、仕事の生産性は上がりましたか?』という質問を受けます。
「良い影響があった」と答えてほしいという期待があるのかもしれませんが、それは正直言ってわかりません。仕事は、自分にとって価値あるものを厳選するようになった一方で、こなせる仕事の量は少なくなりましたし。。
ただ、こういう質問は、仕事中心の考え方の延長にあるようにも思うんですよね。
自由時間をエンジョイすることを、どこか、生産性を上げるための手段として考えているところがある、といいますか。
デンマーク人の夫に、こういう質問を受けたよと言うと、どうして自由時間が仕事の役に立つ必要があるの?と困惑します(笑)。自由な時間は、仕事とか生産性といったことに関係なく、好きなように過ごすのがポイントなわけですから。
一般論として言いますと、デンマークでワークライフバランスが大事にされているのは、”家庭生活がうまくいくほど人は効率的に仕事をする”と考えるところがあるためです。
プライベートがボロボロなのに、仕事の時間だけはつらつと効率的に働く、というのはちょっと考えづらいですよね。その人が心身ともに健康でプライベートも安定していることが、結果的にいい仕事につながると考えているようです」
視点を変えて時間の使い方を見直す
井上さんは、「『第3の時間』は、短時間労働のためのハウツー本ではありません」と言います。「それでも、本を読んだ後、すぐに働き方を変えました、という声をよくいただきます。そうした方々は、おそらく、私の目線を通したデンマークの社会システムや価値観触れ、新たな”視点”を受け取ってくださったのだと思います。
何ごとにも、その時間を使えばできたかもしれないことはつきまといます。そして、時間に余裕があるというのは、変化を起こすために必要な力だと思います。
働き方や日々の過ごし方は、環境に左右される部分が大きいわけですが、自分ひとりで変えられることも、意外にあると思うんですよね。
そうした可能性に気づき、時間の使い方を変えることで人生の方向性を変えていきたい、と考える方に、本が届いてほしいと思います」
最後に、井上さんがパートナーからもらったという大切な言葉をご紹介します。
"Don't beat yourself up"(そんなに自分に厳しくしないで)
限りある時間を、より豊かに生きるために使う。
デンマークという社会で、井上さんが頭で理解したこと、そして心で納得した経験が、日々忙しく働く私たちの睡眠と、そして人生を少しだけ優しく変えてくれるきっかけになるかもしれません。
nisikawaのおすすめサービス
睡眠管理アプリ<goomo>
goomoは、睡眠を中心に、あなたの生活や健康をささえるスマホアプリです。
睡眠時間、寝つき時間、中途覚醒、睡眠効率などを計測し、自分の生活サイクルを可視化することができます。
また、継続的に使用することで、日々の変化の中で自分の体調に気づくこともあるかもしれません。
健やかな毎日を送るためには、まず自分の生活を可視化して把握することが重要です。
無理のない範囲で、少しずつ見直し、改善していきましょう。
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