カテゴリ:眠り

就寝前の「デジタルデトックス」から広がる和歌の世界

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就寝前の「デジタルデトックス」から広がる和歌の世界
イラスト出展|『いとエモし。超訳 日本の美しい文学』イラスト:ま


夜、ついスマホを触り続けてしまい、気づけば目も頭も冴えてしまっている――そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

実はこの「寝る直前のデジタル刺激」が、睡眠の質を下げる大きな要因の1つと言われています。スマートフォンやパソコンの光は脳を覚醒させ、体内時計を乱し、眠気の到来を遅らせてしまうからです。

寝る前の数十分だけでもスマホを遠ざけ、ゆっくりと呼吸を整え、感覚を「外」から「内」へと戻していく--。こうしてデジタルデトックスを行うことで、心が静まり、自然と眠りに向かう準備が整います。

参考:日中のだるさは睡眠の質に関係あり?就寝前の「デジタルデトックス」で質の高い睡眠をゲット!|眠りのレシピ|西川株式会社

このデジタルデトックスにぴったりなのが、和歌や古典作品を読むこと。
数行の短い文章に凝縮された情景や想いが、心にそっと寄り添い、まるで深呼吸をするように気分を落ち着かせてくれます。

今回は『いとエモし。超訳 日本の美しい文学』の著者であり、古典文学の魅力を現代に易しく伝えているkotoさんに、睡眠前に読みたい和歌や、和歌が持つ魅力について伺いました。
   

和歌が持つ、美しい音の響きに癒される

数年前からスマートフォンやテレビに触れるのをやめて、移りゆく自然の景色や畑仕事を楽しみながら、毎日の生活やご自身の感覚を大切に生活されているkotoさん。

まさにデジタルデトックスを生活に取り入れられているkotoさんに、和歌や古典文学の魅力をお伺いしました。

「和歌や古典は必ず読むべきものではなく、気が向いたときにそっと開けば良い、本来はもっと自由な存在です。
その魅力の1つとして、五・七・五・七・七が生む独特の“音の美しさ”があります。ゆったりとしたリズムに意味のある言葉が重なることで、心地良い静けさが広がります。

眠る前に和歌集をぱらっと開き、気になった一首だけ眺めてみる――それだけで、”よくわからないのに惹かれる”歌に出合えることがあります。

意味を調べても良いし、調べずに音の響きだけを味わっても構いません。
言葉のリズムに身をゆだねていると、自分の記憶の風景や感情と重なり、自然と穏やかな気持ちへと導かれていきます。

和歌集は時代や編者によって雰囲気が大きく異なるため、自分に合う一冊を探す楽しみもあります。

『万葉集』『古今和歌集』『新古今和歌集』など手に取りやすいもののほか、『拾遺和歌集』『後拾遺和歌集』もおすすめ。

個人的には、美しい歌が多い『風雅和歌集』という歌集が大好きです。美しい和歌がこれでもかと収録されていますよ」(kotoさん)

 

「睡眠」「夢」にまつわるおすすめ和歌5選

ここからは、kotoさんが“眠りに寄り添う”視点で選んだ和歌とその解説をご紹介します。やさしいリズムと言葉の余韻が、穏やかな眠りへと誘ってくれます。


1, 小野小町 『古今和歌集』552番

思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 
夢と知りせば 覚めざらましを


正体不明の歌名人、小野小町の有名な和歌です。
ここに出てくる「人の」というのは、思い人のことで、「あの人のことを考えながら眠ったら、その人の夢を見た。あぁ、夢だとわかってたら、もっと眠っていたのに……」というような乙女心をうたっています。

「恋のときめきがとにかくフレッシュに描かれていて、胸がキュンとしてしまう歌です」(kotoさん)


2, 九条良経 『風雅和歌集』1898番

うたたねの儚き夢の中にだに
千々の思ひのありけるものを


「少し解釈の難しいうたなのですが、とても響きが美しく、好きな和歌の1つです。
私はこのように解釈しました。

『ほんの束の間、うたたねをする。
その短い夢の中でさえ、
幾千の思いがかけめぐる。

自分、肉親、知らない誰か。
無数の色の心模様が、
消えてはあらわれるを繰り返す。

この身一つでは、
抱えきれないほどの思いが、
内に、外に、あふれている。』

いろんな縁、それは良いも悪いも含めた、あらゆる縁、そして人の思い。この世界のありようを伝えた和歌で、幻想的です」(kotoさん)


3, 大江千里 『風雅和歌集』1899番

夢にても 嬉しきことの 見えつるは 
ただのうれうる 身にはまされり


たとえ夢の中でも、うれしいことがあったのはよかったなぁ(現実は憂いごとばかりだけど……)」という意味の和歌。

「日々の悩みが耐えないのは、昔も今も変わらず。というより、いろいろなしがらみの多かった昔は、もっと大変だったようにも思います。
その、『夢の中の一瞬の安堵』を、ちょっとグチっぽく伝えている感じがあり、おもしろい和歌だなと思います」(kotoさん)


4, 詠み人知らず 『古今和歌集』641番

ほととぎす 夢かうつつか朝露の
おきて別れし あかつきのこゑ


「思い人と逢瀬を重ねて、家路につくときに詠まれた歌だと思われます。

昔は、男性が女性の住む場所を尋ね、そして朝には帰る、という恋愛の仕方だったので、要するに朝帰りの和歌になります。

おもしろいのは、『ホトトギスよ、さっきの体験は夢だったのか幻だったのか…』とホトトギスに尋ねているところです。
どんな関係性のお相手だったのかなど、いろいろ気になってしまいます。
(実名だと不都合があるときに「詠み人知らず」という表現になりがち)

クタクタでヨレヨレの、疲れた朝帰り。しかし、疲れ切った体で、布団に飛び込んでおやすみ……そんなこれからの情景が浮かぶ、ユニークな和歌です」(kotoさん)


5, 大江匡衡 『新古今和歌集』824番

夜もすがら 昔のことを見つるかな
語るやうつつ ありし夜や夢


「一晩中、亡くなったあなたのことを夢で見た。かつて語り合ったことは本当にあったことだったのか、それとも、あなたがいたということ自体が夢だったのか」そんな意味の和歌です。

「『夢と現実』は、『今と過去』との境のようで、考えてみるとあいまいなもの。夢だったと言われたらそう思えてしまうほど、過去というのは頼りない。

そんな哲学的な和歌になっています。
夢と現実、今と過去——う〜んと難しく考えていたら、すんなり寝られてしまうかもしれません」(kotoさん)

 

古典文学から見えてくる、睡眠と当時の生活

古典文学の中で出てくる「眠り」というキーワードから、当時の人々の暮らしぶりが見えてきます。

「平安貴族というと優雅で暇な暮らしを思いがちですが、実際は儀式や宴、お付き合いに追われる毎日で、驚くほど多忙でした。
『枕草子』も、寝る前に軽く書いた日記という印象とは裏腹に、すべての公務を終え、睡眠時間を削って綴られた“深夜のハードワーク”だったようです。

和歌に登場する“夢”は、恋心や栄華などさまざまなものを重ねる一方で、覚めれば消える“はかなさ”の象徴として描かれます。

『ひとりね』という孤独や不安を表す語も多く、通い婚の文化の中で、女性が訪れてくれない寂しさや怒りを夢や眠りに託して歌うこともありました。

当時の人々は緊張感の高い社会で生き、ストレスや不眠に悩むことも多かったと考えられます。

栄華の象徴とされる藤原道長でさえ病に苦しみ、和歌には『悩みで眠れず、気づけば夜明け』という表現がたびたび登場します。この点は、ストレスで眠れない現代人にも通じるものがあると思います。

また、睡眠はしばしば”死”にたとえられ、無防備で意識が途切れる時間として恐怖を帯びて描かれることもありました。

仏教的な極楽浄土の連想もあり、眠りは癒やしよりも“未知への一歩”として受け止められていたのかもしれません。

そんな歴史をふまえると、命の危険を心配せず、安心して眠れる現代の環境は、なによりの贅沢だと感じられます。」(kotoさん)

 

kotoさん流 心と体を整える生活習慣

出展|『いとエモし。超訳 日本の美しい文学』イラスト:しまざきジョゼ


移ろう自然の景色を見つめながら、毎日の暮らしを楽しまれているkotoさん。
睡眠環境や体内時計の整え方についてもお伺いしました。


・デジタルデトックスで、なにもしない時間を作る

ここ数年は携帯電話を持つのをやめて、テレビも10年ほど観ていないというkotoさん。
「デジタルデトックスをすると「なにもしない」時間が自然と生まれてきました。ぼーっとしたり、気が向けば本を読んだり、うたた寝したり。
生産的なことをしない時間が、むしろ心地良く感じられています」


・“ぼーっとした時間”から本が生まれた

「実は本を書くことも、そんなぼーっとした時間の延長でした。
夜な夜な古典や和歌を読んでメモしていただけで、書くつもりはなかったんです。
でもメモがたまっていくうちに『これを今風にしたらどうなるんだろう?』と妄想が膨らんで、気づいたら本になっていました。
やりたいことって、誰に言われなくても体が勝手に動くものなんだと実感しています」

ふとスマホを見て溶かしてしまっていた時間を有意義なものに変えられると、日々の満足度や達成感が高まっていくそうです。


・和歌や暦は、自然と眠りの感覚を整えてくれる

「和歌の世界観って、実は眠りに寄り添うものだと思っています。

『いとエモし。』のあとに、日本の暦(二十四節気・七十二候)をテーマにした『いとし、君へ。』を書かせていただいたのですが、暦は「朝起きて、夜に眠る」という、生き物としての自然なリズムを教えてくれる存在なのだと感じます」

古来の自然な生活リズムに想いを馳せれば、自分の習慣の見直しができそうです。

 

眠る前のリラックスとして和歌を取り入れよう

「和歌は難しい、特別な知識が必要…」
そんなイメージを持たれがちですが、実は和歌はもっと自由で、もっと感覚的に楽しめるもの。

リズムを味わい、情景を感じるだけで、日中に溜まった緊張がほどけていきます。

夜、スマホを閉じて、静かな呼吸の中でページをめくる。
そこにあるのは、千年以上前の誰かが見た景色や感情。その“連続性”に気づくと、自分の悩みや不安もふっと軽くなるような不思議な感覚が生まれます。

忙しい毎日の中で、眠る前の数分だけでも、和歌に触れてみませんか。

 

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監修者さま著書

著者 koto

『いとエモし。超訳 日本の美しい文学』(サンクチュアリ出版)

「この本は、とにかくイラストレーターさんたちのイラストが素晴らしい!に尽きると思います。
お借りしたイラストは、和歌の内容に必ずしもリンクしたものばかりではないのですが、その組み合わせは私の中でいろいろ考えてみました。
美しい、かわいい、きれいなだけでなく、たまにふふっと笑えたり。
和歌とイラストの世界を、直感的に楽しんでいただけたらありがたいなぁと思います」

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