2022年05月26日 カテゴリ:眠り

雨の日って妙に眠い!天気と体調不良の専門医がひも解く「低気圧と睡眠」の関係

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雨の日って妙に眠い!天気と体調不良の専門医がひも解く「低気圧と睡眠」の関係


布団から出るのが億劫だな、昼になってもすっきりしないな…。たまにやってくる妙な眠気に悩まされているなら、その原因は「天気」にあるかもしれません。

梅雨に台風にゲリラ豪雨と、初夏から秋にかけては特に気象の変化が激しいシーズン!天気の崩れに負けることなく元気に過ごすには、どうしたらいいのか。教えてくれるのは、30年にわたって天気と体調不良の関係を研究し、診療も行う佐藤純先生です。
 

雨の日の妙な眠さは、人体に備わった自然の摂理!?

ひと口に天気といっても、気温や湿度だったり、降水量や風の向きや強さだったり、その構成要素は多様。なかでも眠気を引き起こしている主な原因は「気圧」です。私たちの心身にさまざまな影響を及ぼし、気圧の変化を引き金に起こる不調の総称が「天気痛」。佐藤先生は、天気痛研究・診療の第一人者です。

「気圧による眠気には2つの原因が考えられ、1つ目が低気圧です。私たちの身体は交感神経と副交感神経から成る自律神経によってコントロールされていますが、低気圧は副交感神経の働きを活性化させます。副交感神経が優位に働くと身体が休息モードに入るため、自ずと眠気が生じるわけです」

低気圧によって眠くなるのは、私たちに備わった本能ともいえます。低気圧の状態とは、すなわち天気が悪い状態。雨が降るのも低気圧のときです。文明が未発達の時代の人たちは、晴れの日に狩猟や耕作を行い、雨の日は休息に当てていました。

それが現代は天候とは無関係に働かざるを得ず、「現代人の生活は、自然や人体の摂理に逆らっているようなもの」と佐藤先生。自然の摂理に逆らっている以上、ある程度の眠気を感じるのは仕方なく、「問題なのは2つ目の原因のほう。眠気を感じた後に片頭痛が始まる場合には注意が必要です」と指摘します。
 

眠気と片頭痛と悪天候がセットなら「天気痛」の可能性も


気圧の変化によって生じる天気痛の症状は、実にさまざまです。めまいや古傷の痛みに身体のコリ、倦怠感やメンタルの不調のほか、片頭痛もその1つ。そして、片頭痛の予兆として代表的なのが眠気です。

「天気痛の原因も自律神経にありますが、低気圧のときに眠くなるのと違い、天気痛は気圧が変化するタイミングに生じます。高気圧から低気圧にしても、低気圧から高気圧にしても、その変化によって交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、結果的に心身に不調が生じるのです」

気圧の変化を引き金に片頭痛を訴える人は少なくなく、佐藤先生と気象サイト『ウェザーニューズ』の共同調査から、わずかな気圧の変化であっても片頭痛が生じることが分かっているそう。また、日中の眠気のほかに朝の起きづらさに関しても、片頭痛の予兆としてよく見られる症状だといいます。

「片頭痛の予兆として朝の起きづらさや眠気が生じる一方、片頭痛に悩まされる人は睡眠の質が低い傾向にあります。片頭痛の前に起こる眠気は時間の経過とともに和らぎ、夕方以降にはすっきり。気だるい日中よりも夜の活動量が増えることから寝る時間が遅くなり、結果的に睡眠不足になったり、睡眠のリズムが乱れたりするのでしょう」

気象の変化にかかわらず睡眠不足が片頭痛の原因となるのは、よく知られていること。片頭痛の前に起こる眠気が睡眠のリズムを乱し、さらなる片頭痛の種を生み出しかねません。

そこで佐藤先生は、「こうした悪循環に陥らないためには、質の高い睡眠をとることが大切です。質の高い睡眠は自律神経のバランスを整えるにも欠かせないため、結果的に天気痛の予防にもなります」と指摘します。
 

子どもも要注意!天気痛による眠気を解消する方法とは?



質の高い睡眠が自律神経のバランスを整え、結果的に天気痛の予防になる——。そのため、片頭痛の予兆として起こる眠気に悩まされているなら、自身の眠りを見直すことが先決!また、片頭痛が生じてしまった場合、痛みとともに眠気が生じることも珍しくありません。

「そうしたときには、額やこめかみに冷やしたタオルや冷却シートを貼るのがおすすめです。冷やすことで頭痛が緩和するのと同時に、そのヒヤッとした感覚が目覚ましとしても機能してくれるはずです」

天気痛の症状の1つである片頭痛ですが、佐藤先生は「片頭痛に悩んでいるのは大人だけではありません。特に小学校低学年くらいまでのお子さんは、自身の不調を言葉にできない。『なんだか頭が痛い』というのを上手に言葉にできないことから、特に起き抜けの腹痛やだるさを頻繁に訴えるお子さんの場合、片頭痛の可能性も視野に入れましょう」と指摘します。

大人のみならず、子どもの睡眠不足も問題となる昨今。睡眠不足によって自律神経のバランスが乱れがちとなり、片頭痛をはじめとする天気痛の症状が出やすくなるのも当然のことかもしれません。起き抜けの不調を訴えるお子さんに「またか…」と脱力する前に、まずは睡眠の質に問題がないかどうか、見直してみてください。

ちなみに気圧の変化ではなく、低気圧によって生じる眠気に関しては「元も子もない回答ですが、原因が自然の摂理にある以上、抗わないのが一番。睡眠には心身の疲労を回復させる効果があるため、寝られる状況にあるなら寝てしまいましょう」と佐藤先生。

とはいえ、眠たくても勤務先や学校に通わないといけないのが現代人。早寝早起き、夜は決まった時間に寝るという規則正しい生活を大前提に、日中に眠くなったときには15分程度の短い仮眠をとったり、カフェインを摂取したりするのが良さそうです。

***

雨の日が増える梅雨は、低気圧のシーズン。低気圧による眠気を感じやすい時期ですが、天気痛が生じやすくなるのは、実は梅雨明けからだそう。梅雨は低気圧の状態で気圧が安定する一方、本格的な夏には台風やゲリラ豪雨に象徴されるように、高気圧から低気圧へと急激な気圧の変化が起こりやすくなるからです。

「梅雨に気をつけるべきなのは、気圧の変化以上に寒暖の差。蒸し暑さと冷たい雨の繰り返しに身体が順応できず、自律神経が乱れやすくなります。また、真夏の暑さと比べて梅雨の蒸し暑さは発汗を難しくするため、梅雨には特に意識的に湯船に浸かること。ゆっくり湯船に浸かることが発汗を促し、同時に入浴は睡眠の質を高めるにも効果的です」
そうして梅雨の時期から自律神経のバランスを乱さずにおくことが、気圧の乱高下が激しくなる真夏の体調にも直結!日常的に睡眠の質を高めることが自律神経を整え、気圧の変化によって生じる眠気、ひいては天気痛の予防にも結びつくのです。

 

天気痛ドクター・医学博士

佐藤 純先生生

名古屋大学環境医学研究所、名古屋大学教授を経て、愛知医科大学病院にて日本初の「気象病外来・天気痛外来」を開設。東京・竹橋クリニックでも同外来医として診療を手掛ける。天気痛研究・診療の第一人者として著書やメディア出演も多数。近著は『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)、気象サイト『ウェザーニューズ』と共に開発したスマホ用“天気痛予報”アプリも話題に。
http://www.tenkitsu-dr.com/

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