カテゴリ:眠り
皮膚が色をキャッチする!?色をうまく取り入れて快眠できる寝室に
色が私たち人間に与える影響は、とても大きいといわれています。すると、色によって睡眠の質が左右されたとしても、不思議ではありません。
色彩学を研究し、色彩学の講師を務める桜井輝子先生に、睡眠と色の関係についてお話を伺いました!
快眠を叶えるためには、どんな色を取り入れるのが望ましいのか━━ずばり、桜井先生の答えはシンプルで、「寝室のインテリアにしても、寝具や寝間着にしても、ご自身が心地良いと思える色を取り入れること。色から受ける影響が大きいからこそ、人それぞれが『好き』『心地良い』と思える色に囲まれることが一番だと考えます」。
「色彩心理学」という言葉を聞いたことのある人は少なくないと思いますが、色が人に与える影響は心理面だけに限りません。「昨今の研究で、私たちは皮膚でも色をキャッチできることが明らかになっています」(桜井先生)。
皮膚で色をキャッチするなんて、なんだか不思議ですよね。しかし色の正体とは何かを知ると、納得せざるを得ません。
「そもそも色の正体は光。そして光とは電磁波です。赤や黄色、オレンジや青といった色の違いは、電磁波の波長の違いです」(桜井先生)。
私たちが視覚で認識できる色には限りがあり、これを「可視光線」と呼びます。可視光線は、波長にして380ナノメートルから780ナノメートルの範囲。色に置き換えると青紫から赤の範囲です。
反対に、私たちが視覚で認識できない色を「不可視光線」と呼びますが、これは可視光線の範囲外、青紫の外側にあるのが「紫外線」、赤の外側にあるのが「赤外線」です。紫外線も赤外線も目で見ることはできませんが、どちらも生活に密着した存在ですよね。私たちは紫外線によって日焼けをし、遠赤外線ヒーターのように、赤外線から暖かさを感じます。
「日焼けをするのも、暖かさを感じるのも皮膚。皮膚は私たちが目で見ることのできない色まで、受容しているんです。詳細なメカニズムは解明されていませんが、皮膚に電磁波をキャッチする、受容のシステムがあることはたしかです」(桜井先生)。
繰り返しになりますが、色とは電磁波。そして電磁波とはエネルギーです。睡眠中はもちろん、色を見ることはできませんが、皮膚に電磁波を受容するシステムがある以上、肌に触れる寝具の色から、私たちは何らかの影響を受けているはずなのです。
好きな色といっても、原色をはじめとしたビビッドな色はあまりおすすめしません。「たとえ原色がお好きでも、ビビッドな色はアクセント程度にするのがオススメ。インテリアの場合、部屋全体の5~10%程度が目安です」(桜井先生)。
その理由は、色が人の心に与える影響力に起因します。心理学者のユングも、極彩色(はでやかで鮮やかな色彩)は人の潜在意識を活性化させる働きがあると考え、色鮮やかなマンダラを用いた治療を実践していたそうです。
色は人の潜在意識と結びつき、色によってさまざまなイメージを想起させますが、原色のひとつである赤のイメージは「活動的な、情熱的な、力強い、興奮する」。どれも奮い立つ心を表現するフレーズであり、眠りのイメージとは正反対です。
一方、赤い絵の具に白を混ぜたピンクのイメージは「優しい、幸福な、恋する、かわいらしい」。色の柔らかさと比例するように柔和なフレーズが並び、心の安らぎを感じさせます。
ブルー系を例にしても、青は「冷静な、静かな、大人の、理知的な、憂鬱な」。それが水色・空色では「澄んだ、爽やかな、クリアな、透明な」となり、より心が安らぐイメージです。
ビビッドな色が持つ影響力は、電磁波からも見て取れます。ビビッドな色を波長のグラフ(分光反射率曲線)として表すと、高低差の激しい波形になるのです。「この波長を人の心がキャッチできるのか。そこまでは解明されていませんが、原色をはじめとしたビビッドな色は、よりダイレクトに人の心に影響する傾向があります」(桜井先生)。
そのためビビッドな色がお好きな人は、クッションや目覚まし時計といった小物類で取り入れましょう。そして、寝室のカーテンやベッドカバーといった面積の大きいファブリックは、自分が好きな色を白い絵の具で薄めたような、パステルやペールトーンで取り入れるのがオススメです。
とはいえ、ご夫婦のように寝室をシェアしている場合には、お互いの好きな色が異なることもありますよね。そこで桜井先生が提案するのが「ベージュを基調にまとめること」。その理由は、ベージュが人に安らぎを与えるからです。
色は筋肉にも作用しますが、どの色がどのくらい筋肉を緊張させるかを数値化したのが「ライト・トーナス値」です。この数値の高さが筋肉緊張度の高さを示しますが、赤やオレンジといった暖色系は筋肉を緊張させ、青や緑といった寒色系は弛緩させることがわかっています。
筋肉が弛緩する。これはリラックスした状態とも言い換えられますが、寒色系以上に筋肉を弛緩させるのがベージュなのです。
「ベージュを基調とした部屋といえば、和室が挙げられます。ライト・トーナス値からして非常にリラックスできるのはもちろん、和室に用いられる色の明度は、日本人の皮膚の明度に近いんです。和室の色と私たちの肌の色。色彩学では、この2つの明度が近しいことからも、リラックス効果を得られることがわかっています」(桜井先生)。
さらに色は、人の体感温度も左右します。そのため快眠を得るには、季節によってインテリアを変えるのもオススメです。
赤・オレンジ・黄色系統の「暖色系」、青緑から青紫までの範囲を指す「寒色系」という言葉がありますが、読んで字のごとく、暖色は温もりを感じさせ、寒色は涼しさを感じさせます。
暖色を基調とした部屋と寒色を基調とした部屋を比較すると、なんと体感温度の差は、おおむねプラスマイナス2℃!「実験を繰り返した結果、室温を20℃に設定した場合、暖色系の部屋は21℃程度、寒色系の部屋は19℃程度の体感温度を得られることがわかっています」(桜井先生)。
心理面と肉体面の双方から、色が人に与える影響についてお届けしましたが、制服があったり、TPOに応じた服装を求められたり、好きな色を身に着けて生活するのは簡単ではありません。
「だからこそ、非常にプライベートな空間である寝室、せめてベッド周りくらいは、お気に入りのカラーコーディネートを意識してみてください。眠る時間は人生の多くを占めます。すると好きな色に囲まれて眠ることで、人生の質まで変わったとしてもおかしくありません。なぜなら色は電磁波であり、エネルギーなのですから」(桜井先生)。
快眠につながる色といっても、自分自身が好きな色でいいので、気軽に取り入れやすいですよね!人生のうち、多くの時間を過ごす寝室。色の力をうまく寝室に取り入れて、快適な睡眠を手に入れてはいかがでしょうか?
参考書籍:桜井輝子先生著書『配色アイデア手帖 めくって見つける新しいデザインの本』(SBクリエイティブ)
色彩学を研究し、色彩学の講師を務める桜井輝子先生に、睡眠と色の関係についてお話を伺いました!
色とは電磁波!その電磁波を皮膚がキャッチする
快眠を叶えるためには、どんな色を取り入れるのが望ましいのか━━ずばり、桜井先生の答えはシンプルで、「寝室のインテリアにしても、寝具や寝間着にしても、ご自身が心地良いと思える色を取り入れること。色から受ける影響が大きいからこそ、人それぞれが『好き』『心地良い』と思える色に囲まれることが一番だと考えます」。
「色彩心理学」という言葉を聞いたことのある人は少なくないと思いますが、色が人に与える影響は心理面だけに限りません。「昨今の研究で、私たちは皮膚でも色をキャッチできることが明らかになっています」(桜井先生)。
皮膚で色をキャッチするなんて、なんだか不思議ですよね。しかし色の正体とは何かを知ると、納得せざるを得ません。
「そもそも色の正体は光。そして光とは電磁波です。赤や黄色、オレンジや青といった色の違いは、電磁波の波長の違いです」(桜井先生)。
私たちが視覚で認識できる色には限りがあり、これを「可視光線」と呼びます。可視光線は、波長にして380ナノメートルから780ナノメートルの範囲。色に置き換えると青紫から赤の範囲です。
反対に、私たちが視覚で認識できない色を「不可視光線」と呼びますが、これは可視光線の範囲外、青紫の外側にあるのが「紫外線」、赤の外側にあるのが「赤外線」です。紫外線も赤外線も目で見ることはできませんが、どちらも生活に密着した存在ですよね。私たちは紫外線によって日焼けをし、遠赤外線ヒーターのように、赤外線から暖かさを感じます。
「日焼けをするのも、暖かさを感じるのも皮膚。皮膚は私たちが目で見ることのできない色まで、受容しているんです。詳細なメカニズムは解明されていませんが、皮膚に電磁波をキャッチする、受容のシステムがあることはたしかです」(桜井先生)。
繰り返しになりますが、色とは電磁波。そして電磁波とはエネルギーです。睡眠中はもちろん、色を見ることはできませんが、皮膚に電磁波を受容するシステムがある以上、肌に触れる寝具の色から、私たちは何らかの影響を受けているはずなのです。
ビビッドな色が好きな場合は、パステルやペールトーンで快眠
好きな色といっても、原色をはじめとしたビビッドな色はあまりおすすめしません。「たとえ原色がお好きでも、ビビッドな色はアクセント程度にするのがオススメ。インテリアの場合、部屋全体の5~10%程度が目安です」(桜井先生)。
その理由は、色が人の心に与える影響力に起因します。心理学者のユングも、極彩色(はでやかで鮮やかな色彩)は人の潜在意識を活性化させる働きがあると考え、色鮮やかなマンダラを用いた治療を実践していたそうです。
色は人の潜在意識と結びつき、色によってさまざまなイメージを想起させますが、原色のひとつである赤のイメージは「活動的な、情熱的な、力強い、興奮する」。どれも奮い立つ心を表現するフレーズであり、眠りのイメージとは正反対です。
一方、赤い絵の具に白を混ぜたピンクのイメージは「優しい、幸福な、恋する、かわいらしい」。色の柔らかさと比例するように柔和なフレーズが並び、心の安らぎを感じさせます。
ブルー系を例にしても、青は「冷静な、静かな、大人の、理知的な、憂鬱な」。それが水色・空色では「澄んだ、爽やかな、クリアな、透明な」となり、より心が安らぐイメージです。
ビビッドな色が持つ影響力は、電磁波からも見て取れます。ビビッドな色を波長のグラフ(分光反射率曲線)として表すと、高低差の激しい波形になるのです。「この波長を人の心がキャッチできるのか。そこまでは解明されていませんが、原色をはじめとしたビビッドな色は、よりダイレクトに人の心に影響する傾向があります」(桜井先生)。
そのためビビッドな色がお好きな人は、クッションや目覚まし時計といった小物類で取り入れましょう。そして、寝室のカーテンやベッドカバーといった面積の大きいファブリックは、自分が好きな色を白い絵の具で薄めたような、パステルやペールトーンで取り入れるのがオススメです。
和室のようなベージュ色で筋肉からリラックス
とはいえ、ご夫婦のように寝室をシェアしている場合には、お互いの好きな色が異なることもありますよね。そこで桜井先生が提案するのが「ベージュを基調にまとめること」。その理由は、ベージュが人に安らぎを与えるからです。
色は筋肉にも作用しますが、どの色がどのくらい筋肉を緊張させるかを数値化したのが「ライト・トーナス値」です。この数値の高さが筋肉緊張度の高さを示しますが、赤やオレンジといった暖色系は筋肉を緊張させ、青や緑といった寒色系は弛緩させることがわかっています。
筋肉が弛緩する。これはリラックスした状態とも言い換えられますが、寒色系以上に筋肉を弛緩させるのがベージュなのです。
「ベージュを基調とした部屋といえば、和室が挙げられます。ライト・トーナス値からして非常にリラックスできるのはもちろん、和室に用いられる色の明度は、日本人の皮膚の明度に近いんです。和室の色と私たちの肌の色。色彩学では、この2つの明度が近しいことからも、リラックス効果を得られることがわかっています」(桜井先生)。
さらに色は、人の体感温度も左右します。そのため快眠を得るには、季節によってインテリアを変えるのもオススメです。
赤・オレンジ・黄色系統の「暖色系」、青緑から青紫までの範囲を指す「寒色系」という言葉がありますが、読んで字のごとく、暖色は温もりを感じさせ、寒色は涼しさを感じさせます。
暖色を基調とした部屋と寒色を基調とした部屋を比較すると、なんと体感温度の差は、おおむねプラスマイナス2℃!「実験を繰り返した結果、室温を20℃に設定した場合、暖色系の部屋は21℃程度、寒色系の部屋は19℃程度の体感温度を得られることがわかっています」(桜井先生)。
人生の多くを過ごす寝室にこそ、好きな色を!
心理面と肉体面の双方から、色が人に与える影響についてお届けしましたが、制服があったり、TPOに応じた服装を求められたり、好きな色を身に着けて生活するのは簡単ではありません。
「だからこそ、非常にプライベートな空間である寝室、せめてベッド周りくらいは、お気に入りのカラーコーディネートを意識してみてください。眠る時間は人生の多くを占めます。すると好きな色に囲まれて眠ることで、人生の質まで変わったとしてもおかしくありません。なぜなら色は電磁波であり、エネルギーなのですから」(桜井先生)。
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快眠につながる色といっても、自分自身が好きな色でいいので、気軽に取り入れやすいですよね!人生のうち、多くの時間を過ごす寝室。色の力をうまく寝室に取り入れて、快適な睡眠を手に入れてはいかがでしょうか?
参考書籍:桜井輝子先生著書『配色アイデア手帖 めくって見つける新しいデザインの本』(SBクリエイティブ)
東京カラーズ株式会社 代表取締役
桜井 輝子 先生
人に役立つ色彩の提案、企業の商品をより魅力的に演出するためのカラーコンサルティングや企業研修、大学・専門学校での色彩学講師、色彩教材の企画制作などを手掛ける。2014年にはスウェーデン国家規格「ナチュラルカラーシステム(NCS)」の認定講師資格を日本人で初めて取得し、その普及に努める。色彩に関する著書も多く、『配色アイデア手帖 めくって見つける新しいデザインの本』(SBクリエイティブ)は13万部のヒット。
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