カテゴリ:眠り
寝すぎによる頭痛!?治し方から予防法まで解説
「ちゃんと眠ったはずなのに、寝起きから頭が痛い」──しっかり睡眠をとることは、体に好影響なはずなのに、不思議ですよね?
そこで今回は、頭痛などの治療を行う東京頭痛クリニックの院長・篠原伸顕先生に、寝起きに頭痛が起こるメカニズムから頭痛が起きたときの対処法、さらには寝起き頭痛を起こさないための予防策まで、たっぷり伺いました!
しっかり眠ったのに起きる頭痛の原因は「寝すぎ」!
──しっかり眠ったはずが、寝起きから頭が痛い。こうした寝起きの頭痛には、どのような原因が考えられるのでしょうか?
篠原先生:まさに「しっかり眠った」という部分から考えられるのが、寝すぎによる頭痛です。寝すぎによる頭痛には、「片頭痛」と「緊張型頭痛」の2タイプがあります。
【片頭痛】
●特徴
目の奥から側頭部、もしくは頭全体に起こり、ズキズキと脈打つような痛み。
●考えられる原因
血管の拡張と血流の変化。
【緊張型頭痛】
●特徴
筋肉の緊張によって生じ、頭部を締め付けられるような痛み。
●考えられる原因
睡眠時の姿勢。
篠原先生:解明には至っていませんが、寝すぎによる「片頭痛」の原因に挙げられるのが、血管の拡張と血流の変化です。人は熟睡している時間が長く続くと、体が省エネモードに入り血管が弛緩します。程度の差はありますが、冬眠中の動物のような状態ですね。熟睡モードに入ると心拍数や呼吸数が低下し、血流が緩やかになります。長く眠れば眠るほど、この状態が長く続き、起床時の反動が大きい。起きた瞬間、「しっかり血液を送らねば!」と体が躍起になり、勢いよく血液が流れ始めるわけです。
片頭痛は、脳の血管拡張により血管を取り巻く三叉神経(さんさしんけい)が引っ張られることにより起こります。寝起きに生じる急な血流量の増加によって血管が強く拍動し、三叉神経が引っ張られることによりズキズキとした頭痛が起きるのでしょう。このような流れから「寝起きから頭が痛い」という状態が生じるのです。
──なるほど。では、緊張型頭痛について教えてください。
篠原先生:「緊張型頭痛」は文字どおり、筋肉の緊張によって生じ、頭部を締め付けられるような痛みが特徴ですが、寝すぎてしまった場合、原因として考えられるのが睡眠時の姿勢です。
寝相の悪いまま長時間寝てしまうと、首や肩に負担がかかることが多々あります。特に首の付け根から背中にかけて伸びる僧帽筋(そうぼうきん)や、後頭部から首の後ろに広がる後頚筋(こうけいきん)、また、こめかみにある側頭筋(そくとうきん)に負担がかかると、頭痛が起こることが多いですね。こうした筋肉が緊張を起こすと血流が停滞し、その部分の筋肉に強い収縮と緊張が起こります。筋肉の強い収縮と緊張によって締め付けられる、鈍い痛みが持続します。
「片頭痛」と「緊張型頭痛」では対処法が正反対!
──寝起きの頭痛に見舞われてしまった場合、どのように対処すればいいのでしょうか?
篠原先生:まずは、「片頭痛」か「緊張型頭痛」かを見分けることです。というのも2つは、対処法が正反対。間違った処置をすると、悪化することもあります。
先ほどもお話ししたとおり、片頭痛は「脈打つような痛み」、緊張型頭痛は「締め付けるような痛み」が特徴。また、片頭痛は吐き気を伴うだけでなく、実際に吐いてしまうことがあるのに対し、緊張型頭痛では吐き気があっても吐いてしまうことはありません。頭を振ったり、下を向いたりする姿勢をとると痛みが増悪するのが片頭痛であり、頭を振ったり、下を向いても痛みが増悪しないのが緊張型頭痛という違いがあります。それぞれにあった、以下の対処法を試してみてください。
対処法
●偏頭痛の場合は冷やす
首のうしろにある凹み、「盆の窪」と呼ばれる部分を冷やしましょう。冷やすことで血管が収縮し、痛みが軽減します。
●緊張型頭痛の場合は“温める”
首から肩の辺りを温めてください。体を温め、筋肉の緊張をほぐすことで改善が望めます。
首のうしろにある凹み、「盆の窪」と呼ばれる部分を冷やしましょう。冷やすことで血管が収縮し、痛みが軽減します。
●緊張型頭痛の場合は“温める”
首から肩の辺りを温めてください。体を温め、筋肉の緊張をほぐすことで改善が望めます。
寝すぎ頭痛の予防策は「15〜30分のお昼寝」と「就寝前のホットミルク」
──寝すぎ頭痛の予防策についても教えてください。寝すぎないことが第一かとは思いますが、平日には十分な睡眠がとれず、休日に長く睡眠をとる人も少なくありません。
篠原先生:そうですね。平日も休日も起床や就寝時間を変えず、生活のリズムを維持することが理想ですが、難しい場合には、お昼寝で睡眠時間を補うのも手です。ただし、ここで寝すぎては本末転倒。お昼寝は30分間以内にとどめ、15時より前にすることを心がけてください。人は寝てから30分以上経つと熟睡を始めるため、長いお昼寝は、片頭痛を引き起こしかねません。そして15時以降のお昼寝は、夜の睡眠を妨げてしまいます。
また、睡眠の質を上げることも大切です。睡眠の質が高まれば、短い睡眠時間であっても、多少は疲れが取れやすくなります。そこでオススメなのが、就寝前にホットミルクなどを飲み、体を温めること。体が温まり、さらに心が落ち着くことで、交感神経、副交感神経のバランスが良くなり良質な睡眠が得られるようになります。ちなみに、就寝前のコーヒーはいけませんよ。カフェインにより、神経が興奮し反対に寝つきが悪くなってしまいます。
頭痛は不調のシグナル!思わぬ病が隠れていることも…
──規則正しい生活を心がけるのはもちろん、睡眠の質を高めることが、寝起き頭痛の予防につながるということですね。
篠原先生:そうですね、睡眠の質に注目することは、とても重要です。というのも「しっかり眠ったはずが、頭が痛い」という場合、寝すぎ頭痛だけでなく、意外な症状が隠れていることがあります。睡眠時間とは裏腹に睡眠の質が低く、体が不調を来しているケースです。
その一例が「睡眠時無呼吸症候群」や「ムズムズ脚(あし)症候群」。前者は睡眠時に呼吸が止まってしまうことから、後者は下肢に静止不能の違和感を覚えることから、深い眠りを得づらくなります。特に睡眠時無呼吸症候群に関しては、自覚症状がないことも少なくありません。頭痛はいわば、不調のシグナル。寝起きの頭痛が続くようなら無理に自己解決しようとせず、医師の診断を仰ぐことも大切ですよ。
***
寝すぎによる頭痛を予防するためには、日頃から生活のリズムを崩さないこと、そして睡眠の質を高めることが大切なんですね。また、思わぬ病気が見つかるサインなのかもしれません。ぜひこの機会に、みなさんも自身の睡眠を見直してみてはいかがでしょうか?
篠原先生、ありがとうございました!
「東京頭痛クリニック」院長
篠原伸顕 先生
大学付属病院や民間総合病院で長きにわたって神経内科医として勤務し、治療に従事。その経験を生かし、2015年に新たに開設されることになった頭痛治療を専門としたクリニックに招聘。日本頭痛学会認定の頭痛専門医が頭痛治療にあたる「東京頭痛クリニック」の院長を務める。
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