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寝室の明かりや夜ふかしが近視を進行させる?近視と睡眠の関係を解説

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寝室の明かりや夜ふかしが近視を進行させる?近視と睡眠の関係を解説
近年、子どもの近視が急増しています。スマートフォンやタブレットの普及、学習時間の増加、屋外活動の減少などがその背景にあることはよく知られていますが、最近、医療や教育の現場で注目されているのが「睡眠と近視の関係」です。

今回は、「なぜ睡眠が視力に影響するのか」「どのような対策が近視予防につながるのか」など、近視と睡眠の関係性について、筑波大学 医学医療系眼科 准教授の平岡孝浩先生にお話を伺いました。

そもそも近視とは? そして、なぜ増えている?

「近視とは、眼球の奥行き(眼軸長)が正常よりも長くなってしまい、遠くのものがぼやけて見える状態を指します。とくに学童期から思春期にかけて、眼球が成長しやすい時期に進行しやすく、この時期の生活習慣が大きく影響します」と平岡先生。


近視には遺伝的要因もありますが、最近の研究結果では生活習慣による影響が非常に大きいとされています。
特に問題視されているのが「近業時間(近くを見る作業の時間)」の増加と、「屋外活動時間の減少」です。

「子どもたちは、以前に比べて外で遊ぶ時間が減り、室内でタブレットやスマートフォンを見て過ごす時間が増えています。
デジタル機器での動画視聴やゲーム、ネットの使用時間が長くなっただけではありません。
子どもの学習時間も長くなっていると言われています。

その結果、目に入る光や焦点距離が偏り、眼球の成長がアンバランスになることがわかってきています」(平岡先生)
 

近視が進行するとどうなる?

軽い近視であればメガネやコンタクトで見えるようになりますが、近視が強くなると将来の目の病気につながる可能性が出てきます。

具体的には、以下のような病気になるリスクが高くなります。

・網膜剥離
網膜は、眼球の内側を覆う薄い膜で、光を感じて脳に伝える役割を担っています。
この網膜が、何らかの原因で本来の位置から剥がれてしまう状態を網膜剥離といいます。

・近視性黄斑変性
網膜の中心部にある黄斑がなんらかの原因で障害され、視力低下や視野のゆがみ、中心暗点(中心が見えなくなる)などの症状を引き起こす病気です。
強度近視によって眼軸が伸び、網膜や脈絡膜が薄くなることで、黄斑に負担がかかり、変性が生じます。

・緑内障
視神経が何らかの原因で障害され、見える範囲(視野)が狭くなる病気です。
視神経は目から入ってきた情報を脳に伝える役割を担っています。

・脈絡膜新生血管
本来存在しない異常な血管が、網膜下の脈絡膜から発生し、網膜色素上皮の下や上に伸びてくる病気です。
この異常な血管はもろく、出血や滲出を起こしやすいため、視力低下や視野の歪みなどの原因となります。

ある研究結果では、2050年には、世界で10億人以上が「強度近視」(近視がかなり進んだ状態)になると予測されています。
 

近視と睡眠の関係性

「実は、睡眠と近視の関連性は、現在の研究で非常に注目されている分野です」と平岡先生。

「睡眠が視力に影響する」と聞いて、ピンと来ない方も多いかもしれませんが、国内外の疫学研究では、睡眠環境の明るさや睡眠時間の短さ、そして睡眠の質の低下が、近視のリスク因子となることが明らかになりつつあります。

特に、6時間未満の短い睡眠時間は、強度近視(-6.00D以上)の発症と関連しているとの報告もあり、日々の「眠り方」が、子どもの視力に大きな影響を及ぼしていることがわかっています。
 

なぜ睡眠が近視の進行に影響するのか?

平岡先生によれば、睡眠が近視に影響を与える理由は、主に3つあるといいます。
 

1. 明るい寝室での睡眠はメラトニン分泌を妨げ、網膜を刺激する

「寝るときに部屋の照明をつけたままにしたり、スマートフォンを見ながら寝落ちする習慣は、メラトニンの分泌を妨げます。

メラトニンは眠りの質だけでなく、視覚経路の発達にも関与しているとされており、メラトニンの分泌が抑制されてしまうと目にも悪影響が出る可能性があります。
また、睡眠中に常夜灯などをつけて寝ると、弱い光でも網膜が刺激され、眼軸長が伸びてしまい、近視が進行するという研究結果もあります。
睡眠中はしっかり部屋を暗くして、目を休ませることをおすすめします」(平岡先生)

ある研究では、寝室に照明をつけて寝ていた子どもは、真っ暗な環境で寝ていた子どもよりも、近視の割合が高かったという報告もあるそうです。
 

2. 睡眠不足がホルモン分泌を乱す

「私たちの体は、夜間に成長ホルモンやメラトニンを分泌しますが、これらは身体だけでなく眼球の成長にも関わっています。
睡眠が不足すると、このホルモンバランスが崩れ、眼軸(目の奥行き)が正常に調整されなくなることが考えられます」(平岡先生)

また、睡眠時間が短い子どもほど、日中の活動量が少なく、近距離で目を使う時間が長くなる傾向があることも、近視進行の要因だといいます。
 

3. 夜ふかしが体内リズムを狂わせる

「眼球の成長には、視覚からのフィードバックや、概日リズム(体内時計)が関与しています。
夜ふかしなどで生活リズムが乱れると、この調整メカニズムがうまく働かなくなることがわかっています」(平岡先生)

つまり、夜型の生活を続けていると、眼球の成長サイクルそのものが乱れてしまい、結果的に近視が進行するという仕組みです。
 

子供だけではなく大人も注意が必要

睡眠環境が眼球の成長サイクルに影響を及ぼすことがわかりました。
しかし、大人になってからも睡眠環境による近視が進行する可能性はあると、平岡先生はいいます。

「睡眠環境による近視の進行は、主に発育期(学童〜思春期)の子どもにおいて影響が顕著ですが、成人でも近視の進行や新たな発症(成人発症近視)は確認されています。

現在、成人において睡眠環境と近視発症・進行の関係を明らかにした報告は見当たりません。
しかし、睡眠環境の悪化がメラトニン分泌低下や概日リズムの乱れをもたらし、間接的に近視を進行させる可能性は否定できません」(平岡先生)
 

睡眠環境を整えることも近視予防において重要

では、目の健康のためにどのような睡眠環境を整えればよいのでしょうか?
平岡先生は次のようにアドバイスします。

「寝室はなるべく暗く、スマートフォンやタブレットの光が目に入らないようにしてください。
照明も青白い光ではなく、暖色系のやわらかい光が理想です。
特に寝る前1時間は、デジタル機器の使用を控えるのが望ましいですね」

また、子どもは8〜10時間の十分な睡眠をとることが推奨されています。
「毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるという体内時計のリズムを保つことも、近視予防においては非常に重要です」と語ります。
 

日中の過ごし方も、近視予防のカギになる




「もちろん、睡眠だけではなく、日中の生活習慣も視力に大きく関係しています」と平岡先生。
特に次のような習慣を取り入れることで、近視の進行を抑える効果が期待できるといいます。

・1日2時間以上、屋外で自然光を浴びる
・スマートフォンや読書は30cm以上目から離して使う
・手元を見る作業をするときは、20分に1度は20秒以上、20フィート(約6メートル)ほど遠くを見る「20-20-20ルール」を実践
・バランスの良い食事と、適度な運動を心がける
 

視力を守るのは、日々の暮らしの積み重ね

「近視は進行性の疾患で、一度進んでしまうと元には戻せません。
だからこそ、早めの予防が何より大切です」と平岡先生は強調します。

「夜ふかしやスマートフォン漬けの生活は、将来の目の健康に確実に影響を与えます。
しかし、睡眠環境や生活習慣を少し見直すだけで、近視のリスクを減らすことができるのです」(平岡先生)

今日からできる小さな工夫が、大切な目を守る第一歩になるはずです。

監修者さまプロフィール

筑波大学 医学医療系眼科 准教授

平岡孝浩先生

専門は近視抑制、オルソケラトロジー、コンタクトレンズ、眼軸長・脈絡膜の解析、広視野OCTイメージング、日本および国際的な近視研究プロジェクトに多数参加し、臨床研究と市民啓発の両面で活動。
役職:日本近視学会副理事長,日本コンタクトレンズ学会理事,日本老視学会理事,日本眼光学学会理事,茨城県眼科医会副会長,2026年日眼プログラム委員会委員長。

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