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睡眠と密接に関係!今、急増している「スマホ認知症」とは?

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睡眠と密接に関係!今、急増している「スマホ認知症」とは?
最近、じわじわと認知度を高めている「スマホ認知症」。

スマートフォンの使用を原因に、まるで認知症のような症状が現れるといいます。

認知症のようとは、具体的にどのような症状なのか、スマホの使用がなぜ、そのような症状を招いてしまうのか、そして、改善は可能なのか——。

10万人以上の脳を診断してきた認知症の専門医であり、スマホ認知症への警鐘を鳴らすおくむらメモリークリニック 院長、奥村歩先生にお話をお聞きしました。
 

多くの人が他人事ではない、スマホ認知症とは?


スマホ認知症とは、スマートフォンの過度な使用が引き起こす脳疲労により、生活に支障が出る状態のこと。

そう、スマホ認知症の原因は、脳の疲労なのです。

「情報をインプットし、インプットされた情報を整理し、整理された情報をアウトプットする。人の脳が持つ情報処理の機能は、この3段階から構成されています。

しかし、スマホありきの生活が常態化した現代では、脳にインプットされる情報量はすさまじく膨大です。仕事や勉強のとき以外にもだらだらとスマホを見続けていると、その分だけ、インプットされる情報量も増え、脳がキャパオーバーの状態に陥ります。

すると、情報処理に次ぐ情報処理に疲れ果て、脳の働きが低下。結果として、まるで認知症のような症状が現れてしまう。これがスマホ認知症です」
 

その悪影響は子どもにも…!スマホ認知症の危険性

では、スマホ認知症になると、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか?

「代表的な例としては、知っているはずの人や物の名前が出てこないような、もの忘れの症状です。これは認知症の初期症状とも一致します。

仕事にしても家事にしても、人や物の名前が出てこなければ、作業効率が低下。約束を度忘れてしまうケースもあり、これでは生活に支障を来してしまいます」

会話の最中にもの忘れが生じると対人関係も悪化しかねず、度忘れによって約束をすっぽかすことになれば、信用問題にもかかわります。

また、奥村先生は「スマホ認知症の症状が現れるのは、大人だけではありません」と指摘。スマホの過度な使用は子どもにも悪影響を及ぼし、学力に現れるというのです。

「そのことを示しているのが、仙台市の中学生約2万4000人を対象に行われた、東北大学加齢医学研究所の解析結果です。

家での勉強時間およびスマホの使用時間と数学テストの点数の関係性を調査解析したところ、家で1時間の勉強をし、3時間のスマホ使用をする子どもと勉強もスマホの使用もしない子どもとでは、なんと、後者のほうが点数が高いという結果が得られたのです」

家では勉強をしないにもかかわらず、スマホを使用していない子どもは、家で勉強をしている子どもよりもテストの点数が高い。これは驚くべき結果です。
 

将来にも影響する、スマホ認知症の脳内は“ゴミ屋敷”

日常生活に支障を来し、子どもの学力にも悪影響を及ぼすスマホ認知症。「スマホなしの生活は考えられない」といった人も、けっして侮ってはいけません。

「スマホ認知症に陥った人の脳内は、いわば、ゴミ屋敷のような状態です。

脳疲労によって情報処理の働きが低下してもなお、スマホを見続けているようでは、インプットされてくる情報の処理が追いつかず、脳内はゴチャゴチャの状態に。

ゴミ屋敷のようにゴチャゴチャになった脳を放置していれば、いつか本当の認知症を発症してもおかしくありません。将来的に、今以上に認知症を患う人の割合が増えるのではか、と危惧しています」

一方、奥村先生は「スマホ認知症は病気ではありません」とも指摘。

スマホの過度な使用が引き起こす心身の状態を言語化したものであり、医学的に認められた病名ではないというのです。

「反対に、認知症は医学的に認められた病気です。

多くの場合、認知症は不可逆的、つまりは治療によって病気の進行を遅らせることはできても、発症以前の状態に戻すことはできません。

しかし、スマホ認知症は違います。スマホを使用する時間を制限し、脳疲労を回復させ、ゴミ屋敷の状態になった脳をきれいにすれば、スマホ認知症は改善できるのです」
 

パラレルに悪化する、スマホ認知症と睡眠の関係性

スマホ認知症の改善へのカギを握っているのが、睡眠です。

「なぜなら、スマホ認知症の人の多くが睡眠負債を抱えています。スマホ認知症と睡眠負債はパラレルに悪化、つまりは同時進行的に悪化していると言えます」

睡眠負債とは、まるで借金が積み重なっていくように慢性的な睡眠不足が続き、その負債が蓄積された結果、心身に支障をきたしている状態のこと。休日に長く寝たくらいでは、その負債は返上できません。

「インプットされた情報の整理整頓が行われるのは、主に睡眠中。これは医科学的にも証明されています。

スマホを見続けた人の脳内は、膨大な情報でパンパン。それなのに短時間睡眠を続けていれば、脳が情報を処理する時間まで奪われます。すると、必要な情報も不要な情報も整理されず、認知症のような症状が現れる。

これを改善するにはスマホの使用時間を抑え、同時にしっかりと睡眠をとることです」
 

ブルーライトより怖い、睡眠を阻害する「オレキシン」


しっかりと眠るには、どうしたら良いのか。就寝前のスマホは睡眠の質を低下させます。しっかりと眠るためにも、スマホの過度な使用は禁物なのです。

「スマホの画面から発されるブルーライトがスムーズな入眠を阻害する。かねてから指摘されていることですが、その影響は微々たる程度。

ブルーライト以上に怖いのが、就寝前のスマホ使用がもたらすオレキシンの分泌です」

オレキシンは、不安や恐怖を感じたときに分泌される覚醒物質。覚醒とはつまり、目が覚めること。オレキシンが盛んに分泌されれば、入眠が阻害されるのも当然です。

「だらだらとスマホを見続けていると、その人が求めていなくとも不安を煽られ、恐怖を覚えるような話題やニュースを目にしてしまうものです。

すると、覚醒物質であるオレキシンが分泌されるわけですが、これはスマホを通じたコミュニケーションも同様です。

顔の見えないコミュニケーションから余計なことを考え、不安に陥ることがオレキシンの分泌を招き、眠りづらくなるのです」
 

意識改革と同時に!スマホ認知症を改善する3つのカギ

ベッドに寝転がりながらネットサーフィンを続けた結果、不安を煽られるような話題に遭遇し、怖いもの見たさから延々とスマホを見続けてしまう。

このようなことが思い当たる人も多いはずですが、スマホありきの生活が常態化した昨今。多くの人にとって、スマホの使用時間を抑制することは、そう簡単ではありません。

スマホと上手に付き合い、スマホ認知症を予防するには、どうしたらいいのでしょうか?

「不要なスマホの使用は控え、子どもに対してもその姿勢を示す。こうした意識改革が何よりも重要ですが、同時に覚醒物質であるオレキシンの分泌を抑えることも大切です。

そのためには、セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンの3つがカギになります。これらが盛んに分泌されると、オレキシンの分泌が抑制されるのです」

‖セロトニン
睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンの原料となる物質。セロトニンを盛んに分泌させることがメラトニンの増加につながり、眠りやすくなります。
セロトニンを分泌させるには、朝起きると同時にカーテンを開け、外の光を浴びること。また、一定のリズムで同じ動きを繰り返す、リズム運動も効果的です。
ウォーキングや水泳といった運動はもちろん、雑巾がけや窓拭きのような家事でもOK。一定のリズムを意識しながら20〜30分ほど、体を動かすようにしましょう。

‖ノルアドレナリン
激しい感情や強い肉体作業などにより、人体がストレスを感じたときに分泌される物質。そのため、仕事にしても勉強にしても、日中の一生懸命な活動が分泌を促します。

‖ドーパミン
報酬系ホルモンとも呼ばれ、頑張りに対する達成感や満足感をもたらす物質。
分泌量を増やすには、達成感を得られる何かをすること。例えば、人の役に立つことを率先して行うことが分泌を促します。
 
***
「スマホの過度な使用を控え、よく眠れる生活習慣を心掛けることは、スマホ認知症のみならず、認知症を予防するための策でもあります。

なぜなら、認知症のなかでも代表的なアルツハイマー病の一因は、アミロイドβというタンパク質の一種が脳内に蓄積されてしまうこと。

アミロイドβは“脳内のゴミ”とも呼ばれますが、これが排出されるのは睡眠中です。しっかりと眠る生活を習慣化すれば、アミロイドβの蓄積を防げるのです」

奥村先生の指摘どおり、睡眠とは、肉体疲労を回復させるためだけの行為ではありません。よく眠ることが脳内のゴミ処理を促し、日中のパフォーマンスが向上!

さらにはスマホ認知症の予防だけでなく、生き生きとした未来の自分を築くのです。

 

おくむらメモリークリニック 院長/医学博士

奥村 歩先生

岐阜大学医学部卒業、同大学大学院博士課程修了。アメリカ・ノースカロライナ神経科学センターに留学後、岐阜大学附属病院脳神経外科病棟医長併任講師等を経て、2008年に「おくむらクリニック」を開院。「もの忘れ外来」を中心に10万人以上の脳を診断し、脳神経外科医として認知症やうつ病に関する診察も多く経験。『ボケない技術』(世界文化社)がベストセラーを記録したほか、著書多数。近著は『スマホ脳・脳過労からあなたを救う 脳のゴミを洗い流す「熟睡習慣」』(すばる舎)。

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