2022年11月14日 カテゴリ:眠り

風邪や発熱などによる頭痛や関節の痛みで眠れない!体調不良時に起こる眠りの変化とは?

loading
風邪や発熱などによる頭痛や関節の痛みで眠れない!体調不良時に起こる眠りの変化とは?
インフルエンザなどの発熱を伴う感染症や風邪に気をつけたい季節がやってきました。体調が悪いときはよく眠ることが大切ですが、頭痛や節々の痛みなどの何らかの不快感によって寝つけないことも。

そこで今回は、『青山・表参道 睡眠ストレスクリニック』院長の中村真樹先生に、感染症と眠りの関係について伺いました。重症化を防ぐためには、日頃から“免疫力”を高めておくことが大切だといいます。

異物を感知すると生じる、発熱と深い眠り

―感染症にかかったとき、体の中でどんな変化が起きるのでしょうか?

ウイルスなどの異物が体に侵入すると、それらを排除するために免疫細胞が働き出します。免疫細胞同士が連絡を取り合うための物質「炎症性サイトカイン(IL-1やTNF-α)」が分泌され、体温を調節する自律神経系に働きかけ、体温が上昇します。発熱するのは、体温が高いほうが病原体(細菌)の増殖が抑えられ、かつ免疫細胞が活性化するためです。

体温が高まると同時に、「炎症性サイトカイン」が脳の大脳基底部という場所に働きかけることによって、「ノンレム睡眠」という深い眠りに導く作用が生じます。

―つまり、異物を感知すると分泌される「炎症性サイトカイン」によって、発熱と眠りの両方が同時に生じると。

そうなんです。私たちの体は起きているだけでかなりのエネルギーを使っています。体が異物を排除することに専念するためには、体を休めることが重要です。本来、発熱状態は深部体温が高く眠りが不安定になりやすいのですが、この「炎症性サイトカイン」の睡眠誘導作用によって、体を休ませるようにできているんですね。

眠気は体の防衛反応ですから、体調が悪いときは無理をせず、眠気のままに眠るのが一番です。発熱が落ち着いてくると、今度は「抗炎症性サイトカイン(IL-4, IL-10, TGF-β)」が分泌されるようになります。この抗炎症性サイトカインによって、今度は少し眠りが浅くなるといわれています。

―どのくらいの期間で、普段の眠りに戻っていくものなのでしょうか?

およそ5日間程度で熱がおさまる人が多いと聞きますね。ただ、免疫力が低下している人は長引いてしまうこともあると思います。
 

関節や喉の痛みで眠れないときは?

―体調不良のときは体を横にして眠ることが一番大切。しかし、関節の痛みや頭痛、喉の痛みなど、何らかの不快感で眠れないときはどのように対処したら良いでしょうか?

痛みというストレスを感じると眠りは浅くなります。ケガによる痛みも同様です。そんなときは、痛み止めや風邪薬を服用し、その痛みを一度緩和させて眠りやすい状態にしてあげるといいと思います。

体は眠っている間にメンテナンスをしてくれますから、眠れていないと病気の治りが遅くなってしまう可能性もありますし、眠れないこと自体がより一層ストレスになる場合もあります。上手に薬を活用しながら、まずは体が休みやすい状態を整えてあげるといいでしょう。

―発熱時は汗をかいたり、逆に寒くて震えが止まらなくなったり、体温の変化によって目が覚めてしまうこともありそうです。

体温が上がって汗をかいたと思いきや、体温が下がって寒気が生じることもあります。感染症は熱が上がったり下がったりするのを一定期間繰り返しますから、その都度、服装や布団を1枚増やしたり減らしたりして調整するしかないんですよね。

発汗がひどいときは、のちに汗が冷えないようにこまめに着替えることがおすすめです。
 

日頃の規則正しい睡眠が免疫力を高める



ー異物を感知すると免疫細胞が働いてくれます。そもそも、“免疫力”とはどういうものなのでしょうか?


免疫は風邪だけでなく、がん細胞なども含め異物が体に侵入してきた際に、それらを排除するために働くシステムのことです。入ってきたものが自分の体に害を与えるものだと認識した場合、白血球をはじめとする免疫細胞がその異物にくっついて破壊してくれます。

ーいざというときのために、免疫力をつけておくことが大切ですね。

睡眠不足が続いていると免疫力が落ち、病気になりやすくなるというデータは多く出ています。たとえば2015年のカリフォルニア大学サンフランシスコ校での研究では、成人164名に対して風邪の原因となるウイルスの一種を人為的に点鼻にて感染させた結果、平均睡眠時間が7時間の人にくらべ、5時間未満の人はこのウイルスによる風邪症状の発症リスクが4.5倍、5〜6時間の人は4.2倍、6〜7時間の人は1.7倍という数値が出ました。

ー睡眠時間が6時間未満から一気に発症リスクが高まりますね…!

他にも、インフルエンザワクチン接種後の抗体産生量を比較した研究では、 睡眠時間4時間の人たちは8時間睡眠の人たちに比べて、抗体量が半分以下だったという結果も出ています。

新型コロナウイルス感染症に関しても、睡眠不足である人ほど重症化・死亡リスクが高いことも明らかになっています。

日頃から6時間以上、できれば7時間以上、規則正しく眠ることが免疫力を高めるために大切なことです。冬は特に寒くて換気がしにくいため、これらの感染症にもかかりやすい時季だといわれています。どんな季節でも睡眠は大切ですが、冬は特に意識して健康的に過ごせるといいですね。
***

インフルエンザのワクチン効果や新型コロナウイルス感染症にも深く関わる免疫力。そして、その免疫力を高めておくためには、6時間以上の質のいい睡眠が大切です。

罹患してしまった場合は、無理をせずぐっすりと眠り、あとのことは睡眠中に起こる体のメンテナンス機能にお任せしてみましょう。万が一長引く場合は、医療機関へ相談することがおすすめです。

青山・表参道 睡眠ストレスクリニック院長

中村真樹先生

日本睡眠学会専門医。東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科修了後、東北大学病院精神科で助教、外来医長を務める。その後、睡眠総合ケアクリニック代々木院長を経て、2017年「青山・表参道 睡眠ストレスクリニック」を開院。臨床と研究、両面の実績があり、睡眠に悩む多くの患者さんの治療にあたっている。ビジネスパーソン向けの書籍『仕事が冴える眠活法』(三笠書房)も話題に。
https://omotesando-sleep.com/

この記事を見た人は
こんな商品に興味を持っています

この記事の関連カテゴリ

最近見た商品

この記事に関連するキーワード

風邪や発熱などによる頭痛や関節の痛みで眠れない!体調不良時に起こる眠りの変化とは?

この記事が気に入ったら
いいね!しよう