2020年08月19日 カテゴリ:眠り

1日の2/3は眠っている…?猫と睡眠のお話

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1日の2/3は眠っている…?猫と睡眠のお話
“よく寝る子”が語源とも言われている猫。日がな一日、のんびりウトウトしている猫を見ていると「気持ち良さそう…。生まれ変わったら猫になりたい!」なんて思ってしまいますよね。
なぜ猫はそんなに眠るのでしょうか?その秘密を猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長の山本宗伸先生に教えてもらいました。
 

猫の1日は、ほぼ睡眠?

―猫はいつものんびりと昼寝をしている印象ですが、実際にはどのくらい寝ているのでしょうか?

山本先生:猫は1日に大体10〜15時間寝ているといわれています。特に室内で飼われている猫は1日の2/3、つまり16時間も寝ているんですよ。室内で生活している猫の睡眠時間が長いのは、敵に襲われる可能性がなくのんびりできるからだと思います。人間はまとめて6時間ほど寝ますが、猫はちょこちょこと細切れで寝ています。

―なぜ猫はそんなに長く眠るのでしょうか?

山本先生:それは、猫がネコ科に属する肉食獣だから。草食獣は食べている時間が長く、牛などはずっと草を食べてずっと反芻(はんすう:食べたものを胃から出して、また飲み込むこと)しています。一方肉食獣は、狩りの時間が長く食べる時間は短い。つまり肉食獣は狩りの時間以外は寝てエネルギーを蓄えていて、猫にもその名残があるのです。

━ちなみに、家で猫を飼っている人は、「よく朝方に起こされる」と言いますが、それにも何か理由があるのでしょうか?

山本先生:猫は薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)といって、明け方と夕方に活動的になる動物です。野生の動物にとって狩りをするのに適した時間は明け方。元来猫も狩りをする動物なので、明け方に活動的になるのはとても自然なことなんです。

━なるほど!では早朝に起こされるのは仕方ないことなのですね。そうすると私たちが朝までぐっすり眠ることは難しいのでしょうか…?

山本先生:猫も人間同様、日中の活動が睡眠に影響するようです。特に1歳未満の猫に関しては、日中の活動量を増やしてあげると、ある程度夜の睡眠時間を長くすることは可能だと思います。人間が遊んであげようとしても猫はすぐに飽きちゃうので、猫が自ら楽しむ環境を作ってあげることも大切です。
ほかには、自動給餌器を使って、早朝にタイマーで食事をセットするのも有効です。起こされる心配も減り、主人の睡眠も保たれるのではないでしょうか。
 

寝ている猫の身体の秘密

―人間の睡眠状態にはレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、猫にも睡眠のサイクルはあるのでしょうか?

山本先生:猫の脳波を調べた研究によると、猫にもレム睡眠とノンレム睡眠があるようです。猫は朝方と夕方が活動的なのですが、それ以外は浅い睡眠を繰り返しています。つまり、短い期間でレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返している状態です。

―「猫が寝言を言う」と言う愛猫家の方もいますが、猫も夢を見るのですか?

山本先生:それは確証できませんが、限りなく夢を見ているのではないか?と言われています。身体が動いたり、突然立ち上がったりするので、それは寝ぼけている状態なのではないでしょうか。

―人間の赤ちゃんも細切れに寝て、成長するにつれてまとまって寝るようになります。猫も成長によって睡眠のサイクルは変化するのでしょうか?

山本先生:それはありますね。赤ちゃんの猫は20時間以上、ほぼ1日寝ています。 ただ大人になってもまとまっては寝ないので、少しずつ起きている時間が長くなっていく感じです。また、人間と一緒で年齢を重ねるとまた一回の寝る時間が短くなっていきます。

―人間は睡眠をとることで体力を回復させますが、猫も同じですか?

山本先生:体力を回復、というよりどちらかというと体力の温存という側面が大きいと思います。次の狩りのために、日中の暑い時間にエネルギーを無駄に使わないようにしているのでしょうね。
 

猫の眠りや寝相で何がわかる?

―猫は、よくあくびをしているイメージがあるのですが、どういったときにあくびをしているのですか?

山本先生:猫も眠いときにあくびをしているんだと思います。なので眠たそうにしていたら、眠りの邪魔をしないようにそっとしておいてあげてください。

―猫の睡眠にとって、適した環境を教えてください。

山本先生:人間と一緒で、静かで快適な温度のところですね。猫は冬ならポカポカしている場所、夏なら涼しい場所を自然と見つけます。ただ、光に関しては気にしていないようですが、眩しすぎるときだけは猫も顔を埋めて光をシャットアウトするように眠りますね。あと、高い場所が好きです。高い場所は他の動物がこないので、安心するスポットみたいです。

―たしかに、高いところで寝ているのをよく見かけます。いろんな姿で寝ている猫がいますが、どんな理由で寝相は変化しますか?

レム睡眠時の猫。ゴロンと丸くなって寝ています

山本先生:
以前フランスで行われた研究で、レム睡眠とノンレム睡眠によって猫の寝相が違うことがわかりました。ゴロンと寝転んでいるときはレム睡眠、同じ姿勢をキープしているときはノンレム睡眠なんですよ。「姿勢筋(抗重力筋)」という筋肉の動きに違いがあるようです。またお腹を出して寝ているときは安心している状態、逆に隠れるようにして寝ているときは緊張している可能性があります。

ノンレム睡眠時の猫。姿勢をキープしたまま寝ています

***

元来の特性もあって、これほど長く眠っていたり、朝方に早く起きたりと、さまざまな猫の睡眠事情を知ることができたのではないでしょうか。
のんびり過ごしている猫の姿は、忙しい現代人にとってはうらやましくもあり、なにより心を癒してくれる存在。ペットとして人間と一緒に暮らしている猫は、リラックスしていてたっぷりと眠ることができています。それは猫にとってもうれしいこと。猫ちゃんが過ごしやすい環境を整えてあげてくださいね。
 

Tokyo Cat Specialists院長

山本宗伸先生

東京都出身。授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道に進む。日本大学獣医学科外科学研究室卒。『SyuSyu CAT Clinic』で副院長を務めた後、米国ニューヨークの『Manhattan Cat Specialists』で約1年間研修。2016年『Tokyo Cat Specialists』を開院。国際猫医学会 ISFM所属、日本猫医学会JSFM実行委員。テレビ、雑誌、書籍等でも幅広く猫の医学について紹介している。

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