ADHD(注意欠如・多動症)と睡眠障害の関係性


夜になると、どうしても頭の中のスイッチが切れずに眠れない。朝は疲れが取れず、起きるだけでひと苦労。日中も集中できず、うっかりミスを繰り返してしまう。
もしかするとそれは、ただの「怠け」や「意志の弱さ」ではなく、「ADHD(注意欠如・多動症)」※と睡眠障害が関係しているのかもしれません。
実際に、ADHDのある方の約50〜70%が、何らかの睡眠の問題を抱えているという報告も。
ADHDの特性が睡眠に影響を与え、睡眠不足がさらにADHDの症状を悪化させる--。そんな悪循環に陥っている方も少なくありません。
ADHDと睡眠の深い関係、そしてADHDのある方がより良い睡眠を得るためのヒントについて、日本睡眠学会総合専門医の阪野勝久先生(阪野クリニック 院長)に解説いただきました。
※ADHD:attention deficit hyperactivity disorder
目次
ADHDの分類と特徴、症状
ADHDには主に3つのタイプがあります。不注意優勢型
・周りの音や人の動きなどに気を取られやすく、集中が長く続きにくい
・興味のあることには集中できるが、他のことへの切り替えが苦手
・忘れ物や物をなくすことが多く、予定や約束をうっかり忘れてしまう
・片付けや整理整頓が苦手で、やるべきことの順番を決めるのが難しい
多動・衝動性優勢型
・じっとしているのが苦手で、手足を動かしたり体をそわそわさせたりする
・思いついたことをすぐに口にしたり行動に移したりしてしまう
・順番を待ったり、ルールを守ったりするのが苦手なことがある
・気持ちのコントロールが難しく、イライラしたり感情が高ぶったりしやすい
混合型
・「不注意優勢型」「多動・衝動性優勢型」2つの特徴をあわせ持つ
「これらの特徴は年齢とともに変わることもあります。特に多動性は大人になると外から見えにくくなり、内面的な落ち着きのなさとして感じられることが多いです」(阪野先生)
ADHDの原因
ADHDは性格や内面の問題だと勘違いされやすいそうですが、その原因は脳の働きによるものだそう。「実は、ADHDを発症する詳しい理由は解明されていません。しかし、いろいろな研究から、脳の働き方やしくみ、そして遺伝が関係しているのではないかと考えられています。
特に、脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)という部分の働き方に違いがあるといわれています。
ここは、集中力や感情のコントロールに関係していて、ドーパミンやノルアドレナリンといった情報を伝える物質のバランスが、ADHDのある方では少し異なっていると考えられています」(阪野先生)
ADHDの治療法
治療法としては、以下のような薬物療法と非薬物療法を併用します。「ADHDの治療で使われるお薬は、病気を根本的に治すためのものというより、日々の生活を少しでも過ごしやすくするためのサポートの役割があります。
そのうえで、生活環境を整えたり、行動を見直したりする方法を取り入れることも、症状をやわらげるのにとても大切です。お薬と合わせて、自分に合った工夫を取り入れていくことが、より快適な毎日に近づくポイントです」(阪野先生)
薬物療法
ADHDの治療では、脳の働きをサポートするお薬を使うことがあります。
たとえば、「メチルフェニデート」や「アトモキセチン」というお薬は、集中力や気持ちのコントロールに関係する脳の物質(ドーパミンやノルアドレナリン)のバランスを整えるのに役立ちます。
これらのお薬は、人によって合う・合わないがありますので、医師と相談しながら使い方を決めていくことが大切です。
非薬物療法
ADHDの治療では、お薬を使わない方法も大切です。
たとえば、自分の考え方や行動のくせに気づき、少しずつ見直していく「認知行動療法」という方法があります。これによって、イライラしにくくなったり、失敗を減らしたりする力を育てることができます。
また、自分の特性に合った環境調整も重要です。たとえば、集中しやすい机の置き方や、予定の立て方を工夫することで、毎日が少しずつ楽になることがあります。
生活習慣の工夫
規則正しい生活リズムを維持することで、体内時計を安定させ、集中力の向上を目指します。十分な睡眠を心がけることやストレスを管理すること、適度な運動、朝日を浴びて散歩を行うことも重要です。
ADHDの併存症
ADHDを発症している方は、他の発達特性やこころの病気を併せ持つことがあるそう。「ADHDの方は、学習障害、自閉スペクトラム症、トゥレット症候群などの発達特性や、不安障害、うつ病などのこころの病気が併存していることがあります」(阪野先生)
注目すべきは、睡眠障害の併発です。ADHDをもつ方の50~70%が、何らかの睡眠の問題を抱えているという調査結果もあるそう。
「寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうといった不眠の問題や、体内時計の乱れ、むずむず脚症候群などが、一緒に起こりやすいことがわかっています。
これらの併存症がADHDの症状をより複雑にし、日常生活への影響を大きくしてしまうことがあります。
もし、『自分はADHDなのかも?』と感じたら、医療機関を受診してみましょう。
医療機関を受診することに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の特性を理解することで、自分や周囲との付き合い方がもっと楽になる可能性があります。
また、本人では気づかないこともあるので、受診することで他者からのアドバイスを受けて、総合的に対応できる可能性が広がります。」(阪野先生)
ADHDと睡眠障害の関係性と影響
それではなぜ、ADHDと睡眠障害は併発しやすいのでしょうか?「ADHDのある方は体内時計がズレやすく、時間管理が苦手な傾向があるため、睡眠習慣が不規則になりがちです。
一方、睡眠不足によって注意力散漫になる、感情のコントロールが効きにくくなる、衝動を抑えられなくなるなど、睡眠不足はADHDの症状を強めてしまいます。
この悪循環を断つために、まずは体内時計を整える意識を持つことが大切です」(阪野先生)
ADHDをもつ方が睡眠障害になる理由
慢性的な睡眠不足体内時計が乱れることで、しっかりと頭と体を休める睡眠をとることができず、慢性的な睡眠不足が続いてしまう。
頭の中がごちゃごちゃしてしまう
ADHDのある方は頭が活発に働きやすく、夜になっても考えが止まらないために寝つきが悪くなりやすい。
不規則な睡眠習慣
時間管理が苦手な傾向から、就寝・起床時間が不規則になりやすい。
ADHDと併発する睡眠障害の対策

ADHDと睡眠障害の悪循環を断つカギは、体内時計を整えること。リラックスしてしっかり頭と体を休ませられる環境を作っていくことが大切です。
生活習慣を整える
体内時計を整える基本として、毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝るようにしましょう。
就寝前はリラックスできる環境をつくる
寝室を静かで暗くして、リラックスできる環境にすることも大切です。
スマホやパソコンなどのブルーライトを出す電子機器は、寝る2時間前からは使わないようにしましょう。
就寝前のルーティンとして、読書やストレッチなどリラックスできる活動を取り入れるのも効果的です。
医師と相談して、自分に合った治療を
ADHD治療薬の飲み方も睡眠に影響します。
医師と相談して、自分に合った飲み方を見つけましょう。
リラックス法や認知行動療法なども、頭を休ませるのに役立ちます。
「日中の適度な運動は、眠りの質を高め、ADHDの症状も和らげるのに役立ちます。カフェインやアルコールは睡眠の質を低下させるので、量と時間に気をつけましょう」(阪野先生)
一人で抱え込まず、誰かに相談しよう
自分ひとりでADHDの特性と向き合っていくのはなかなか難しいもの。そんな時は、専門家に相談してほしいと阪野先生は言います。「ADHDかもしれない」と感じたら、まずは一人で悩まずに、お近くの発達障害者支援センターに相談することをおすすめします。
支援センターでは、困っていることを整理し、必要な支援につなげるお手伝いをしてくれます。
その後、ADHDの診療を行っている小児科や精神科で、きちんと診察を受けることが大切です。どこを受診すればいいのか分からないときは、日本小児神経学会のウェブサイトにある発達障害診療医師リストが参考になります」(阪野先生)
「がんばりたいのにがんばれない」「自分はダメな人間だ」と自分を責めてしまったり、人間関係がうまくいかず悩んだときに、それは性格ではなくADHDによる特性だと自覚するのは難しいかもしれません。
しかし、うまくいかない原因をちゃんと理解してこそ、対処法を考えていくことができます。自覚しにくいからこそ、自分はひとりで抱え込まずに、専門家に相談してみてください。
***
おすすめのnishikawa商品
ここからは、眠りやすい環境づくりにおすすめの商品をご紹介します。・<睡眠Labo>Dotsハッピーボックス #おてごろ西川4点セット

ADHDと睡眠障害を併発する理由は、ADHDの方は体内時計が乱れやすいということにありました。
体内と生活のリズムを整えるためには、自分の体や睡眠習慣、生活スタイルにあった寝具を選ぶことが重要です。
寝具は、店舗で実際に寝心地や触り心地を確かめて、ちゃんと自分に合ったものを選びましょう。もしひとつひとつを選んで買い揃えるのが大変だと感じたら、セットで販売している商品を選ぶのも一つの手。
nishikawaでは、マットレスと枕、お手入れのしやすいシーツとピローケースの一式セットを販売中です。
※本記事で紹介する商品の情報は、医師による推薦・広告ではありません。快適な睡眠環境づくりの一助として、ご自身の判断でご活用ください。
▶︎オンラインショップはこちら
▶︎お取り扱い店舗はこちら

日本睡眠学会総合専門医 / 阪野クリニック 院長
阪野勝久先生
愛知医科大学医学部を首席で卒業。愛知医科大学病院の循環器内科を中心に内科の診療に従事。
カナダ・マニトバ州立大学のSt. Boniface総合病院睡眠障害センターに2度留学して、いびき・睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群など子どものいびき・睡眠障害の研究を行う。
2011年に睡眠障害を専門のひとつとするクリニック(岐阜県)を開設し、内科と睡眠障害の専門医の立場から診療を行う。
阪野クリニック公式ウェブサイト
この記事を見た人は
こんな商品に興味を持っています
眠りの関連記事
人気記事ランキング
おすすめ記事
最近見た商品
この記事に関連するキーワード

この記事が気に入ったら
いいね!しよう