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肥満外来の専門医がひも解く「睡眠とダイエット」の関係

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肥満外来の専門医がひも解く「睡眠とダイエット」の関係
食事制限と運動がダイエットの定番ですが、質の良い睡眠をとることも、実は痩身への近道。

その証拠に、ぐっすり快眠するのとしないのでは、なんと、1カ月の消費エネルギーに約6000kcalもの差が出るというのです。

睡眠とダイエットについて教えてくださるのは、肥満外来の専門医であり、ずばり、『ダイエット外来の寝るだけダイエット』の著者でもある佐藤桂子先生。

佐藤先生を指南役に、睡眠とダイエットの関係にフォーカスします。
   

睡眠の質で差が付く、脂肪1kg分ものカロリー消費!

「痩せられない人は、しっかりと眠れていない」——。

佐藤先生は、そう指摘します。人は寝ている間にも基礎代謝を続け、一晩、ぐっすり眠るだけでも約300kcalを消費

この数字を食事に置き換えるとご飯約1.5杯分に相当し、これだけのエネルギーを消費するには約60分間のジョギングが必要です。

「寝ている間にも自然と行われる基礎代謝を活発にするには、成長ホルモンの分泌が欠かせません。しかし、深く眠れている人と眠りが途切れ途切れになっている人を比較すると、睡眠中に分泌される成長ホルモンの量が約3分の1に減ってしまうのです」

成長ホルモンの分泌量が3分の1になれば、一晩に消費できるエネルギー量も同等に減少。ぐっすり眠った場合の消費エネルギーが約300kcalのため、その3分の1は約100kcal。消費エネルギーに約200kcalもの差が生じることになります。

「その差を1カ月分に換算すると、約200kcal×30日間=約6000kcal。1kg分の脂肪を燃焼するには約7000kcalのエネルギーが必要なため、ぐっすり眠れていない人は、1カ月に脂肪約1kg分のカロリー消費を損していることになるのです」

ダイエットの経験のある人なら、体重1kgを落とすのがどれだけ大変か、痛いくらいにわかるはず。しかし、質の高い睡眠を維持できれば、1カ月に1kg減も夢ではないのです。
 

成長ホルモンの分泌を活発にする「3・3・7睡眠法」

では、成長ホルモンを盛んに分泌させるには、どうしたら良いのでしょう?

佐藤先生はダイエットにつながる睡眠法として、「3・3・7睡眠法」を提唱しています。

「最初の3は、眠り始めの3時間は途中で起きることなく、深く眠ること。次の3は、就寝が遅くなったとしても、深夜3時には寝ていること。最後の7は、1日7時間の睡眠をとることを意味しています。こうした眠りが成長ホルモンの分泌につながります」

ぐっすり眠るためには、寝入り端がとても重要。人は深い睡眠と浅い睡眠を繰り返しながら朝を迎えますが、もっとも深い睡眠が訪れるのが寝入り端であり、成長ホルモンが盛んに分泌されるのは、深い睡眠にあるときだからです。

また、深夜3時も眠りが深くなりやすい時間帯。人の体に備わった体内時計は24〜25時間ごとに一周するサーカディアンリズムのほかに、その半分である約12時間ごとに一周するセミサーカディアンリズムがあると言われています。

体内時計の働きは睡眠にも作用しますが、佐藤先生は「どちらのリズムにおいても、深い睡眠に入りやすい時間帯は深夜0時から明け方にかけてです」と指摘。つまり、深夜3時に就寝できていれば、2つの体内時計が同時に深い眠りへと誘ってくれるのです。

そして、1日7時間程度の睡眠をとることは、健康な体を目指すためにも必須。

生活習慣病を例にすると、毎日6〜8時間の睡眠をとっている人に比べ、習慣的に5時間以下の睡眠の人は、その発症率が高まることがわかっています。
 

一生続けられる、ぐっすり快眠は年齢不問のダイエット



佐藤先生が推奨する「3・3・7睡眠法」は、生きるためにあたりまえに必要な睡眠という行為から、痩せやすく、太りづらい体を目指せる方法です。

「過度な運動や食事制限ができるのも、若いうちだけ。特に後期高齢者の場合、断食のようなダイエットは命取りになりかねません。しかし、ぐっすり眠ることなら何歳になってもでき、その快眠が免疫力アップにも、日中のパフォーマンス向上にもつながります」

とは言え、深夜3時までに就寝できたとしても、睡眠の深さを意図的にコントロールすることは非現実的。

では、寝入り端からぐっすり眠るには、どうしたら良いのでしょうか?

「暑かったり寒かったり、寝ている間に鼻づまりや食いしばりが起こっていたり。寝ながらストレスや疲労が生じるようでは深い睡眠は得られず、成長ホルモンの分泌量が減ってしまいます。これを改善するには、心地良く眠れる環境をつくることが重要です」

では、ぐっすり眠るために佐藤先生が提案する、3つの具体策をご紹介しましょう。
 

肥満外来の専門医が教える、快眠環境のための具体策

【1】吸放湿性の高い寝具や寝間着を選び、熱帯夜にはエアコンを使用
寝具と人の間に生じる空間の温度や湿度のことを「寝床内気候」と言い、理想的な温度は32〜35℃、湿度は40〜60%。寒い冬は掛け寝具を重ねることで快適な寝床内気候を保つことができますが、佐藤先生は「問題は暑く、寝苦しい夏です」と指摘します。

夏の寝苦しさを解消するには、暑さを我慢せずに冷房を使用すること。

また、湿度対策には体の汗や蒸れを吸収し、吸い取った湿気を外に放出してくれる、吸放湿性に優れた素材の寝具や寝間着を選ぶことが有効です。その代表例として、綿素材が挙げられます。

夏の温度対策をもっと知りたい方はこちら
夜こそ気をつけたい!「睡眠中の熱中症」とその対策

【2】空気のきれいな状況で眠るには、床上30cm以上がポイント
「私たちは寝ている間にも、無意識に外敵と戦っています」と佐藤先生。

その外敵の1つが、空気中を漂うホコリやダニ。ホコリやダニを吸い込むと鼻づまりや鼻水、くしゃみといったアレルギー症状を引き起こし、眠りが浅くなってしまいます。

空気中のホコリやダニは時間の経過とともに床に落下し、空気がもっとも汚れているのは床から約30cmの高さ。そのため、布団よりもベッドを選び、低めのベッドで寝ている人はマットレスを重ねるなどして、床上30cm以上の高さで眠ることが快眠につながります。

【3】睡眠中の体の負担を軽減するには、オーダーメイドが最適解
眠りが浅くなる要因は、寝具にあることも。

枕の高さが合っていないことを原因に呼吸が浅くなったり、マットレスが柔らかすぎるために腰が沈み込んだり、反対に硬すぎることから体圧が特定の場所に集中したり。これでは体に違和感が生じ、深くは眠れません。

そこで佐藤先生が推奨するのが、オーダーメイドの寝具。
「靴選びの専門家であるシューフィッターに選んでもらった靴を履くと、疲れや痛みなく、長く歩けます。それは寝具も同様です」

人の体型は千差万別。だからこそ、“自分にぴったり”が快眠を叶えます。

***

「ご自身が理想とする体型を目指し、食事制限や激しい運動を頑張ったことのある人もいることでしょう。しかし、健康的に理想の体型を維持するには、続けられることが大切。また、無理なダイエットを原因に心身が疲弊すれば、それは本末転倒です」

毎日の快眠が習慣化すれば、おのずと就寝中の基礎代謝が活発に。快眠が日中の表情にも表れ、心身共に晴れやかな印象を育めるはずです。
 

さとうヘルスクリニック 院長
佐藤桂子先生

30年で3万人、減量総重量3トンの肥満治療を行った内科医師。日本肥満学会、日本内科学会、日本糖尿病学会、日本プライマリケア連合会所属。完全予約制のコンサルティングにより、保険診療では難しい個人指導とフォローアップを行うかたわら、予防医学、生活習慣病、アンチエイジングなどの啓蒙活動を行う。著書に出版から半年で10万部を記録した『ダイエット外来の寝るだけダイエット』(経済界)などがある。http://satohealthclinic.com/

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