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高血圧の時の寝姿勢とは?睡眠と血圧の関係から対策まで解説

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高血圧の時の寝姿勢とは?睡眠と血圧の関係から対策まで解説
自覚症状なく発症し、さまざまな病気の原因となることから「サイレントキラー」とも呼ばれる高血圧。日本には約4300万人もの高血圧患者がいるという調査結果もあるほどです。そして寒さの厳しい冬は、特に血圧が上昇しやすい時期!

そこで今回は、高血圧治療の名医である“ミスター血圧”こと渡辺尚彦先生が、血圧と睡眠の関係から冬に血圧が上昇しやすい理由、今日からでも実践できる高血圧対策まで、ズバッと解説。高血圧に悩む方はもちろん、「私は低血圧だから」なんて方にも、役立つハウツーが満載です!
 

健康な人のカラダは、夜間に血圧が下がる


高血圧とは、病院や検診施設などで計測した血圧値が、上の血圧(収縮期血圧)が140mmHG以上、もしくは下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の状態を指します。ただし、血圧値は常に一定ではなく、人の活動状況により1日を通して変動しています。

では、健康な人の場合、血圧はどのような変動をたどるのでしょう?

「血圧は朝起きてから少しずつ上昇を始め、盛んに活動する日中に高くなります。そして日が暮れるにつれて下降していき、睡眠中はさらに下降。つまり健康な状態であれば、睡眠中は血圧が低下するのです」(渡辺先生)

睡眠中に血圧が低下する理由は、副交感神経にあるそう。人体の休息を司る副交感神経が優位に働くことにより、人はぐっすり眠ることができます。副交感神経が優位に働いているあいだは血管が拡張するため、血圧が低下するのです。

高血圧とはそもそも、血管を流れる血液の圧力が高い状態を指します。そこで血管を、水が流れるホースに例えてみましょう。ホースの先端を指でふさぐと、出口をなくした水でホースの内部はパンパンとなり、ホース内の水圧が上昇(血圧が上昇)します。反対にホースの太さが拡張したとしたら、どうでしょう?水は通常時以上に、スイスイと流れる(血圧が低下する)はずです」(渡辺先生)

この“ホースと水”の関係を“血管と血液”になぞらえれば、副交感神経が優位に働き、血管が拡張した睡眠時には血液がスイスイと流れ、結果的に血圧が低下するというわけです。
 

寝ている間の高血圧は、睡眠時無呼吸症候群の可能性も…!?


本来、副交感神経は夜になると優位に働き始めますが、睡眠中に何度も目が覚めてしまったり、睡眠不足が続いてしまうと、自律神経が乱れ、夜になっても交感神経が優位に働き続けるケースがあります。つまりは、深夜には下がるはずの血圧が低下せず、慢性的な高血圧を引き起こす危険があるのです。

そのことからも、高血圧の対策として質の良い睡眠を心がけることが大切だと言えます。人によって個人差はありますが、最低でも6時間〜7時間の睡眠は必要とされていて、しっかりと睡眠をとることで血圧は下降する傾向がみられるのだそう。ですが、寝だめや過眠はNG。自律神経のバランスを乱してしまうからです。

また、体の不調によって満足に眠れない状態が血管の拡張をさまたげるケースもあります。その代表例が、睡眠時無呼吸症候群です。

「睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まってしまう状態が、何度も繰り返される病気。無呼吸が繰り返されることから、自覚はなくとも十分な睡眠がとれず、交感神経が優位に働く状態となります。交感神経は日中の活動を司る神経のため、体内にドクドクと、多くの血液を送り出そうとします。ホース内に大量の水が流れ、水圧が上がるのと同じ状態です」(渡辺先生)
 

睡眠時の高血圧の対策は「横に向きに寝る」こと!


睡眠時無呼吸症候群が重症化した場合、医師の治療を受けることが欠かせませんが、渡辺先生によると試すべき対策があるそう。そして、この対策を実践することで、高血圧まで解消されるケースがあるのだとか。

その対策とは、「横向きに寝る」こと!

一般的に仰向けで眠る人が多いかと思いますが、仰向けでは空気の通り道である気道が閉塞しがちになり、無呼吸の状態を招きやすいというのです。ちなみに睡眠時無呼吸症候群は太めの体型の人に多く発症するイメージがありますが、そうとも限りません。




生まれつき気道の狭い人やアゴが小さい人にも睡眠時無呼吸症候群は発症しすいとのこと。「眠っているはずなのに疲れが取れない」「高血圧が気になって」という人は、まずは睡眠時無呼吸症候群を疑って、横向きの寝姿勢を意識してみるのも手かもしれません。
 

冬の天敵!ヒートショックを防ぐには?


血圧は「活動状況により1日を通して変動する」というお話をしましたが、気候にも大きな影響を受けます。特に注意すべきなのが冬。

寒いと血管が収縮し、血圧が高くなる傾向にあるのです。人のカラダは数十分で寒さに慣れ、血圧も安定していきますが、怖いのが急な寒暖差です。暖房の効いたリビングから寒い脱衣所へ。さらに冷えた浴室へと入り、熱い湯船に浸かる――。冬になると注目を集め、時には死の危険をもはらむヒートショックという現象も、急な寒暖差が血圧の乱高下を招くことで引き起こされるのです」(渡辺先生)

では、どうすれば血圧の乱高下を招くことなく、冬を乗り切れるのか。できる限り、カラダに与える寒暖差を抑制すればいいのです。渡辺先生によると、急な寒暖差は入浴時はもちろん、就寝時も注意すべきとのこと。

「ヒートショック発症の代表例であるお風呂の場合、脱衣所に暖房を設置してつけることが挙げられますが、これは就寝時にも同様です。リビングと寝室が分かれた間取りの場合、事前に寝室をあたためてから、寝室に移動するのが正解です。

これは、ヒートショックを防ぐためはもちろん、『寒さでなかなか寝つけない』というときにも有効でしょう。

また、首に通っている血管は、動脈と静脈が交わる動静脈吻合(ふんごう)と言われ、そこををあたためると血管が拡張し、血圧が低下します。首の上には頭があるので、ここをあたためるだけで、急な血圧上昇による脳出血や脳梗塞の対策になります。そのため、お布団をすっぽり首までかぶるのが理想的です」(渡辺先生)

就寝時をはじめ、「外出時にはマフラーを巻き首元をあたためる」「帰宅時は室内をまずあたためてからコートを脱ぐ」など、とくに冬はさまざまなシーンで急な寒暖差への対策が必要なのだそうです。
 

低血圧さんも、家庭血圧の測定を習慣に!




睡眠と高血圧や寒さと高血圧の関係についてご紹介しましたが、「低血圧の人でも油断は禁物!」と、渡辺先生。特に若い女性には低血圧の人が多く、高血圧に対する意識が低い傾向にありますが、「女性ホルモンが血管の拡張を招くため、女性ホルモンが減少し始める40代以降から、高血圧になる女性が少なくありません」と、指摘します。

「高血圧を予防・改善するには、質の高い睡眠を維持したり、塩分過多の食生活にならないよう気をつけたり、生活習慣を見直すことが大切ですが、日常的に家庭血圧を測定することも重要です。血圧測定を習慣化する意識の高さが生活習慣の見直しにつながるだけでなく、体調不良で医療機関を受診するときにも、適切な診断を受けやすいんですよ」(渡辺先生)

と言うのも、人のカラダはとっても繊細!お医者さんにかかるだけで緊張状態となり、医師の前で血圧を測定すると、その緊張感から異様に血圧が上昇する「白衣高血圧」という状態が起こることもあるとか…。高血圧のみならず、ほかの症状で医療機関を受診するときのためにも、家庭血圧の測定も始めてみてはいかがですか?
 
***

血圧と睡眠時間を日常的に記録しておくことで、急に血圧が高くなったときに「この日はそういえば睡眠不足だった」とその関係性に気づくことができたり、自分ではわからない睡眠時症候群という病を発見できるきっかけになるのではないでしょうか。まずは、睡眠の質を見直すことや今回ご紹介した対策を試してみてくださいね。

   

医学博士

渡辺尚彦 先生

“ミスター高血圧”の異名をとる高血圧治療の名医。1987年8月から連続携帯型血圧計を装着。24時間血圧測定を続け、血圧自己測定の世界記録を更新中。自らの体験や調査・研究に基づいた降圧治療で知られる。分かりやすく軽妙な解説でも人気を博し、著書の執筆やメディアへの寄稿のほか、テレビやラジオ出演も多数。近著は『血圧の常識のウソ・ホント 自分で血圧を下げる!究極の降圧ワザ50』(洋泉社)。

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