カテゴリ:眠り
一夜漬けはデメリットだらけ!受験生に必須の「朝型生活のススメ」
本格的に受験シーズンが到来。試験当日に向け、寝ずに試験勉強を頑張っている人も多いのではないでしょうか。しかし、追い込むあまりに睡眠時間を削っては、かえって逆効果かも!?
そこで今回は、受験生に向けた「理想の睡眠」にフォーカス。教えてくれるのは、臨床心理学の観点から睡眠問題を研究する東京家政大学准教授・岡島義先生です。
睡眠は学習した内容を定着させるためにも、試験当日に成果を発揮するためにも非常に大切。受験生やそのご家族はもちろん、「ここぞ!」というタイミングを控えたビジネスパーソンも必見です。
「確固たる答えは出ていませんが、海外で推奨されている受験生に必要な睡眠時間の平均は、7〜9時間。6〜7時間では日中に眠気を感じやすいはずです。また、睡眠には『記憶の整理・定着』という重要な役割があります。睡眠時間を削るような学習のスタイルでは、せっかくの勉強も身につきづらいのです。これは各国の研究でも実証されています」
その一例がハーバード大学で行われた系列タッピング試験だそう。モニターに表示された数字を瞬時に、正確に入力するという試験です。練習として行った試験のスコアを基準に、練習後に睡眠をとってから本番に臨んだグループと睡眠をとらずに臨んだグループのスコアの増幅率を比較したところ、前者のほうが大きくスコアを伸ばしたというのです。
また、睡眠をとらずに臨んだグループに関しても、一度目の試験後に睡眠をとり、二度目の試験を行ったところ、スコアがぐんと向上。睡眠によって練習、つまりは学習した内容が定着したことを示唆しています。
そう考えると、試験前日の一夜漬けは要注意。試験の直前に知識をたたき込むことから、多少の効果はあるかもしれません。しかし、学習した内容の大半は定着せずに忘れ去られてしまいます。徹夜で試験に臨もうものならさらなる問題が現れます。
「なぜなら連続覚醒時間が17時間を超えると、酩酊状態と同程度のパフォーマンスしか出せなくなるからです。一睡もせずに勉強して試験に臨んだとしても本来の力を発揮することは難しく、試験中に居眠りをしてしまう恐れすらあります。受験生には致命的です」
「私が教えている大学の学生にも伝えていることですが、夜型から朝型生活へのシフトをおすすめします。入学試験は多くの場合、午前中から始まります。試験の時間帯に本来のパフォーマンスを発揮するには、日常から朝型生活を送る必要があるのです」
学生に向け、岡島先生が提唱しているのが「1週間チャレンジ」。1週間をかけ、夜型から朝型生活へとシフトしていくメソッドです。
その方法とは、まずは1週間、起きる時間を一定にすること!受験生にとって適切な睡眠時間が7〜9時間であることを考えれば、少なくとも深夜0時には就寝し、朝7時に起きるような生活が理想的です。
夜型生活の人にとって、いつもより早く寝るのは簡単ではありません。なかなか寝付けないことから睡眠時間が不足し、日中に眠気が生じるはずです。それでも、どうにか奮起!起きる時間を一定にすることで眠気が蓄積され、自然と早い時間に眠れるようになります。そして、1週間後には早寝早起きのリズムに体が順応する、という理論です。
「朝日を浴びると体全体の統制を司る中枢時計がリセットされ、朝食を食べると消化吸収を司る内蔵時計がリセットされます。どちらか片方ではなく、中枢時計と内蔵時計の両方をリセットさせることが朝型生活にシフトするためのカギです。ふたつのリセット時間がずれると、体内時計がいまいち整いません。」
目覚めが悪いと食事を摂る気も起きず、ついつい朝食を抜いてしまう人は少なくありません。しかし、最初の食事がお昼ご飯となると、内蔵時計の目覚めもお昼になってしまいます。また、朝食を英語の観点から捉えると「朝食とは朝の食事ではなく、絶食後の食事を意味します。これが非常に重要です」と岡島先生。
「朝食は英語で“breakfast”。これは『絶食(fast)を壊す(break)』ということです。朝食は本来、夜の睡眠を経たあとに摂取するもの。夜7時に夜ご飯を食べ、朝7時に朝ご飯を食べた場合、12時間の絶食が生じます。この長い絶食後に食べた食事が内臓を大きく働かせ、体を目覚めさせるのです」
そうして中枢時計も内蔵時計もしっかりリセットすれば、目覚め後はすっきり!日中のパフォーマンスが向上し、集中力もアップします。また、午前中の集中力は13時くらいまで継続するそう。そのため、ランチタイムはちょっと遅めでもOK。午前中の勉強は「正午になったから」と切り上げず、12時30分〜13時くらいまで続けるのがおすすめです。
昼食後に眠気が生じた場合には、お昼寝をするのも効果的。理想の睡眠時間を確保し、朝型生活を送れていたとしても、ひとつの生理現象として午後の眠気は訪れます。そうしたときには無理に抗わず、仮眠をとるのがいちばんです。
「ただし、お昼寝は15〜20分程度が鉄則。30分以上寝ると『睡眠慣性』が起こり、目覚めていても眠気が持続してしまうからです。20分程度なら慣性は生じず、短い仮眠でも記憶の定着に一定の効果があります。コーヒーに含まれるカフェインは摂取から15分後に作用し始めるため、お昼寝前にコーヒーを飲むのもおすすめです」
岡島先生が推奨する朝型生活にシフトすることは、夜眠くなる生活にシフトすることとイコール。つまりは、睡眠時間を確保しやすくなります。十分な睡眠を確保することは学習内容の定着にも重要ですが、実はもうひとつ、受験生の天敵に打ち勝つことにも作用します。
「受験生の天敵とは風邪。毎日7時間以上の睡眠をとっている人と5〜6時間睡眠の人とを比較すると、後者はウイルスへの感染率が4倍にも上ることが明らかになっています。十分な睡眠をとれている人は風邪を引きにくく、寝不足の人は風邪を引きやすいのです」
それを知ると、より睡眠の重要性が理解できるはず!そして、朝型生活を定着させ、持続させるためには規則正しい生活が欠かせません。これには家族のサポートも必要になりますが、特に注意が必要なのが「早く寝なさい!」の一言だそう。
「実は思春期を迎える中学生から、徐々に夜に眠たくなる時間が後退していきます。これは発達上の生理現象であり、仕方のないことです。それを知らずに『早く寝なさい!』と叱咤されては、プレッシャーになる可能性も。眠ろうにもなかなか寝付けず、焦りにつながるお子さんもいます」
とは言っても、夜更かしはNG。受験をする学生自身が睡眠の重要性を理解し、家族のさりげないサポートが必要になります。一緒に生活する家族が夜更かしをしていると、ついつい引きずられてしまうもの。「寝なさい!」の言葉ではなく、家族も深夜12時ごろには寝室に行くような工夫が必要です。
ちなみに、小学生にとっての適切な睡眠時間は9〜11時間。眠たくなる時間の後退も生じておらず、本来なら、夜の9時、10時くらいには眠たくなっているはずです。そのため、「小学生の寝不足は明らかに環境のせいです」と岡島先生。家族の形によって一概には言えませんが、小学生は特にご家族が環境の調整を行うことが不可欠です。
「手軽にできる環境調整のひとつに『部屋の照明を変える』ことが挙げられます。日本の住まいに一般的な蛍光灯は青い光を含み、これが睡眠には悪影響。我が家ではすべての部屋の照明をオレンジ色にしていますが、眠りのことを考えるなら、少なくとも寝室はオレンジ色の照明にすることをおすすめします」
「朝型生活を送り、きちんと睡眠時間を確保する。これがいかにパフォーマンス向上につながるか、実感することが大切です」と岡島先生。
先生ご自身もかつては夜型の生活を送り、お子さんの誕生を機に朝型生活にシフト。寝かしつけと同時に夜9時に就寝し、朝6時に起きる生活を送ったところ、驚くほどのパフォーマンス向上を実感できたといいます。
「日常的なパフォーマンスを上げ、入学試験当日に成果を発揮するためには、緊張しないこと。そして、緊張しないためにはこれまでがんばってきた過去の自分を信じることです。生活習慣を含めたご自身の取り組みに自信を持てたなら、大きな気持ちで受験に臨めますよ」
岡島先生の言葉をエールに、睡眠を大切に。受験生の皆さんに幸が訪れることを、心からお祈りしています。
そこで今回は、受験生に向けた「理想の睡眠」にフォーカス。教えてくれるのは、臨床心理学の観点から睡眠問題を研究する東京家政大学准教授・岡島義先生です。
睡眠は学習した内容を定着させるためにも、試験当日に成果を発揮するためにも非常に大切。受験生やそのご家族はもちろん、「ここぞ!」というタイミングを控えたビジネスパーソンも必見です。
徹夜の一夜漬けでは、パフォーマンスが酩酊レベルに!
受験生にとって適切な睡眠時間とは、そもそもどのくらいなのでしょうか。インターネット上では6〜7時間程度という情報が散見されますが、岡島先生によるとそれでは十分とは言えないようです。「確固たる答えは出ていませんが、海外で推奨されている受験生に必要な睡眠時間の平均は、7〜9時間。6〜7時間では日中に眠気を感じやすいはずです。また、睡眠には『記憶の整理・定着』という重要な役割があります。睡眠時間を削るような学習のスタイルでは、せっかくの勉強も身につきづらいのです。これは各国の研究でも実証されています」
その一例がハーバード大学で行われた系列タッピング試験だそう。モニターに表示された数字を瞬時に、正確に入力するという試験です。練習として行った試験のスコアを基準に、練習後に睡眠をとってから本番に臨んだグループと睡眠をとらずに臨んだグループのスコアの増幅率を比較したところ、前者のほうが大きくスコアを伸ばしたというのです。
また、睡眠をとらずに臨んだグループに関しても、一度目の試験後に睡眠をとり、二度目の試験を行ったところ、スコアがぐんと向上。睡眠によって練習、つまりは学習した内容が定着したことを示唆しています。
そう考えると、試験前日の一夜漬けは要注意。試験の直前に知識をたたき込むことから、多少の効果はあるかもしれません。しかし、学習した内容の大半は定着せずに忘れ去られてしまいます。徹夜で試験に臨もうものならさらなる問題が現れます。
「なぜなら連続覚醒時間が17時間を超えると、酩酊状態と同程度のパフォーマンスしか出せなくなるからです。一睡もせずに勉強して試験に臨んだとしても本来の力を発揮することは難しく、試験中に居眠りをしてしまう恐れすらあります。受験生には致命的です」
夜型から朝型生活へとシフトする「1週間チャレンジ」
受験勉強と部活動を両立していたり、下校後に塾や予備校に通っていたり。プライベートの時間を確保するには夜更かしをするしかなく、そもそもの生活が夜型の傾向にある近年の学生たち。しかし、岡島先生の指摘を思えば、睡眠時間を削るような生活スタイルは推奨できません。「私が教えている大学の学生にも伝えていることですが、夜型から朝型生活へのシフトをおすすめします。入学試験は多くの場合、午前中から始まります。試験の時間帯に本来のパフォーマンスを発揮するには、日常から朝型生活を送る必要があるのです」
学生に向け、岡島先生が提唱しているのが「1週間チャレンジ」。1週間をかけ、夜型から朝型生活へとシフトしていくメソッドです。
その方法とは、まずは1週間、起きる時間を一定にすること!受験生にとって適切な睡眠時間が7〜9時間であることを考えれば、少なくとも深夜0時には就寝し、朝7時に起きるような生活が理想的です。
夜型生活の人にとって、いつもより早く寝るのは簡単ではありません。なかなか寝付けないことから睡眠時間が不足し、日中に眠気が生じるはずです。それでも、どうにか奮起!起きる時間を一定にすることで眠気が蓄積され、自然と早い時間に眠れるようになります。そして、1週間後には早寝早起きのリズムに体が順応する、という理論です。
早起きを定着させるカギ!朝食の重要性を知る「breakfast」の意味
岡島先生が提唱する「1週間チャレンジ」ですが、成功させるにはいくつかのポイントがあります。そのひとつが体をしっかり目覚めさせること。体を目覚めさせるには朝日を浴び、さらには朝ご飯をきちんと食べることが重要です。「朝日を浴びると体全体の統制を司る中枢時計がリセットされ、朝食を食べると消化吸収を司る内蔵時計がリセットされます。どちらか片方ではなく、中枢時計と内蔵時計の両方をリセットさせることが朝型生活にシフトするためのカギです。ふたつのリセット時間がずれると、体内時計がいまいち整いません。」
目覚めが悪いと食事を摂る気も起きず、ついつい朝食を抜いてしまう人は少なくありません。しかし、最初の食事がお昼ご飯となると、内蔵時計の目覚めもお昼になってしまいます。また、朝食を英語の観点から捉えると「朝食とは朝の食事ではなく、絶食後の食事を意味します。これが非常に重要です」と岡島先生。
「朝食は英語で“breakfast”。これは『絶食(fast)を壊す(break)』ということです。朝食は本来、夜の睡眠を経たあとに摂取するもの。夜7時に夜ご飯を食べ、朝7時に朝ご飯を食べた場合、12時間の絶食が生じます。この長い絶食後に食べた食事が内臓を大きく働かせ、体を目覚めさせるのです」
そうして中枢時計も内蔵時計もしっかりリセットすれば、目覚め後はすっきり!日中のパフォーマンスが向上し、集中力もアップします。また、午前中の集中力は13時くらいまで継続するそう。そのため、ランチタイムはちょっと遅めでもOK。午前中の勉強は「正午になったから」と切り上げず、12時30分〜13時くらいまで続けるのがおすすめです。
昼食後に眠気が生じた場合には、お昼寝をするのも効果的。理想の睡眠時間を確保し、朝型生活を送れていたとしても、ひとつの生理現象として午後の眠気は訪れます。そうしたときには無理に抗わず、仮眠をとるのがいちばんです。
「ただし、お昼寝は15〜20分程度が鉄則。30分以上寝ると『睡眠慣性』が起こり、目覚めていても眠気が持続してしまうからです。20分程度なら慣性は生じず、短い仮眠でも記憶の定着に一定の効果があります。コーヒーに含まれるカフェインは摂取から15分後に作用し始めるため、お昼寝前にコーヒーを飲むのもおすすめです」
受験生を思う「早く寝なさい!」は意外にも逆効果?
岡島先生が推奨する朝型生活にシフトすることは、夜眠くなる生活にシフトすることとイコール。つまりは、睡眠時間を確保しやすくなります。十分な睡眠を確保することは学習内容の定着にも重要ですが、実はもうひとつ、受験生の天敵に打ち勝つことにも作用します。
「受験生の天敵とは風邪。毎日7時間以上の睡眠をとっている人と5〜6時間睡眠の人とを比較すると、後者はウイルスへの感染率が4倍にも上ることが明らかになっています。十分な睡眠をとれている人は風邪を引きにくく、寝不足の人は風邪を引きやすいのです」
それを知ると、より睡眠の重要性が理解できるはず!そして、朝型生活を定着させ、持続させるためには規則正しい生活が欠かせません。これには家族のサポートも必要になりますが、特に注意が必要なのが「早く寝なさい!」の一言だそう。
「実は思春期を迎える中学生から、徐々に夜に眠たくなる時間が後退していきます。これは発達上の生理現象であり、仕方のないことです。それを知らずに『早く寝なさい!』と叱咤されては、プレッシャーになる可能性も。眠ろうにもなかなか寝付けず、焦りにつながるお子さんもいます」
とは言っても、夜更かしはNG。受験をする学生自身が睡眠の重要性を理解し、家族のさりげないサポートが必要になります。一緒に生活する家族が夜更かしをしていると、ついつい引きずられてしまうもの。「寝なさい!」の言葉ではなく、家族も深夜12時ごろには寝室に行くような工夫が必要です。
ちなみに、小学生にとっての適切な睡眠時間は9〜11時間。眠たくなる時間の後退も生じておらず、本来なら、夜の9時、10時くらいには眠たくなっているはずです。そのため、「小学生の寝不足は明らかに環境のせいです」と岡島先生。家族の形によって一概には言えませんが、小学生は特にご家族が環境の調整を行うことが不可欠です。
「手軽にできる環境調整のひとつに『部屋の照明を変える』ことが挙げられます。日本の住まいに一般的な蛍光灯は青い光を含み、これが睡眠には悪影響。我が家ではすべての部屋の照明をオレンジ色にしていますが、眠りのことを考えるなら、少なくとも寝室はオレンジ色の照明にすることをおすすめします」
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「朝型生活を送り、きちんと睡眠時間を確保する。これがいかにパフォーマンス向上につながるか、実感することが大切です」と岡島先生。
先生ご自身もかつては夜型の生活を送り、お子さんの誕生を機に朝型生活にシフト。寝かしつけと同時に夜9時に就寝し、朝6時に起きる生活を送ったところ、驚くほどのパフォーマンス向上を実感できたといいます。
「日常的なパフォーマンスを上げ、入学試験当日に成果を発揮するためには、緊張しないこと。そして、緊張しないためにはこれまでがんばってきた過去の自分を信じることです。生活習慣を含めたご自身の取り組みに自信を持てたなら、大きな気持ちで受験に臨めますよ」
岡島先生の言葉をエールに、睡眠を大切に。受験生の皆さんに幸が訪れることを、心からお祈りしています。
岡島 義 先生
東京家政大学 人文学部 心理カウンセリング学科 准教授。1979年東京都生まれ。2003年、日本大学文理学部心理学科卒業。2008年、北海道医療大学大学院心理科学研究科博士課程を修了、博士(臨床心理学)取得。『睡眠総合ケアクリニック代々木』主任心理士、早稲田大学人間科学学術院助教を経て、2018年より現職。公認心理師、臨床心理士、認知行動療法師、産業カウンセラーとして睡眠障害や気分障害、不安症に苦しむ人への支援を行いながら、認知行動療法の効果を高めるための研究を続ける。近著に『1時間多く眠る!睡眠負債解消法』(さくら舎)。
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