カテゴリ:眠り
「猫の睡眠時間は何時間?」「猫は寝床をどう選んでる?」猫専門病院の獣医師に聞いた、猫の睡眠
猫が心地良さそうに眠っている姿は、見ている私たちも穏やかな気持ちになるものです。
日向ぼっこをしたり、布団の中に潜ったり、床に寝そべってみたり。猫はさまざまな寝方をしますが、どのように寝床を選んでいるのでしょうか?また、猫の睡眠に関する病気も気になるところ。
猫専門病院「猫の診療室モモ」の院長を務める獣医師の谷口史奈先生に、詳しく伺いました。
目次
猫は夜行性ではなく、薄明薄暮性の動物
猫の平均睡眠時間は1日12〜16時間。自然界の中での危険をすぐに察知できるよう、「浅い眠りを長時間」というのが猫の睡眠サイクルの基本です。飼い主が近づいたらすぐに目を覚ますのは、野性時代の習慣にあるといわれています。
「子猫や老猫は、成猫よりもたくさん寝ます。
老猫は1日のほとんどを寝て過ごしますし、子猫は遊んでいるかミルクを飲んでいるか、または寝ているかのどれかですね。人間の子どもが遊び疲れたらぐっすり眠るのと一緒で、子猫は成猫よりも熟睡する傾向があります」
また、猫は夜行性とよく勘違いされますが、正確には薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)の動物です。薄明薄暮性とは、主に明け方と夕暮れの時間帯に活発に行動する性質のこと。
朝の4時に猫が起こしにきたり、「夜の大運動会」と呼ばれるように夜中や朝方にドタバタと走り回ったりするのは、猫の薄明薄暮性の性質からといえます。
猫も飼い主も安心して眠るためには、時には「無視」することも大切
「猫を飼うということは、そもそも生活リズムが違う生き物同士が一緒に生活を送るということなんです」と谷口先生。
夜中や朝方に野生のスイッチが入ってしまうと、人間がいくら止めようとしても難しいそうです。
その場合は、夜間は猫が寝室に入ってこられないようにしたり、明け方起こしに来ても無視をして「人はいま寝ている時間なんだ」と猫に理解してもらう必要があります。
「一度相手にしてしまうと、要求がどんどんエスカレートしていきます。猫と人が心地よく暮らし、安心して眠るためにはお互い譲歩する必要があります。
いくらかわいいとはいえ猫を甘やかしすぎたり、逆に一緒に寝ることを強要したりすることはNG。一緒に暮らすものとして共生する意識を持つことが、お互い心地よく暮らすためのコツです」
猫は寝床をどう選んでる?快適な室温と注意点
猫は昼間は日向ぼっこをしたり、夜は飼い主の足元で寝たりと、時間帯や季節によっても寝る場所が変わることがあります。猫はどのように自分の寝床を選んでいるのでしょうか?「『猫が寝ている場所は、家の中で一番心地いいところ』とよく聞きますよね。日当たりや風向き、湿度や温度など、さまざまな条件があると思いますが、その猫にとっていま一番快適な場所を見つけているのだと思います」
猫にとって理想的な室温は20〜28° 、湿度は50〜60%。人間にとって快適な室温と大きな差はありません。
「家全体に空調があるに越したことはありませんが、設計上や経済上なかなかそうはいきませんよね。元気な成猫であれば、自分で快適な場所を選んで移動してくれるので、そこまで室温を厳密にしなくても大丈夫です。
わざわざ空調がついていない部屋で過ごす猫もいますが、それは何かしらの要因でその場所を気に入って自分で選んでいるわけです。基本的には、無理に別の場所に移す必要はありません」
注意すべきは、子猫や老猫の場合です。
子猫は、遊び疲れて寒い廊下で急に寝てしまったり、老猫は足腰が弱く移動することが億劫に感じてしまったりすることもあるそうです。なかには、脱水症状気味になってこたつの中から出てこないなんてことも。
子猫や老猫の場合、ある程度人間が環境を整え、心配であれば移動させてあげることが必要になります。
また、ラグドールやペルシャ猫など長毛種の猫が夏場に冷たい床にお腹をくっつけて寝ているときは、部屋が暑すぎる可能性があります。そもそも体全体を温かく覆う長い毛の持ち主なので、暑さには注意が必要です。
愛猫が一緒に寝てくれない!寝床でわかる猫の独立心
猫は基本的に独立心の強い生き物です。そのため、寝床も自分にとって一番快適な場所を選びます。
「『一緒に寝てくれないんです』と飼い主から相談を受けることがあります。淋しい気持ちはわからなくもないですが、一緒に寝てくれないからといって懐かれてないとは限りません。
特に独立心の強い性格の猫であれば、1人で寝たほうが快適だと感じるのも当然でしょう。飼い主と一緒に寝る子は、飼い主の体温がちょうどいい温かさだったり、飼い主の足がちょうどいい枕になっていたり、そんなに深い意味はないと思うんですね。
自分が一番気持ちよく寝られる場所をその猫が決めただけなので、あまり深読みせず、猫の意思を尊重してあげてください」
反対に顔の横や足の上に乗ってこられ、寝返りが打てず困っているという飼い主もいます。そんな時は、なるべくすぐ近くに猫用のベッドを用意してあげましょう。
「顔の横や足の上にやってきたら、猫を持ち上げてサッとそのベッドに移動してあげてください。繰り返していけば、自分の寝床を覚えてくれると思います」
足腰の痛みから睡眠不足に。老猫の睡眠事情
猫の寝相には、横向き寝、「へそ天」と呼ばれる仰向け寝、前足をたたんで座る「香箱座り」でウトウト...など、さまざまな種類があります。体の力が抜けているようであれば、これらは基本的にリラックスしている状態。1つ注意が必要なのは、丸まって寝ているときです。若くて健康な頃から丸まって眠るのが好きな猫は問題ありませんが、年をとってから急に体を縮こませるように丸まって寝るようになった場合は、どこか体の調子が悪い可能性があります。
「猫の睡眠に関わる不調としてよく挙げられるのが、老猫の足腰の痛みです。痛みを緩和する治療を実施すると、『いつもよりぐっすり眠るようになった』と飼い主から報告を受けることがあります。
体が痛いと眠りが浅くなり、睡眠不足になりがちです。もし、ご飯の時間にも起きてこなかったり、うずくまるように丸まって寝ているように見えた場合は、一度受診したほうがいいかと思います」
老猫の夜鳴きや興奮状態は、病気の可能性も
人間も高齢になると早起きになるように、猫も年をとると本来生物として持っているライフサイクルが強く出るようになります。猫の場合は、薄明薄暮性の性質が顕著になり、睡眠サイクルに変化が起きるようです。「認知機能の低下により夜鳴きをする老猫もいます。夜鳴きにより飼い主も眠れなくなってしまい、受診されるパターンが多いです。そんな時は血液検査を行い病気の可能性がないかを調べます。病気でなければ、気持ちを落ち着かせてあげるようなお薬を処方し、安心して眠れるように治療していきます」
また、夜鳴きも含め、あまりにも興奮状態がつづく場合「甲状腺機能亢進症」という病気の可能性も。「甲状腺機能亢進症」になると、甲状腺から過剰に甲状腺ホルモンが分泌され、妙な興奮状態となります。
たとえば、年齢にそぐわないほど活発に走り回ったり、気性が荒くなったり、イライラしたり、ご飯をよく食べるのに体は痩せてしまったりといった症状です。
「甲状腺機能亢進症かどうかは血液検査でわかります。病気と診断された場合も、薬を処方し、ちゃんとリラックスして眠れるように治療します。
何より、猫の夜鳴きで飼い主も寝不足になっては、どうしようもありません。猫も飼い主も安心して眠れるようにすることが大切です」
***
猫と心地よく暮らすためには、猫も人も互いの睡眠を阻害せず、譲歩すること。猫が好みの寝床を見つけたのなら、その意思を尊重することを心がけましょう。
「猫の診療室モモ」院長・獣医師
谷口史奈先生
動物病院3年、猫専門病院2年半勤務。2016年8月に猫専門病院「猫の診療室モモ」を開院 安達文化学園 専門学校ビジョナリーアーツ 非常勤講師
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