2023年05月31日 カテゴリ:眠り

不眠症を招く可能性も!専門医に聞く、決して軽視できない「騒音」対策

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不眠症を招く可能性も!専門医に聞く、決して軽視できない「騒音」対策

せっかく寝ついたはずが寝室の外から響く音に反応し、目が覚めてしまった——。そんな経験をお持ちの方も少なくないはず。

私たちの睡眠は、思っている以上に「音」に対してセンシティブ。そこで今回は「騒音と睡眠の関係」について紐解きながら、睡眠時の対処法や予防策もお届け。教えてくれるのは、呼吸と睡眠を専門に治療を行う「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」の院長・白濱龍太郎先生です。

 

睡眠中の騒音が、日中に働くはずの交感神経を刺激!

眠りについたのに、何らかの外的要因によって目が覚めてしまう。こうした状況は「睡眠妨害」と呼ばれ、「音」は睡眠妨害の代表例にあたります。音が大きくなると「騒音」と表現されますが、総務省が公開している騒音と睡眠に関する資料に気になる一文があります。

「睡眠妨害」は、聴力障害とは対照的に種々の騒音影響の中で最も低い騒音レベルで起こるものです。
(引用:https://www.soumu.go.jp/main_content/000352509.pdf)

この一文は「睡眠は音による影響を受けやすい」とも読み取れますが、睡眠が音に影響を受けやすい理由はどこにあるのでしょう?

「深部体温の数値やホルモンの分泌量をはじめ、睡眠の状態は体内のあらゆる動きによって変化します。なかでも騒音による目覚めに強く影響しているのが、自律神経です。音を察知すると交感神経が刺激され、目が覚めてしまう。これが騒音と睡眠の関係性ではないでしょうか」

交感神経は“活動の神経”、副交感神経は“休息の神経”とも表現され、睡眠中は副交感神経が優位に働くのが通常です。それが、ふいに生じた音に交感神経が反応してしまい、身体が休息モードから活動モードに切り替わることが、騒音による睡眠妨害の一因のようです。

眠りの浅さを引き起こす“五月病”の時期は要注意!

しかし、ひと口に騒音といっても、そのレベルは広範囲。時には寝室の外から聞こえるちょっとした足音にも反応し、目覚めてしまうことがあります。

「小さな音にも目覚めてしまう理由として考えられるのが、眠りの浅さです。眠りが浅くなる原因は多岐にわたりますが、主には心的ストレス、それにスマートフォンやパソコンの画面から発されるブルーライトによる脳の興奮です。これらの状態では交感神経が優位に働きやすく、身体が休息しづらくなります。その結果、寝ても眠りが浅くちょっとした音で起きてしまうことにつながるのです」

ブルーライトが安眠を妨げることは、これまでにもお伝えしてきた通り。そして、新生活スタートにあたり引越しをするタイミングは、不慣れな住環境や寝室の環境もストレスのひとつになり、心が不安定な状態に。ちょっとした物音にも目覚めてしまうことが増える時期といえそうです。

ちなみに、眠りの浅さとは無関係に人の睡眠を妨害する騒音値は約70デシベル。これはMRI検査の音や1m先にあるやかんが沸騰してピーッとなる音に匹敵するのだそう!目が覚めるのも納得ですね。

 

不眠症にもつながりかねない騒音を“マスキング”!

ここまでで音の大きさにかかわらず、心身の状態によっても睡眠妨害は引き起こされるということをご説明してきました。では、音による睡眠妨害を受けると、私たちの身体にはどのような症状が現れるのでしょう?

「代表的な例が、入眠から起床までに何度も目が覚めてしまう中途覚醒です。中途覚醒が生じると十分な睡眠が取れず、日中の眠気から活動のパフォーマンスも低下してしまいます。また、睡眠時間が取れない、睡眠の質が悪い状態が続くと、不眠症の諸症状が現れることも。不眠症は高血圧を招き、生活習慣病のリスクも高まるため、その一因となり得る騒音も軽視できません」

不眠症につながることも危惧される、騒音による睡眠妨害。しかし、音は外部から発されるもの。同居人の足音も、窓の外から聞こえてくる車の走行音や夜間工事の音も、自分から止めることは不可能です。

「そこで提案したいのが『マスキング』です。意味はそのまま、睡眠時の騒音を別の音でマスキング=覆い隠す、という手法です。メンタルの自然な動きとして、人は不快と感じる音に固執してしまいがち。『気にしない!』と念じても、騒音に意識が向くのは仕方のないことです。だからこそ、別の音でマスキングすることが有効です」

 

ロックはNG!騒音を覆い隠すには、快眠へ導く音楽を!

騒音のマスキングにおすすめなのが、「1/fゆらぎ」のある音楽。風にも波にも雨にも自然界の現象には不規則な揺らぎがあり、これを数値として表現したのが「1/fゆらぎ」。この揺らぎの音が脳に作用し、心を落ち着かせる効果が認められています。最近は「1/fゆらぎ」をテーマとした音楽が増えているので、チェックしてみてください。

反対におすすめできないのが、歌詞のある音楽。歌詞があると言語を判断しようと無意識に脳が活発に働き出してしまうため、睡眠には悪影響です。また、歌詞がなくともロックのような激しい音楽もNG。その激しさに交感神経が反応し、やはり眠りづらくなります。

そして、「隣で寝ているパートナーの邪魔になるから、寝室で音楽は流せない」という人に向け、白濱先生が推奨するのが“耳を塞がない”タイプのイヤホン。これなら耳の閉塞感を感じにくく、さらには大きな音漏れの心配もありません。
 
***

「騒音と睡眠の関係」について紐解いてきましたが、「睡眠時だけでなく、日中の騒音が夜の眠りに影響することも否定できません」と白濱先生。日中に感じた騒音が心的ストレスとなり、眠りの浅さを引き起こしてしまうからです。

白濱先生は「昼夜にかかわらず騒音への何よりの対策は、良い眠りのための生活を心がけることです」と指摘します。22時以降のスマホやパソコンを控えるのはもちろん、心を静めるマインドフルネスを意識して入眠前はリラックスを心がける。さらには日常的な運動が身体に程よい疲れをもたらし、寝つきがスムーズになります。そうした日ごろの心掛けが安心感を呼び、快眠につながります。

 

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック

白濱 龍太郎 先生

東京医科歯科大学呼吸器内科・快眠センター、公立総合病院睡眠センター長などを経て、2013年に「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を設立。海外の研究にも精通し、東京2020 夏季オリンピックでは出場選手をサポート。睡眠の専門家として多くのメディアに登場し、著書も多数。近著は『ぐっすり眠る習慣』(アスコム)。

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