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予知夢、正夢、デジャブ。既視感のある夢の正体とは?

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予知夢、正夢、デジャブ。既視感のある夢の正体とは?

夢で体験したことが現実で起きる「予知夢」という現象。「正夢」や「デジャブ」という言葉でも表現されます。

街中で旧友とばったり会う夢を見たその日、友人から久しぶりに連絡が来た、天災を予測した...なんて経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。オカルト的現象としても、しばしば耳にします。

私たちが夢を見る理由は、過去に経験したことの「記憶の整理」と言われていますが、過去ではなく未来に起きる「予知夢」の正体とは一体何なのでしょうか?

睡眠の面から心身の健康をサポートする『青山・表参道 睡眠ストレスクリニック』院長の中村真樹先生に、そのメカニズムを医学的側面から解説してもらいました。
 

予知夢の正体は、人に備わる「認知バイアス」

――なぜ「予知夢」や「正夢」と呼ばれる現象が起こるのでしょうか?

「予知夢」や「正夢」はいわゆるオカルト的なものではなく、曖昧な夢の記憶を現実に関連づけてしまっているだけと考えられます。

「夢」は解明できていないことが多い現象ではありますが、記憶を整理するための眠りとされているレム睡眠のときに私たちは夢を見ており、一晩の睡眠時間の20〜25%は夢を見ているレム睡眠です。ですので「夢を見ているか・見ていないか」ではなく、「夢を覚えているか・覚えていないか」の違いなんです。

心理学用語で「認知バイアス」と呼ばれるように、人間は自分に都合のいいように判断をしてしまう傾向があります。

たとえば「親戚のおじいさんが亡くなる数日前に、夢におじいさんが出てきた」と思い出し「夢のお告げ」と捉えたとします。でも、その夢に現れたおじいさんが本当にその亡くなったおじいさんだったのかはわかりませんし、夢に現れた老人をおじいさんが亡くなったことを知ったときに、その“亡くなったおじいさん”だったと思い直しただけの可能性があります。

――夢と現実を都合よくつなげて解釈しているだけ、ということなんですね。

夢を壊すようで申し訳ないのですが...(笑)覚えている範囲で「夢日記」をつけてみると、夢内容は日常生活に似た内容でも断片的で一貫性のないものが多く、現実的な夢であっても、それがそのまま現実に起きる可能性が低いことがよくわかるかと思います。

私も昔「夢のお告げ」のような体験をしたことがあります。しかし、夢に出てきたのは、単なる1人の老人だったかもしれないけれど、現実で親戚のおじいさんが亡くなったのを知ったとき、夢で見た人物を「親戚のおじいさんだった」と解釈しただけだった可能性も否定できませんでした。

――「大地震を予測した」というようなニュースを見ることも過去にありましたが、それもたまたまと言えるわけですね。

そうですね。地震の夢を見ることはあるかもしれませんが、では、その地震の夢は実際に起きた地震と同じ場所の光景だったのか、地震が起きた時間、季節も一致しているのか。?日本は地震が多い国なので、実体験にしろニュースにしろ、過去の地震の記憶が夢に現れる可能性は高いです。

また、眠っているときの物音や風で窓がガタガタ揺れる音などの刺激が夢に取り込まれ、それが「地震」という夢を作り出すこともあります。過去の記憶や周囲の刺激によって地震の夢を見て、その記憶が曖昧ながらも残っているときに、現実に地震が起きたので、地震の夢を見たという経験を、その地震を予知したものと勘違いするというわけです。
 

睡眠リズムと夢の関係



――先ほど「夢を見る・見ない」ではなく、「覚えているか・覚えていないか」というお話がありました。覚えている夢と覚えていない夢には、どんな違いがあるのでしょうか?


眠りのどのタイミングで目覚めたかによって夢を「覚えているか・覚えていないか」が変わってきます。つまり、睡眠中は、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に出現しますが、レム睡眠中に起こすと74%以上の確率で夢の内容を思い出せることがわかっています。

一方、ノンレム睡眠は脳波の特徴でステージN1,ステージN2、ステージN3の3段階の深さに分類されます。ステージN1の浅いノンレム睡眠はレム睡眠と同じくらい覚醒しやすいですが、このノンレム睡眠ステージN1の時に起きても夢を覚えていないことが多いのです。ノンレム睡眠中に起こしてもたまに夢を覚えている人もいますが、それは直前のレム睡眠中に見た夢を覚えているだけの可能性もあります。

――現状では、レム睡眠中に起きると夢を覚えている可能性が高いことが明らかになっているわけですね。

ちなみに活動的でポジティブな人は、目覚めるとすぐに現実の日常生活に気を向けるため夢をあまり気にかけないので夢内容を覚えておらず、反対に日常的に不安や悩みがあったり内向的な性格の人は、目覚めても直前に見ていた夢に気が向いてしまうことで、より夢の内容を思い出しやすい、という説もあります。

――夢を見た日は「ちゃんと眠れていないのかな?」と感じる方もいらっしゃると思うのですが、実際はどうなのでしょうか?

「ちゃんと眠れているかどうか」というのは、睡眠時間をどれくらい確保できているか、前日疲れ過ぎてはいないか、ストレスや眠りを浅くする病気はないかなど、脳波を測って客観的に見ない限り正確な判断ができません。ですので、夢を強く覚えているからといって「ちゃんと眠れていない」と判断できるわけではないですね。それ以上に、夢は眠っているときに見ているので、夢を見ていたということは、そのときはしっかりレム睡眠状態で眠っていたということです。

7時間睡眠の場合、一晩に4〜5回レム睡眠が出現しますが、ストレスや身体の病気で眠りが浅くなりやすいと、浅い眠りとされるレム睡眠のときに目が覚めやすくなることがあります。ですので、レム睡眠中のたびに目覚めるようなことがあれば、「夢ばかり見て寝た気がしない」と感じるのかもしれませんね。
 
***

予知夢の正体を医学的側面から解説していただくと、ズバリ人に備わる「認知バイアス」によるものという結果でした。

オカルト好きには少々残念ではありますが、過去の膨大な情報がどのように整理され、なぜ私たちは夢を見るのか、「夢」という現象自体はまだまだ解明されていないことが多く、好奇心がそそられるお話でした!
       

青山・表参道 睡眠ストレスクリニック院長

中村真樹先生

日本睡眠学会専門医。東北大学大学院医学系研究科修了後、東北大学病院精神科で助教、外来医長を務める。その後、睡眠総合ケアクリニック代々木院長を経て、2017年「青山・表参道 睡眠ストレスクリニック」を開院。臨床と研究、両面の実績があり、睡眠に悩む多くの患者さんの治療にあたっている。ビジネスパーソン向けの書籍『仕事が冴える眠活法』(三笠書房)も話題に。
https://omotesando-sleep.com/

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