カテゴリ:眠り
心も身体も揺らぎがちな春に!漢方の専門家が教える「不眠」の原因と対策
ポカポカ陽気が続き、いよいよ本格的な春の到来。その陽気に心躍る一方、新たな生活のスタートに不安を覚えたり、新生活に慣れず、体調を崩しやすかったりする季節でもありますよね。
すると起こりやすいのが不眠の症状。『眠りのレシピ』では、これまでにも多角的な観点から不眠を解消するための情報をお届けしてきましたが、今回のテーマは東洋医学!東洋医学では不眠の状態をどのように捉え、どう改善していくのでしょう?
教えてくださるのは年間5000件以上もの相談を受け、漢方にまつわる著書も人気の専門家、櫻井大典先生。不眠に関するお話はもちろん、何かとモヤモヤしがちな春を乗り切るための方法もお届けいたします!
不適切な飲食
暴飲暴食、濃いお茶やコーヒー、お酒の飲み過ぎ。
情志(じょうし)の失調
喜怒哀楽や恐れといった感情が過度な状態。
労逸(ろういつ)
働きすぎ、動きすぎ、考えすぎ、もしくは休みすぎの状態。
病後や体の虚弱
身体が弱ることにより、体内の血(けつ)が不足した状態。
「何が不眠を引き起こしているのか。原因は人それぞれですが、東洋医学の治療では『実証(じっしょう)』と『虚証(きょしょう)』の2つに分類をします。不適切な飲食を原因とする不眠であっても、心身が実証の状態にあるのか、それとも虚証の状態にあるのかによって、とるべき対策が変わってくるからです」(櫻井先生)
実証
心身の中身が標準よりも多い状態。不要物や過度な熱などが溜まり、イライラしたり、心のざわつきを感じたり、感情のアップダウンが激しくなります。身体に起こる症状としては、目の充血や口の苦味、顔の火照りやめまい、胸苦しさや身体の重さを感じるのが特徴。睡眠に関しては、心身の高ぶりから寝つきが悪くなり、悪夢を見やすくなります。
虚証
心身の中身が標準よりも少ない状態。特に不眠の場合は、体液が不足した状態を指し、その不足から心身のクールダウンが難しくなります。すると興奮しやすくなり、決断力が低下。火照りやのぼせを感じる一方、喉の渇きや肌の乾燥が顕著になります。睡眠に関しては、心身が安定しないことから寝つきが悪くなり、寝汗や中途覚醒が起きやすいのが特徴です。
「正直なことをお伝えすれば、素人判断による漢方薬の購入は、一種のギャンブルです。効能として『不眠の改善』が挙げられていたとしても、実証・虚証を無視した服用では意味を成しません」(櫻井先生)
すると大切なのが、漢方の専門家による処方を受けること。櫻井先生によれば、東洋医学の治療は、何よりも話を聞くことから始まるそう。何時に寝て何時に起き、朝食は何時に何を、どのように食べたのか。体調や病歴、数値化された身体のデータのみならず、個々人の生活スタイルを詳細に引き出すことで、心身の状態が見えてきます。
「たとえ間違って服用しても、睡眠を促す漢方であれば劇的な副作用は考えにくいので、個人判断で服用いただいても問題ありません。ただし、そこで効果を実感できないようなら、専門家に相談してください。漢方薬が効かないのではなく、正しい漢方薬を選べていないだけ、ということが珍しくないからです」(櫻井先生)
東洋医学においても、睡眠は心身の健全のために重要なこと。東洋医学では、日中に体内を巡っていた体液は、睡眠中に浄化されると考えられているそうです。つまり睡眠が不足しては汚れた体液が浄化されず、汚れたままに体内を巡り続けます。すると、どんどん血がドロドロになり、不調を来しやすくなるばかりです。
これには入学や入社、クラス替えや部署異動といった新生活が始まり、その新しい生活に慣れないことへの不安感が原因のひとつに挙げられますが、実は東洋医学の観点でも、春は心がざわつき、睡眠や体調が不安定になりやすい季節だそう。
「春に現れる急性の症状のことを『春温(しゅんおん)』といいます。発熱、のぼせ、発汗のしづらさ、喉の渇き、頭痛、動悸や胸のざわつき、不安感やイライラといった症状が挙げられ、不眠が生じることも珍しくありません」(櫻井先生)
この春温を引き起こすのが、気候の変調。冷たかった冬の空気が急に暖かくなり、この暖かな空気が体に良くない「外邪(がいじゃ)」として体内に入り込みます。また、冬に蓄積した寒さを身体から追い出せず、追い出せないままに薄着をすることで、溜まりに溜まった寒さが熱に転化。この転化した熱による不調も、春温の原因になるといいます。
では、春温を引き起こさないためには、どうすべきなのでしょう?
櫻井先生は「大切なのが『養生(ようじょう)』です。ただし、東洋医学における養生とは病気の回復に努めること以上に病気にならないように備えることを意味します」と指摘。春温を引き起こさないためには、春が訪れる前、冬の養生が必要なのです。
すると、今から春温を予防することはなかなか難しい…そんな春の今にすべきなのは夏に向けた養生ですが、これは春を快適に過ごすことにも直結します。
「夏に向け、春にすべき養生のことを『春の養生』といいます。具体的には起床時間を早くすること、心身をゆるく保つことが挙げられますが、どちらも自然の摂理と関係しています」(櫻井先生)
起きる時間を早くすべきなのは、春から夏に向け、次第に日の出が早くなるから。そして全身をゆるく保つことには、草木の芽吹きに関係しています。
「東洋医学の基礎となる五行説では、春は木の季節。五行説には『曲直(きょくちょく)』という言葉があり、『草木は曲がって生え、次第にまっすぐ天を向く』という意味です。つまり草木が健全に育つためには、曲がって生えた状態を矯正せず、自由にさせることが大事。私たち人間も同様に、春はのびのび、ゆるめることが大切なのです」(櫻井先生)
心身をゆるく保つには、タイトな服装や引っ詰めるような髪型を避けること。嫌なことがあっても気持ちが高ぶらないよう、深呼吸をすること。また、ストレッチによって筋肉をゆるめることも効果的だそうです。
「皆さんも『未病(みびょう)』という言葉を聞いたことがありますよね。未病とは健康から病気へと向かっている状態であり、病気を芽の段階から摘み取ることが東洋医学の基本。そして、未病を予防するための基礎が養生であり、養生とは、自然の摂理に合わせた生活を送ることなのです」(櫻井先生)
忙しい毎日を送り、十分な睡眠時間を取れない人も少なくない昨今ですが、自然の摂理になぞらえれば、夜更かしはやはり禁物。不眠を引き起こさないためにも、夜に眠り朝に起きるという、しっかりしたリズムを作ることが大切です。
すると起こりやすいのが不眠の症状。『眠りのレシピ』では、これまでにも多角的な観点から不眠を解消するための情報をお届けしてきましたが、今回のテーマは東洋医学!東洋医学では不眠の状態をどのように捉え、どう改善していくのでしょう?
教えてくださるのは年間5000件以上もの相談を受け、漢方にまつわる著書も人気の専門家、櫻井大典先生。不眠に関するお話はもちろん、何かとモヤモヤしがちな春を乗り切るための方法もお届けいたします!
あなたの不眠、原因は「実証」?それとも「虚証」?
寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目を覚ましたり、熟睡感を得られなかったりする不眠の症状。東洋医学では「不寐(ふび)」と言い、主な原因として、以下の4つが挙げられます。不適切な飲食
暴飲暴食、濃いお茶やコーヒー、お酒の飲み過ぎ。
情志(じょうし)の失調
喜怒哀楽や恐れといった感情が過度な状態。
労逸(ろういつ)
働きすぎ、動きすぎ、考えすぎ、もしくは休みすぎの状態。
病後や体の虚弱
身体が弱ることにより、体内の血(けつ)が不足した状態。
「何が不眠を引き起こしているのか。原因は人それぞれですが、東洋医学の治療では『実証(じっしょう)』と『虚証(きょしょう)』の2つに分類をします。不適切な飲食を原因とする不眠であっても、心身が実証の状態にあるのか、それとも虚証の状態にあるのかによって、とるべき対策が変わってくるからです」(櫻井先生)
実証
心身の中身が標準よりも多い状態。不要物や過度な熱などが溜まり、イライラしたり、心のざわつきを感じたり、感情のアップダウンが激しくなります。身体に起こる症状としては、目の充血や口の苦味、顔の火照りやめまい、胸苦しさや身体の重さを感じるのが特徴。睡眠に関しては、心身の高ぶりから寝つきが悪くなり、悪夢を見やすくなります。
虚証
心身の中身が標準よりも少ない状態。特に不眠の場合は、体液が不足した状態を指し、その不足から心身のクールダウンが難しくなります。すると興奮しやすくなり、決断力が低下。火照りやのぼせを感じる一方、喉の渇きや肌の乾燥が顕著になります。睡眠に関しては、心身が安定しないことから寝つきが悪くなり、寝汗や中途覚醒が起きやすいのが特徴です。
漢方の効果を実感できない、その意外な理由とは!?
実証でも、虚証でも引き起こされる不眠の症状。どちらにも「寝つきの悪さ」は共通し、自分が実証なのか虚証なのか、自己判断は困難です。東洋医学といえば、漢方薬による治療が広く知られ、ドラッグストアでも気軽に購入できますが、セルフケアを行うにはどうすべきなのでしょう?「正直なことをお伝えすれば、素人判断による漢方薬の購入は、一種のギャンブルです。効能として『不眠の改善』が挙げられていたとしても、実証・虚証を無視した服用では意味を成しません」(櫻井先生)
すると大切なのが、漢方の専門家による処方を受けること。櫻井先生によれば、東洋医学の治療は、何よりも話を聞くことから始まるそう。何時に寝て何時に起き、朝食は何時に何を、どのように食べたのか。体調や病歴、数値化された身体のデータのみならず、個々人の生活スタイルを詳細に引き出すことで、心身の状態が見えてきます。
「たとえ間違って服用しても、睡眠を促す漢方であれば劇的な副作用は考えにくいので、個人判断で服用いただいても問題ありません。ただし、そこで効果を実感できないようなら、専門家に相談してください。漢方薬が効かないのではなく、正しい漢方薬を選べていないだけ、ということが珍しくないからです」(櫻井先生)
東洋医学においても、睡眠は心身の健全のために重要なこと。東洋医学では、日中に体内を巡っていた体液は、睡眠中に浄化されると考えられているそうです。つまり睡眠が不足しては汚れた体液が浄化されず、汚れたままに体内を巡り続けます。すると、どんどん血がドロドロになり、不調を来しやすくなるばかりです。
不眠や胸のざわつき、心の不安定を引き起こす「春温」
ところで、普段は不眠とは無縁でも「春になると妙に寝つきが悪くなる」という人、いませんか?睡眠に影響はなくとも、春はどこか心がざわつく季節です。これには入学や入社、クラス替えや部署異動といった新生活が始まり、その新しい生活に慣れないことへの不安感が原因のひとつに挙げられますが、実は東洋医学の観点でも、春は心がざわつき、睡眠や体調が不安定になりやすい季節だそう。
「春に現れる急性の症状のことを『春温(しゅんおん)』といいます。発熱、のぼせ、発汗のしづらさ、喉の渇き、頭痛、動悸や胸のざわつき、不安感やイライラといった症状が挙げられ、不眠が生じることも珍しくありません」(櫻井先生)
この春温を引き起こすのが、気候の変調。冷たかった冬の空気が急に暖かくなり、この暖かな空気が体に良くない「外邪(がいじゃ)」として体内に入り込みます。また、冬に蓄積した寒さを身体から追い出せず、追い出せないままに薄着をすることで、溜まりに溜まった寒さが熱に転化。この転化した熱による不調も、春温の原因になるといいます。
不安定な春を快適に過ごす秘訣は「ゆるめる」こと!
では、春温を引き起こさないためには、どうすべきなのでしょう?
櫻井先生は「大切なのが『養生(ようじょう)』です。ただし、東洋医学における養生とは病気の回復に努めること以上に病気にならないように備えることを意味します」と指摘。春温を引き起こさないためには、春が訪れる前、冬の養生が必要なのです。
すると、今から春温を予防することはなかなか難しい…そんな春の今にすべきなのは夏に向けた養生ですが、これは春を快適に過ごすことにも直結します。
「夏に向け、春にすべき養生のことを『春の養生』といいます。具体的には起床時間を早くすること、心身をゆるく保つことが挙げられますが、どちらも自然の摂理と関係しています」(櫻井先生)
起きる時間を早くすべきなのは、春から夏に向け、次第に日の出が早くなるから。そして全身をゆるく保つことには、草木の芽吹きに関係しています。
「東洋医学の基礎となる五行説では、春は木の季節。五行説には『曲直(きょくちょく)』という言葉があり、『草木は曲がって生え、次第にまっすぐ天を向く』という意味です。つまり草木が健全に育つためには、曲がって生えた状態を矯正せず、自由にさせることが大事。私たち人間も同様に、春はのびのび、ゆるめることが大切なのです」(櫻井先生)
心身をゆるく保つには、タイトな服装や引っ詰めるような髪型を避けること。嫌なことがあっても気持ちが高ぶらないよう、深呼吸をすること。また、ストレッチによって筋肉をゆるめることも効果的だそうです。
次の季節に備えた「養生」の連鎖が健康な心身をつくる
櫻井先生が教える「春の養生」を実践すれば、健全な心身で夏を迎えられるはず!そして、夏を迎えたら「夏の養生」、秋を迎えたら「秋の養生」、冬を迎えたら「冬の養生」をすることで、一年を通して健康的に過ごすことができます。「皆さんも『未病(みびょう)』という言葉を聞いたことがありますよね。未病とは健康から病気へと向かっている状態であり、病気を芽の段階から摘み取ることが東洋医学の基本。そして、未病を予防するための基礎が養生であり、養生とは、自然の摂理に合わせた生活を送ることなのです」(櫻井先生)
***
忙しい毎日を送り、十分な睡眠時間を取れない人も少なくない昨今ですが、自然の摂理になぞらえれば、夜更かしはやはり禁物。不眠を引き起こさないためにも、夜に眠り朝に起きるという、しっかりしたリズムを作ることが大切です。
漢方コンサルタント
櫻井大典 先生
年間5000件以上の相談をこなす漢方専門家。米カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志とともに定期的に漢方セミナーを開催するほか、漢方にまつわる著書も多数。近著は『気楽に、気うつ消し ― こころの不調に効く!』(ワニブックス)。
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