2023年09月13日 カテゴリ:眠り

生理前に眠れなくなる原因は?対策と予防法、考えられる病気について解説

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生理前に眠れなくなる原因は?対策と予防法、考えられる病気について解説

生理(月経)前になると「日中眠たくて仕方がない」という人は、多いのではないでしょうか?中には、日中は眠たくて仕方ないのに、夜になるとなぜか寝つけないという人も。 このように、成熟期(10代後半〜40代前半)の女性に毎月訪れる生理は、眠りに深く関係しています。今回は産婦人科医師の高尾美穂先生に、生理前に眠れなくなる理由と対策について伺いました。
 

睡眠トラブルに関係する「女性ホルモン」の基礎知識


睡眠に限らず、女性の健康に大きな影響を及ぼす「女性ホルモン」。特に鍵となるのが「エストロゲン(卵胞ホルモン)」「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つの女性ホルモンの働きです。

エストロゲンは、生理終了後から排卵日にかけて比較的多く分泌される女性ホルモンです。妊娠に備えて卵巣内の卵胞を成熟させる、受精卵の着床に備えて子宮内膜を厚くする、肌のツヤをよくするなどの働きがあり、生理後から排卵日までは快適に過ごせる女性が多いのは、このエストロゲンによる影響です。

一方、排卵日から生理開始前までの期間にしか分泌されないプロゲステロンは、妊娠が成立しやすいように調整する働きがあり、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整える、体温を上げる、乳腺を発達させるといった身体の変化を生じさせます。

プロゲステロンが分泌されている期間には、イライラや眠気、食欲の増進なども感じやすく、生理前のこのような症状に悩まされる女性が多いわけです。

生理前に眠れなくなる原因




生理前に眠れなくなる原因の1つが、前述したプロゲステロンの働きです。本来、日中に活動することで体温が上がり、夜になると体温が下がることで、私たちの身体は入眠しやすくなります。

しかし、プロゲステロンは妊娠しやすい身体づくりのために体温を上げる働きがあるため、夜になっても体温が下がらず、寝つきが悪くなるのです。

「排卵後から生理が始まるまでの約14日間、プロゲステロンが分泌され体温が0.3〜0.5度高くなるいわゆる『高温期』になります。熱っぽい感覚はありませんが、その状態が14日間も続くと眠れなくなり『睡眠負債』になる場合もあります」

また、この14日間は自律神経系の副交感神経と関連しているエストロゲンの分泌が減少します。すると副交感神経が優位になりにくいことで心拍数が上がり、身体がリラックスしにくい状態になるのです。

他にも、エストロゲンの減少により、別名「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」の生成が減ることで、セロトニンが体内につくりだす睡眠ホルモン「メラトニン」が生成されにくく、眠りが浅くなることも考えられます。

排卵日から生理開始前までは「眠れなくてもおかしくない時期」であると高尾先生は指摘。生理前は「日中眠くて仕方がない」という人も、夜に質のいい睡眠が取れていないからこそ、日中の眠気が目立つようになると考えられます。
 

症状から考えられる病気


生理前は寝つきが悪くなることに加え、身体的には腹痛、便秘、頭痛、精神的にはイライラする、怒りっぽくなる、涙もろくなるなど、多くの女性が何かしらの不調を感じていることがわかっています。これらの症状は「月経前症候群(PMS)」と呼ばれています。

また、月経前症候群の中で特にメンタルの不調が強く出ている場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」に当てはまる可能性も。ただ、月経前不快気分障害と診断される人は、決して多くはないといいます。

「生理前の働きにより寝つきが悪くなり、睡眠負債が蓄積され、メンタル不調が引き起こされることもあれば、もともと睡眠負債のあったところに生理がやってきて、メンタル不調になるとも考えられます。鶏が先か、卵が先かの話になってしまうので、どちらが原因かハッキリ見極めるのは難しいですが、睡眠の課題と生理周期がメンタル不調に深く関係していることは確かでしょう」
 

更年期や産後が原因の可能性も


生理前・生理中以外に、女性特有の睡眠トラブルには「更年期」と「産後」があるといいます。

更年期は卵巣機能が低下することで、エストロゲンとプロゲステロンの両方の女性ホルモンの分泌量が減り、体温の調整機能がうまく働かなくなります。「ホットフラッシュ」と呼ばれるほてり、のぼせによって、大量の汗をかき途中で目覚めてしまうのが、更年期にもっとも見られる睡眠の悩みなのだとか。その場合は、「足りなくなったホルモンを足す『補充治療』がとてもよく効きます」と高尾先生。


▼更年期の睡眠トラブルについて、詳しく知りたい方はこちら
https://www.nishikawa1566.com/column/sleep/20220728162154/


産後は3〜4時間に1回は起きる状態が授乳期間中続くため、お母さんの睡眠時間が細切れになってしまいます。

「ノンレム睡眠は脳の休息を担い、レム睡眠は体の休息を担います。睡眠時間が分断されてしまうと、レム睡眠に移行できず体の休息にまで至らないため、当然負担になります。『産後うつ』と呼ばれるメンタル不調も起こりやすい時期になります」
 

生理前に眠れない際の対策と予防




女性の睡眠トラブルについて代表的なものをご紹介いただきましたが、ここからは生理前の不調を乗り越えるために大切なことや、生活習慣を見直すためのポイントを教えていただきます。

①まずは2週間、8時間ほどの睡眠時間を確保する

「最初に問いかけたいのは、そもそも普段から睡眠時間を確保できていますか?ということです」と高尾先生。

労働時間や家事・育児の時間、そして趣味の時間を優先し、もっとも削られやすいのが睡眠時間であると先生は指摘します。

「20代、30代はまだ体力がありますし、睡眠時間を軽視してしまう人は多いです。しかし、睡眠負債が積み重なると、月経前症候群(PMS)もひどくなるでしょうし、メンタル不調が続くことで更年期に差し掛かった時により症状が重くなる可能性もあります。対症療法的なアプローチはたくさんありますが、まずはしっかり8時間の睡眠時間を確保することが基本です」

先生の元へ相談に来た方には、まずは2週間、8時間ほどの睡眠時間を確保することをすすめるそう。すると、生理前の症状が軽くなり、日中元気に過ごせるようになったり、肌のツヤが良くなったり、と明らかな違いを感じるはずです。

「まずは2週間トライしてみて、その違いを体感してほしいです。きっと、睡眠の重要性を言葉だけではなく、身体で理解できると思います」


②運動習慣をつける

生理前に限らずですが、夜寝つきが悪い人にすすめたいのは運動習慣を身につけること。

「運動習慣がある人のほうが、月経前症候群(PMS)の不調が軽いことが報告されています。日中の活動により体温がしっかりと上がるタイミングをつくれば、夜には熱が冷めやすくなります。日頃からこの体温のリズムを整えておくことが重要です」

また、運動により日中に交感神経を働かせておくことも大切。そうすることで、夜は自然と副交感神経優位のリラックスモードが訪れやすくなります。

「最近では、リモートワークやデスクワークの人が多く、圧倒的に日中の活動量が足りていない方が多いと思います。睡眠環境を整えることや入眠儀式など『夜をどう過ごすか』だけでなく、より良く眠るために『日中をどう過ごすか』にも意識を向けてもらいたいです」


③スケジューリングで女性ホルモンの動きを予測

「生理を予測するスケジューリングはよく知られていますが、医療指導の項目にもしっかりと入っています」

たとえば「この時期は気分が落ち込みやすい」ということを事前にわかっていれば、予定をずらすなど、余裕を持ったスケジュールを組みやすくなります。いま生理周期のどの辺りに当てはまるのかがわかるスケジューリングアプリもあるので、上手に活用すると良いでしょう。

「生理前の不調は、排卵が起こっている場合やホルモンが正常に分泌されている場合に起こるものなので、大抵の場合検査をすることで異常が見つかるものではありません。そのため、ある程度は仕方のないものとして計画を立て、時には周りにも協力してもらいながら、不調のときは無理せずお休みするのが良いでしょう」
 
***


漢方や低用量ピルの服用など、さまざまな治療手段がありますが「必ず、それと並行して生活習慣の見直しをしましょう」と高尾先生。

「20代〜30代の女性は特に、睡眠不足の状態でも乗り切れてしまう場合があるため、自分ごととして捉えてもらうことに難しさを感じます。だからこそ私は診療の際、『今のままの生活をずっと続けることは無理、どこかで必ず不調が出るよ』とはっきりとお伝えするようにしています」

生理前の不調を改善したいのであれば、まずは8時間の睡眠時間を確保すること。そして運動習慣を身につけること。その基本を押さえるだけでも、大きな変化を体感できるかもしれません。


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イーク表参道副院長

高尾美穂先生

婦人科の診療を通して女性の健康をサポートし、女性それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示。また、株式会社ドームのアドバイザーリードクターとして、女性トップアスリートのメディカル・メンタルサポートを行う他、産業医として働く女性を支えるなど、企業や自治体へも医学的な知識の提供、商品開発へのアドバイスを行う。
https://www.mihotakao.jp/

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