2020年05月11日 カテゴリ:眠り

睡眠中の歯ぎしりの原因は対策する方法や改善法はある?実は「良い」「悪い」もある!?

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睡眠中の歯ぎしりの原因は対策する方法や改善法はある?実は「良い」「悪い」もある!?
睡眠中、無自覚に起こる「歯ぎしり」。歯ぎしりは、まばたきやあくびと同様の生理現象。歯ぎしりをしない人はほとんど存在せず、「私はしてないよ」という人も、単に自覚していないだけの可能性が高いんです。
 
そこで今回は青木歯科の院長・青木聡先生監修のもと、歯ぎしりの原因や、歯ぎしりがもたらすさまざまな影響をご紹介。さらには良い歯ぎしりか、悪い歯ぎしりかがわかるセルフチェックやセルフケアまで、余すことなくお届けします! 
 

睡眠中の歯ぎしりは“人類の進化の名残”!?

そもそも、どうして私たちは歯ぎしりをするのでしょう?
 
「歯ぎしりが起こる原因は、完全には解明されていません。ただし、歯ぎしりは人類の進化の名残という説があります」(青木先生)。
 
人類の進化の過程をさかのぼると、「人間の祖先は魚類」と考える学説があるのをご存知でしょうか?魚類が進化によって陸に上がり、さらなる進化を経て人類が誕生したというのです。
 
魚類の特徴といえば、エラ呼吸。睡眠中にも、もちろんエラの動きは止まりません。青木先生の言う「歯ぎしりは人類の進化の名残」とは、「エラの動きの名残が咀嚼を司る筋肉に表れ、睡眠中に歯ぎしりが生じるのではないか」ということです。
 
また、歯ぎしりと睡眠の関係も明らかになりつつあります。睡眠中の脳波を調べると、歯ぎしりが起こる5秒ほど前に「マイクロアローザル」という微少覚醒が見られるそう。この微少覚醒という短い目覚めの反応が、アゴの筋肉を活動させ、歯ぎしりを引き起こす引き金になっていると考えられるのです。
 

無意識にストレスを解消し、病気の防止にもひと役!

歯ぎしりと聞くと、一見ネガティブな現象のように思えますが、「歯ぎしりには、良い歯ぎしりと悪い歯ぎしりがあります。良い歯ぎしりであれば、むしろポジティブな現象です」(青木先生)。
 
というのも、歯ぎしりにはストレス解消の効果が認められるそう。緊張状態にあるときに優位に働くのが交感神経ですが、無意識下の歯ぎしりが交感神経を抑制するというのです。
 
歯ぎしりの良い面は、ほかにもあります。「逆流した胃酸によって食道に炎症が起きる、『逆流性食道炎』の緩和です。歯ぎしりという口の動きによって唾液が分泌され、その唾液が胃酸を中和。炎症を防止する効果がわかっています」(青木先生)。
 

実は3種類も!あなたの歯ぎしりはどのタイプ?

では、悪い歯ぎしりとは、どんなものなのか。
それを理解するには、歯ぎしりのことをもっと知らなければなりません。大きく分けて、次の3タイプがあります。
 
【1】「グライディング」タイプ
…ギリギリと上下の歯をこすり合わせる歯ぎしり
 
【2】「タッピング」タイプ
…カチカチと上下の歯を連続的にかみ合わせる歯ぎしり
 
【3】「クレンチング」タイプ
…ただ歯を強くかみしめる歯ぎしり
 
なんと、【3】のクレンチングタイプのように、音をさせない、強くかみしめるだけの歯ぎしりもあるのです!ただでさえ自覚が難しい歯ぎしりですが、「歯ぎしりはしてないよ」という人も注意が必要です。 
 

口内だけじゃない!カラダや美容にも影響あり!

次に、悪い歯ぎしりは、どんな事態を引き起こすのかを見ていきましょう。
 
「悪い歯ぎしりによって引き起こされるのが、口腔内環境の悪化です」(青木先生)。
 
虫歯を治療して、歯に詰め物が入っている人は珍しくありませんが、歯ぎしりにより強い圧力がかかると、歯と詰め物のあいだにすき間ができるようになるといいます。このすき間に食片(食べ物のカス)が入り込み、せっかく治療した歯が、再び虫歯になる環境を作り出してしまうのです。
 
歯ぎしりの圧力は詰め物だけでなく、歯そのものにも影響を及ぼします。過度な圧力がかかり続けると、歯の表面を覆っているエナメル質がすり減ったり、歯にヒビが入ったり、ときには欠けてしまうこともあるそう。エナメル質がすり減れば象牙質(歯の主体となる硬組織)が表面に露出してしまい、知覚過敏が起こります。また、歯のヒビや欠けは細菌の温床となります。やはり、口腔内環境の悪化に直結するのです。
 
このような事態を引き起こすのは、驚くほど強大な歯ぎしりのパワー。
 
「歯をかみ合わせるときに生じる力を『咬合力(こうごうりょく)』といいますが、食事のときに生じる咬合力は約30kg。これだけでも大きな力ですが、睡眠中の歯ぎしりで生じる咬合力は、なんと50~100kgを超えるともいわれているのです」(青木先生)。
 
また、悪い歯ぎしりは口内以外のトラブルも招きます。
 
「歯ぎしりをするのに使われる筋肉は、頬骨付近から下アゴにかけて広がる咬筋や、側頭部に位置する側頭筋。これらの筋肉に強い負荷がかかり、頬やアゴの痛みや頭痛が生じるのです。咬筋や側頭筋は首や肩の筋肉ともつながっていることから、肩こりや首こりが起こることも珍しくありません」(青木先生)。
 
さらには、歯のすり減りから歯並びに変化が生じたり、顔の筋肉にかかる負荷によって筋肉が盛り上がることでエラが張っているように見えたり、美容の観点にも影響を及ぼすといいます。
 

悪い歯ぎしりをしていないか、セルフチェック!

では、あなたの歯ぎしりは、悪い歯ぎしりなのでしょうか?
それを知る手がかりとなるのが、青木先生監修のチェック表です。
 
【1】歯の詰め物がよく外れる
【2】起床時にアゴが痛い、ダルい
【3】歯がしみる
【4】歯が欠けた、割れた、すり減った
【5】歯の根元にくさび状の凹みが見られる
【6】頬の内側や舌に歯の跡が付いている
【7】上アゴの真ん中あたり、または下アゴの歯の内側に骨が出っ張っている(骨隆起)
【8】食いしばりで目が覚めることがある
 
上記の8項目のうち、ひとつでも当てはまる項目があれば、悪い歯ぎしりをしている可能性があります。
見た目でわかる変化
 

悪い歯ぎしりを引き起こす原因は、かみ合わせの悪さ

では、そもそも悪い歯ぎしりの原因は、何なのでしょうか?
 
悪い歯ぎしりの原因は、かみ合わせの悪さです。上の歯と下の歯がうまくかみ合っている良いかみ合わせの人は、歯ぎしりをすると上下の犬歯がその力を受け止めてくれます。犬歯は長く丈夫な歯根を持つため、ほかの歯に負担をかけずにすみます。
ですが、かみ合わせが悪いと、犬歯がガチッとかみ合わず、奥歯ばかりで歯ぎしりをしてしまい、口の中の一部に偏った力が加わり続けます。その結果、歯にヒビが入り、そこから虫歯になったり、歯が欠けたりとさまざまな影響がでます。
 
睡眠中、私たちは歯を食いしばる力をコントロールできません。そのため、悪いかみ合わせのまま歯ぎしりをすると、口腔内環境に悪影響を及ぼす“悪い歯ぎしり”を引き起こしてしまうのです」(青木先生)。
 
悪い歯ぎしりの原因がかみ合わせの悪さである以上、かみ合わせの改善をすることが、根本的な治療となります。かみ合わせ治療をすることで、ストレス解消などの効果をもたらす、本来の“良い歯ぎしり”ができるようになるのだそう。
青木先生の歯科医院では「ブラックスチェッカー」と呼ばれる用具を使用し、歯ぎしりの状態をチェック。個人の歯やかみ合わせの状態に応じ、マウスピース治療や矯正治療などを行っているそう。
 

寝具選びも重要!?セルフケアで歯ぎしりを改善!

悪い歯ぎしりを改善するには、歯科医による治療が一番ですが、実は自宅で実践できるセルフケアもあるんです!
 
「そのセルフケアとは、睡眠の質を高めることです」(青木先生)。
 
先にもお伝えした通り、昨今の研究から、眠りの浅さが歯ぎしりの一因であることが解明されつつあります。この研究結果を逆説的に考えれば、睡眠の質を高め、しっかり熟睡することで、悪い歯ぎしりを防止できるのです。
 
「睡眠の質を高めるには、就寝前の行動がカギとなります」(青木先生)。
 
ブルーライトの光によって脳が覚醒しないよう、就寝前のスマートフォンやパソコンはNG。ぐっすり眠るには熱いお湯に浸かるのは避け、ぬるめのお湯にゆっくり浸かる入浴法がオススメです。また、アルコールに入眠作用はないとは言えませんが、アルコールを摂取した数時間後には脈拍が上がり、結果的に睡眠を浅くしてしまうため、晩酌はほどほどに。
 
【関連記事】冷え性さん必見!眠りの質が変わる入浴法
【関連記事】お酒を飲むと眠れる?眠れない?医師に聞く“アルコールと睡眠の関係”
 

 
そして、寝具に気を使うことも大事なポイント。快適に眠るためにはカラダに合った寝具が欠かせませんが、特に注意したいのが枕の高さです。
 
「枕が高すぎるとアゴが引けてしまい、気道が狭くなりがちです。気道が狭くなると呼吸がしづらくなり、その息苦しさから、睡眠が浅くなってしまいます。枕は高すぎないものがオススメです」(青木先生)。
 
【関連記事】自分にぴったりの枕選び!オーダーメイドピローを体験
 

***
 

以上、盛りだくさんでお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
 
自覚が難しい生理現象だからこそ、ついつい軽視してしまいますが、青木先生監修のチェック表を見て、まずは睡眠の質を高めるセルフケアを実践してみてくださいね!

青木歯科

青木 聡 院長

東京歯科大学卒業後に大学院に進み、歯科博士の学位受領。虫歯や歯周病のみならずかみ合わせの治療にも注力し、咬合、顎機能診断、矯正治療の研鑽を積む。2005年、総合歯科治療を提供する「青木総合歯科」を開院。現在は「青木歯科」の院名で東京都の西新宿(初台)に移転し、院長を務める。健康な歯とかみ合わせの啓蒙活動も行い、テレビ出演も多数。著書に『あごがつらい、歯ぎしりがひどい、何度も同じ歯で苦しむなら かみ合わせから治しなさい』(アンノーンブックス)がある。

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