2021年01月29日 カテゴリ:眠り

専門家が勧める、冬の寝つきを改善する寝具の選び方

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専門家が勧める、冬の寝つきを改善する寝具の選び方
いよいよ寒さも峠! この寒さにより、寝つきの悪さに悩まされてはいませんか?
 
寒さが原因である以上あたたかさを保つことが第一ですが、そこで重要なのが寝具の選び方。単に布団を重ねるだけではない、しっかりと効率的に身体をあたためるための寝具選びについて、被服の観点から睡眠を研究する水野一枝先生にお聞きしました!
 

毛布やタオルケット、やみくもに重ねてはデメリットも

寒くて、なかなか寝つけない…。その主な理由として挙げられるのが、「深部体温」が下がりにくいことです。
 
深部体温とは文字通り、身体の内部の体温を指しますが、水野先生は「深部体温を下げるために必要なのが、体表の温度、特に手足の温度を上げることです」と指摘します。手足の体表温度を上げ、身体の末端から熱を逃がすことで深部体温を下げやすくする、というわけです。
 
すると寝つきを良くするために必要なのは、あたたかな睡眠環境を整えること。そこで多くの人が真っ先にとる方法が、身体の上に掛ける布団を増やすことではないでしょうか?
 
しかし水野先生が推奨するのは、むしろ身体の下!
「掛布団や毛布を増やすよりも、身体の下に使用する寝具の見直しが効果的です。もちろん掛布団や毛布によっても保温性は高まりますが、重ねすぎると身体に掛かる重みが寝つきを妨げたり、寝返りが打ちづらくなったり、デメリットが生じてしまうからです」(水野先生)

 

見直すべきは「身体の下」!まずはシーツをチェック



身体の下に使用する寝具といえば、シーツですよね。シーツは身体に直に触れるため、人の触感に大きく作用。一年中、同じものをご使用の方が多いと思いますが、季節により、まず見直すべきなのがシーツだそうです。
 
「シーツとして一般的なのが、綿100%の平織りタイプです。綿は肌触りが良く、吸水性も高いことから確かに快適。ただし、その肌触りは湿ったひんやり感にも通じます。私たち研究者は『冷湿感』と呼んでいますが、綿素材のシーツの冷湿感は、より冷たさを感じさせてしまいます。春や秋は快適ですが、冬は「寒い」と感じてしまうでしょう」(水野先生)
 
そこで水野先生が推奨するのが、ガーゼ等の柔らかいタイプのシーツ。ほわほわとした起毛や柔らかい肌触りは感覚的にもあたたかく、繊維のあいだに空気の層が生まれることから、保温性にも優れています。ガーゼタイプのシーツとそうでないシーツを使用し、睡眠中の状態を比較したところ、脳波に違いは生じなかったものの、寝つきの良さが向上した、という研究結果もあるのだとか(1)
 
なかでも綿を起毛に仕立てたガーゼ素材やネル素材なら、綿の特徴である吸水性はそのままに冷湿感が抑えられ、特におすすめだそうです。

 

避難所でも採用される「自分の熱を逃がさず保温」!

シーツを起毛や柔らかい素材に替えることともうひとつ、寝具の保温性を高めるには、敷き布団を見直すことも効果的!
 
その理由について水野先生は「放熱量が多いのは、身体の表よりも裏側。身体の熱は、敷き布団に接している面から逃げていく傾向にあります。この放熱を防ぐ方法、つまり身体の熱を逃がさないためには、敷き布団を厚くすることです」と指摘します。
 
具体的な方法としては、敷き布団を二重にすることはもちろん、特にベッドをご使用の場合には、ベッドパッドをプラスするのがおすすめ。ポイントとしては身体に寄り添うような、柔らかな素材のパッドを選ぶこと。するとベッドパッドと身体のあいだにすき間ができにくく、さらに放熱を防ぐ効果がアップします。
 
身体の放熱を防ぐことで保温性を高める方法は、災害時の避難所でも取り入れられているそう。「寝具が満足に用意できない状況では、段ボールでも新聞紙でも雑誌でも、とにかく、身体の下に敷くものを厚くすることが重要です」(水野先生)
 
さらにはパジャマ選びにもポイントあり!手首や足首、襟元の開口部が開きすぎていないタイプを選び、上衣はボトムのウエストにインすることで、パジャマの保温性を高めることができます。
 

靴下を履いたまま眠るのはNG?それともOK?

あたたかな睡眠環境を整えるための寝具選びをご紹介しましたが、ここでおさらいです。寝つきの悪さを改善するために重要なのが、手足の体表温度を上げること!
 
身体の末端である手足は特に冷えやすく、冷え性に悩まされている人も少なくありませんが、そうした方におすすめなのが、事前に布団をあたためておくことです。
 
ただし、水野先生は「電気あんかも電気毛布も湯たんぽも、ひと晩中使い続けては温度が高くなりすぎ、若い人でも脱水症状や低温火傷の危険があります」と警鐘を鳴らします。
 
「寝具用の暖房器具を使うにしても、寝る前の30分~1時間程度、事前にあたためておけば十分。ご自身の体温と寝具による保温性も相まって、寒さを感じることなく、眠りに就けるはずです」(水野先生)
 
ちなみに水野先生は、布団をあたためるのに布団乾燥機を使用しているそう。あたためすぎると就寝中に汗をかき、かえって身体を冷やす原因にもなるため、特に冷えやすい足元にのみ、温風を入れているそうです。
 
また、足の冷えが気になり、靴下を履いたまま就寝する人もいますが、「締め付けないものであれば、問題はありません」と水野先生。
 
気づかないうちに靴下を脱いでいたとしても、それは足元があたたまり過ぎているという不快感を無意識に解消できている証拠。締め付ける靴下は無意識に脱ぐことができないので、履いたまま眠ることは避けてください。
 
 

冬の寝起きの悪さは生理現象!解決のカギは「光」

ここまで寝つきの悪さをテーマにお届けしてきましたが、最後は冬の寝起きにフォーカス! 寒さゆえになかなか布団から出られず、気づけば二度寝。寝起きの悪さに悩まされるばかりか、ちょっとした罪悪感までつきまといますよね。
 
でも、安心してください。水野先生は「冬の寝起きの悪さは、けっしてご自身の怠惰が原因ではありません」と言います。
 
「深部体温が下がると眠くなるのとは反対に、人は深部体温が上がるにつれ、目覚めやすくなります。ただし、それを寝具でコントロールするのは至難の業。そこで寝起きに関しては、睡眠を大きく左右する要素のひとつ、光を活用しましょう」(水野先生)
 
人は本来、日中に活動する昼行性の動物。朝の光を浴びることで身体が「朝が来た!」と認識し、目覚めやすくなります。しかし日の出が遅く、日差しの弱い冬は朝6時でもほの暗く、身体が目覚めるに至りづらいのです。
 
そこで水野先生がおすすめするのが、タイマー機能付きの照明を使用すること!最近では朝日が昇る様子に似せ、徐々に明るくなる照明も発売されています。日本国内でも特に冬の日照時間が少ない富山県では、県内の小学生を対象に、徐々に明るくなる照明とそうでない照明の違いを比較検証(2)。すると徐々に明るくなる照明を使用した場合のほうが、スムーズに目覚められることが明らかになったといいます。
 
また、二度寝してしまいそうな場合にも、まずは布団から出て照明を付けると、布団に戻ったとしても照明の光により、目覚めやすくなる可能性があります。
 
 
寒さの峠を越えれば、春はもうすぐそこ。新しい生活がスタートする春に向け、まずは寝具から寝起きの悪さを改善!すると眠りの質そのものも向上し、日中もアクティブに過ごせます。水野先生のお話を参考に、ぜひ寝具を見直してみてくださいね!
 
引用文献
1)岡本一枝他. 特殊シーツが睡眠中の生理反応および病床内気候に及ぼす影響. 日本家政学会誌, 1997, 48.12: 1077-1082.
2)神川康子他 起床前漸増光が児童の睡眠と生活の質に与える影響. 富山大学人間発達科学部紀要, 2013, 8.1: 129-135.
 

 
       

和洋女子大学家政学部服飾造形学科 准教授

水野一枝 先生

東邦大学医学部生理学第一講座、獨協医科大学第一生理学教室、産業技術総合研究所NEDOフェロー、東北福祉大学感性福祉研究所特任研究員を経て現職。被服衛生学、睡眠温熱環境、睡眠時の体温調節を専門とし、寝室の暑さや寒さ、寝具や寝衣と睡眠に関する研究を行う。その分かりやすい解説からNHK『あさイチ』をはじめとするメディア出演も多数。

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