【獣医師監修】犬と猫のマッサージ方法を解説。ホットタオルでより効果的に!
2025.07.04
使う

毎日一緒に過ごしている愛犬や愛猫。
運動不足になりがちな室内飼いや、活発に遊び回った後の疲れ、シニア期の体調管理など、ペットの健康を気遣う飼い主さんは多いのではないでしょうか。
そこで今回おすすめしたいのが、ホットタオルを使ったマッサージです。
見落としがちなペットのマッサージですが、人間と同様「血行促進」や「筋肉の緊張緩和」の効果が期待できます。ペットマッサージの必要性や具体的な方法について、獣医師の林美彩先生に詳しくお話を伺いました。

獣医師
林美彩
毎日の食べるもので体が作られていくという両親のおしえのもと、学生時代に飼っていた愛犬のために、手作り食を学ぶ。大学卒業後は、西洋医学・代替療法両方の動物病院やサプリメント会社で勤務。ペットの体作りや家庭でできるケアを広めるため、2018年3月にカウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開院。著書には『獣医師が考案した長生き犬ごはん』(世界文化社)がある。
毎日の食べるもので体が作られていくという両親のおしえのもと、学生時代に飼っていた愛犬のために、手作り食を学ぶ。大学卒業後は、西洋医学・代替療法両方の動物病院やサプリメント会社で勤務。ペットの体作りや家庭でできるケアを広めるため、2018年3月にカウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開院。著書には『獣医師が考案した長生き犬ごはん』(世界文化社)がある。
ペットも実は「凝っている」!マッサージがもたらす効果
林先生によれば、ペットマッサージには私たちが想像する以上の効果があるといいます。
まず挙げられるのが、血行促進と筋肉の緊張緩和です。
「人間でもリラクゼーションが一般的になっていますが、ペットも同じように、触れ合いやマッサージによって血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれます」と林先生は説明します。
体の巡りが良くなることで代謝が上がり、免疫力もアップ!
特に犬の場合、ドッグランで走り回った後も人間のようにストレッチをすることがないため、筋肉が固まってしまう子が多いのだそう。マッサージによって柔らかくしなやかな筋肉を作ることができるといいます。
さらに、マッサージには思わぬメリットもあります。
「触れることで、ちょっとした痛みや皮膚のトラブルに早く気付くことができるんです」と林先生。いつものスキンシップとは違い、マッサージという意図を持って体を触ると、より丁寧に体を観察することになり、異常に気付きやすくなるのだとか。マッサージ中に痛そうな反応を見せたら一旦中止し、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
なぜホットタオル?実は冷えやすいペットの体
ペットマッサージには、さまざまな種類がありますが、なかでも今回おすすめしたいのがホットタオルを使ったマッサージです。
その理由として林先生は、体の熱の特性によって下半身が冷えやすい傾向にあることを挙げます。
「温かい空気は上に上っていくのと同じで、体も上半身へ熱が集まりやすいんです。
犬の場合、走る時には主に前足を使って「前輪駆動」のような動きをするため、後ろ足の存在を忘れがちになり、動かさずに歩いてしまいます。そのため、冷えにも繋がりやすいです」
また、犬も猫もシニアになると、足腰の衰えにより運動量が少なくなりますよね。これらが原因となり基礎代謝や筋肉量が減少します。そうすることで血行不良を招き、体温も下がりやすくなるのだとか。
猫の場合、特に注意したいのが腎臓病との関係です。
「猫は腎臓病になりやすい動物ですが、下半身が冷えてしまうことで腎臓への血流量が減り、尿が作られにくくなります。そのため温活は非常に大切です」(林先生)
このような理由から犬や猫は冷えの問題を抱えているため、マッサージの時はホットタオルによる温熱効果が重要になります。
「冷えている状態でマッサージをしようと思ってもなかなか緩めることができません。筋肉がガチガチの状態では効果が期待できないのです」と林先生。
人間も温かいお湯に浸かると、ホッと体の力が抜けていきますよね。それと同じように犬と猫も、温めることで体が緩むということ。
マッサージの効果を高めるためにも、ホットタオルで体を温めてあげましょう。
失敗しないホットタオルの作り方
ホットタオルマッサージの効果を最大限に引き出すためには、正しいタオルの準備が重要です。
まず、温度は40℃前後、人間が触れて気持ち良いと感じる程度が目安です。「犬や猫の皮膚は人間よりもはるかに薄いため、人間がちょっと熱いと感じるようなものでは負担がかかってしまいます」と林先生は注意を促します。
作り方は意外と簡単で、蛇口から出るお湯で絞る方法でも、電子レンジで30秒〜1分程度温める方法でもどちらでもOK。水滴が滴らない程度に絞り、ほどよく湯気が上がっているくらいが理想的です。
安全面で特に重要なのが、使用後の湿気対策です。
「ホットタオルは蒸気で温まるのがメリットですが、終わった後に皮膚に湿気が残っていると体が冷え、人間でいう湯冷めのような状態になってしまいます。さらに、皮膚が湿った状態が続くと雑菌が繁殖しやすく、皮膚病に罹ってしまう可能性もあります」
そのため、マッサージ後はしっかりと水分を拭き取り、毛が長い子や濡れが気になる場合はドライヤーでしっかり乾かすことが重要です。
実践!ホットタオルマッサージの手順とコツ
ホットタオルの準備ができたら、いよいよマッサージの実践です。犬も猫も基本的な流れは同じですが、それぞれに配慮すべきポイントがあります。
基本の手順
①温める
まず初めにマッサージをする部位を温めます。基本的には下半身だけで十分ですが、手足の先を触って冷えを感じる場合は、首肩あたりからスタートして徐々に下の方を温めていきます。ホットタオルをやさしく当てて、じんわりと温めましょう。
②マッサージ
温まったところで、手でマッサージを行います。背骨に沿って円を描くようにマッサージをしていき、次に腕、お腹も軽くマッサージします。
下半身はホットタオルの上から、上半身は冷えている子でなければホットタオルは使わず、手でのマッサージで十分です。
効果的なマッサージテクニック
<首・肩・脇の下>
特に凝りやすい首や肩、脇の下には深層筋肉へのアプローチが有効です。「皮膚に指の腹を置いて、その位置をずらさずに、ツボ押しのようなイメージでくるくるマッサージすると、深層の筋肉にまで刺激が届いて緩みやすくなります」
犬には鎖骨がなく、猫は鎖骨が退化しているため、前足は主に筋肉で支えられており、前輪駆動で前足ばかり使うことから、これらの部位が特に凝りやすくなっています。
凝りが激しかったり、大型犬をマッサージしたりする場合は、手の母指球を使ってマッサージするのも良いと言います。
力加減については、飼い主が熱心になりすぎて強くやりすぎないよう注意が必要。「軽いタッチで、その子が気持ち良がる強さを見つけることが大切です」
<手足の肉球>
肩や下半身のみならず、肉球もマッサージが必要なのだそう。
「人間と同じように犬と猫にも足裏に多くのツボがあります。四つ脚で立つ時間が長いため、凝りを放置しておくと末端冷え性になってしまう子もいます」
自ら口で舐めて温めようとしたり、血流を巡らせようとしたりすることで、手や足に菌が繁殖し皮膚の疾患にかかってしまうこともあるため、揉んで血流の巡りをよくしてあげることが大切です。
マッサージの注意点
犬も猫も、「無理をしないことが最も重要なポイント」という林先生。「無理に行うと飼い主との信頼関係が破綻してしまう可能性もあるため、嫌がるようであれば中止することが大切です」
また、使用するタオルは日常的に目にするものにしておくことがおすすめだそう。日常生活にない物を突然取り出すとびっくりして逃げてしまうたことがあるため、いつものタオルを使用することで警戒心を和らげることができます。
特に、鼻が低い「短頭首」の子は、常に上半身が温まっている状態なので、下半身を温めるようにしましょう。もしホットタオルを使った際に、苦しそうな様子を見せたらすぐに使用をやめ、体を冷やしましょう。
また、体に炎症や熱がある場合は、体調を悪化させてしまうためホットタオルのマッサージは取り入れないようにしましょう。
ペットと飼い主、両方がリラックスできる環境づくり
ペットマッサージを成功させるためには、頻度やタイミング、環境作りも重要です。
理想は毎日ですが、「飼い主さんの心と時間に余裕がある時に行うのが一番大切」と林先生は強調します。飼い主が疲れた状態で行うと、良からぬ感情がペットにも伝わってしまうため、ゆったりとした気持ちで取り組むことが重要です。
食後1時間は避け、1日の疲れを癒すのであれば、夜寝る前に行うのが良いでしょう。
「お散歩から帰ってきて足を洗う際に、洗いながら手足先のマッサージを行うのもおすすめです。
日々のルーティンに組み込んでいただくことで、無理なく取り入れられますよ」(林先生)
シニアの子であれば朝にマッサージすることで体にスイッチが入り、生活リズムを整える効果も期待できます。
最も大切なのは声かけで、「ホットタオル置くよ」など、これから何をするかを事前に伝えることが重要です。「自分が逆の立場だったらどうしてほしいか考えてみてください。マッサージ店で何の声かけもなく突然強い力で肩を揉まれたら嫌ですよね」と林先生は例えて説明します。
また、マッサージが苦手な子には、ソフトタッチで無理をしないことを前提に、終わった後におやつをあげたり、おやつを食べてもらいながら行ったりする工夫も効果的です。
マッサージに適したタオルの選び方
ホットタオルマッサージに使用するタオルは、肌への優しさを最優先に選びましょう。漂白剤を使用していないものや、柔軟剤で洗濯していないものを選ぶことも大切です。
「柔軟剤の強い香りがする状態で来院される子もいますが、そういう子は治療効果が弱かったり、香りの問題で鼻の腫瘍ができてしまったりするケースもあります」と林先生は警鐘を鳴らします。
強いにおいの洗剤は使用せず、赤ちゃんに使うような優しい素材のものを選ぶのが安全です。
サイズについては、ペットの大きさに合わせて飼い主が扱いやすいものを選びます。小さな子に大きなタオルでは扱いにくく、大きな子に小さなハンカチサイズでは何枚も必要になってしまいます。
厚さも同様で、小さな子には薄めのもの、大型犬には少し厚手のものでじんわりと温めるのが効果的です。
ペットマッサージにおすすめのnishikawa TOWEL

「犬にはプラスアルファとして、 ホットタオルにアロマを追加するとリラクゼーションに有用です」と林先生。
洗面器いっぱいのお湯に、アロマを一滴垂らし、タオルを温めると心地良く香ります。香りはリラックス効果のある真正ラベンダーを使用すると、飼い主さんも一緒に癒されることができます。
愛犬や愛猫との毎日がもっと豊かになる、ホットタオルマッサージ。難しいテクニックは必要なく、心地良いタオルがあれば今日からでも始められます。きっと、ペットも飼い主さんも素敵な時間になるはずです。
Illustration │ oyasumur
Text │ Mariko Onishi
ガーゼ生地を5層に重ねて作られた、肌触りの良いガーゼタオル。洗うことで5層の生地が空気を含み、ふんわりとしたやわらかさとボリュームを感じられます。ペットの入浴の際にもおすすめのタオルです。