西川チェーンって
どんな店?

西川創業の地に今も残る
「西川甚五郎本店」。
貴重な建物の内部を
お見せします。

西川創業の地であり、初代から12代目までが
暮らした滋賀県近江八幡市。
ここには、現在も「西川甚五郎本店」が
残されており、450年以上続く西川の歴史を
今に伝えています。
前回お届けした歴史編に続き、今回は建物編として、一般非公開の「西川甚五郎本店」内部を貴重な写真とともにお届けいたします。
歴史編のインタビューでもお世話になった
奥村武司支配人に内部の特徴や見どころを
案内していただきました。

江戸時代にタイムスリップしたかのような町並みに佇む、趣たっぷりの本店。

近江八幡駅から車で約10分。八幡山の麓に広がる町に一歩足を踏み入れると、突如としてノスタルジックな風景が広がります。

八幡堀は、かつて八幡山城と同時につくられた歴史的に貴重な運河です。よく映画やテレビのロケ地として使われるので、ご存知の方も多いと思います。一方の八幡山城は残念ながら石垣を残すのみですが、日牟禮八幡宮境内地や新町通りなど八幡堀付近一帯は「八幡伝統的建造物群保存地区」となっており、往年を偲ぶ景色を楽しむことができます。

護岸の石には、矢穴痕(石を割る過程の痕跡)が残されていました。

そんな町の一角、八幡堀沿いに建つのが「西川甚五郎本店」。建物だけで200坪、庭も含めると700坪にもなる敷地を有し、界隈でも一際目を引く、立派な佇まいを誇ります。

天正15年(1587年)に初代が構えた本店。そこから12代目の時代であった昭和17年(1942年)頃までは、実際に歴代当主がここで暮らしていました。
明治24年(1891年)、大正2年(1913年)と増築を重ねているものの、入口を入ってすぐの土間の部分は、江戸時代のまま。

高い天井を見上げると、歴史を支えてきた重厚な梁が目に止まります。

同じく江戸時代に使用したと思われる火消し道具も残されています。当時の屋号「山形屋山形屋」の印が時代を感じさせます。

他にも古い井戸や「かまど」が残されていて、実際にここで暮らしていた生活を感じさせます。

博物館にありそうな電話が違和感なく設置されていました。

手の込んだ建具や、ユニークな設備の数々に、職人技が光る

丸ごとタイムカプセルのような土間を抜けて、邸宅の奥へ。
明治から大正にかけて増築されてきた建物内には、仏間や応接間、客間など、さまざまな部屋が設けられています。そして窓に目をやると、素敵な日本庭園が広がっています。

美しい庭をもっと近くで見ようと、窓越しに目を凝らすと・・・・・・あら?微妙に外の景色が揺らいでいるではありませんか。これは、今となっては珍しい手すきのガラスが使われているため。もはや新しく手に入れることのできない貴重な窓ガラスが、暖かく優しい風合いを醸し出しています。

さらに、足元の畳に目を落とすと、織の間隔が違うのがお分かりいただけるでしょうか?これは、西川家伝統のデザインだそうです。畳と言えば、西川の創業当初から長い間、主力商品だったもの。もはや畳を扱わなくなって久しいですが、こんなところに残り香が漂っていました。

また、各部屋を仕切る襖(ふすま)にも注目。部屋ごとに異なる襖絵や書が施され、見るものを飽きさせません。

上のほうまで良く見ると、欄間までもが、部屋ごとに異なる文様になっています。

さすが八幡御三家と謳われた西川甚五郎の本店です。随所に上質なしつらえが見てとれます。
他にも、かやの木の一枚板が使われた床の間や、遠近法を巧みに利用し奥行きをもたせた廊下など、匠をも唸らす箇所が数多くあります。

ユニークなのが、各部屋の電灯。高さが自由自在に調整できる仕掛けになっており、日中は高い所で部屋全体を照らし、夜は枕元まで引き下げて読書灯に、といった使い方が可能になっています。実用性に優れた職人技が光りますね。

実際に上げ下げの操作をしていただく奥村支配人。
「こうやって・・・」
「・・・下ろすと、読書灯になるんですよ」

さらに取材スタッフが見つけたのは部屋の隅に垂れ下がっている、このスイッチ。何のためかと言うと、使用人を呼ぶためのベルなんです。これも各部屋に整備されています。

このベルを押すと・・・
階下の部屋(「かまど」のある部屋)の装置で、使用人を呼ぶ仕組みになっています。面白いですよね。

上品な皇室用の客間と、大正ロマン漂う洋室も見もの。

たくさんある部屋の中でも特別感漂う部屋が2つあります。
ひとつ目は、1階に用意された皇室用の客間。実際に、明治の終わりから昭和の始めまでの間に5つの宮家が訪問、宿泊されました。その証に、玄関や庭には記念碑も建てられています。

宮家をお迎えする部屋とあって、建具や調度品には贅沢な素材を使い、天井は他の部屋よりも高さを確保。欄間には宮家と西川家の家紋を施し、ふすまの引手にも細やかな装飾が施されています。

漆塗りの床框。驚いたことになんと漆塗りの木製カバーで保護されています。カバー自体が漆塗りなので、言われなければ全く分かりません。

写真はカバーに手をかけたところ。
反射して分かり辛いですが、こちらの写真はカバーを外し終わったところ。宮家へのお心遣いが、良く分かる一例です。
西川の家紋に少し重ねて、菊の紋章が彫られています。
意匠を凝らした襖の引手。

1階の貴賓室に続き、もうひとつの特別な部屋が2階の洋間です。
1階から2階へと続く階段に飾られているステンドグラスが美しいです。釣りをしている風景は、この辺りの景色でしょうか。

大正2年(1913年)に作られた部屋で、レトロなムードが漂います。洒落た暖炉に、ソファやカーテン、火鉢など、当時使われていたものがそのまま現存しており、数々の賓客が招かれた足跡を感じられます。

火鉢や暖炉の細かな装飾が美しいです。
階段同様、色鮮やかなステンドグラスが部屋を飾ります。

隣接する史料庫には、歴史を伝える古文書が眠る。

本店と同じ敷地内に、蔵を模したような近代的な建物があります。これは、公益財団法人西川文化財団が管理する西川史料庫です。

西川史料庫は、近江商人に関する学術研究や経済史の研究者たちに、史料を公開されておられます。貴重な古文書の数々が大切に保管されており、西川の歴史を今に伝える重要な役割を担っています。中には日本最古といわれる勘定帳も保管されています。

建物編は以上となります。
近江商人らしく、華やかというよりも、どちらかといえば玄人好みの意匠が奥ゆかしさを感じる建物でした。

歴史編、建物編と「西川甚五郎本店」を2回に分けてご紹介させていただきました。
最後に、お忙しいなか西川甚五郎本店をご案内していただきました奥村武司支配人には、この場をお借りして御礼を申し上げます。ありがとうございました。

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